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05 視察

ある日の王城会議室


そこでは私の領地視察について議論が粉砕しているそうです


前回の領地視察で魔獣の襲撃を受け、全てのスケジュールは一度白紙になりました


しかし私は命の恩人であるタイヨー様が無事だった事を知り、何よりも自分自身がタイヨー様に並び立てるように強くあろうと決めたのです


すると私の回復を知って領地視察の再開の声が高まってきました

ところが再開する事に、お父様が首を縦に振らないのです


でもその気持も分かります

あの時の私は、まるで屍人のように憔悴しきって廃人同然でしたから……


でも今の私は違います!

やる気に満ちているのです!


私は事態を打開するために会議の場に突入しました

そして突入早々核心を突きます


「国王さま。私の領地の視察は、まだ再開いたさないのですか?」


お父様は慌ててます


「い、いや、ほら、王女は前回の視察で散々な目にあっただろ?だからまだ再開には早いのではないかと思ってな。」


私は少し思案して言いました


「そうでしたか。私も正直なところ山ほどたくさんのお見合い話には懲り懲りですので、行かなくて済むのならそれでも良いかと。タイヨー様やユキ様達とお茶会でもして過ごしますわ。タイヨー様と同じ時間が過ごせるなんて……」


少し、お父様を脅してみます


「ま、まぁ待て。もう少し時間をくれないかな。」


お父様は慌てて言いました


「わかりました。とりあえず、いつでも視察に行けるように準備はしておきますわ。」


そう言って私は退室しました

これで少しは議論も進むでしょう




その頃、王国東部の街では……


「なんとか揃えられたな。」


「次の出荷までに、なんとかなったな。」


「まったくうちの領主様はノルマに厳しくてしょうがねぇ。」


そこは薄暗い裏通りにある古い建物

その部屋で2人の男が話しています


「とりあえず次の出荷まで、もう少し集めるか。」


「まぁそうだな。ノルマは達成した事だし無理しない程度に集めよう。」


2人の男はそう答えると、建物を静かに出ていきました。




王城では……


私は国王の執務室に呼ばれていました


「お父様。御用ということで伺ったのですが。」


「ああ。よく来たね。ロキシー。じつは地方視察についての話なんだがね。」


「行き先が決まりましたか?」


「その通りだ。私はまだ早いと思ったのだが、今回は東部の街に行ってもらおうと思う。東部に向かう道は西部と違って大きな森が無いからな。魔獣との遭遇がほとんど無いんだ。」


前回の視察では、西部にある深緑の森の近くの街道で魔獣の襲撃を受けました

その事に配慮しての東部への視察なのでしょう

私もそうなるだろうと予想していました


「わかりました。しっかり務めてまいります。」


私は特に異議などせず了承しました

するとお父様は表情を曇らせ言いました


「……あんまり無理しなくていいからな。頑張りすぎないでくれよ。」


私はお父様の優しい言葉に嬉しくなりました


「ありがとうございます、お父様。気を付けていってきます。」


私は東部の街への視察に、静かにやる気を見せました




今日はいよいよ東部の街に出発する日です


今回は護衛にノルディカさんが同行してくれることになりました

とても心強いです


「くれぐれも無理だけはしないようにな。」


お父様は心配性です


「何度も聞いております。では行ってきます。」


そう答えて私達は早々と出発しました


今回は30名の騎士団も一緒です

当然、旅の道中は平穏そのものでした

平穏どころか私達のあまりの物々しさに皆が避けています


「さすがにこれは大袈裟ではないでしょうか。」


私はノルディカさんに言いました

するとノルディカさんは、


「いや、前回の魔獣の襲撃以来の視察です。念には念を入れなくてはいけません。」


と当たり前のように言いました

途中で町や村に滞在しましたが、何度か軍隊が攻めてきたと勘違いされてしまいました


そうして数日の後、私達は東部の街に到着しました


到着して、まずは領主様の家に伺いました

領主様は何というか……アクセサリーをゴテゴテ身に付けた方でした

領主館も、それはそれは豪華な調度品で飾られていました


随分と懐具合が良さそうですね


その後は街の中を視察しました

領主館を中心に周辺の街並みはとても賑やかです

道行く人々も華やかな衣装に身を包み、この街がとても裕福なことを印象づけました


「街の皆さん、とても裕福そうですね。。」


私がそう言うと、案内人の方が自慢げに話しました


「ありがとうございます。この街は東の国との窓口となっていまして、バートン王国の特産品がこの街に集まり隣国のチロリア王国の特産品と取引をしております。数多くの品がこの街を流通することによって、ここは商業都市として潤っています。」


なるほど……私は納得しました


しかし中心地から少し離れると、途端に街並みは淋しくなりました

私は気になったので話を聞こうとしたところで案内人の方が、


「街の視察はここまでとなっています。では領主館に戻りましょう。」


と言って馬車の御者に指示を出しました

私がもう少し街を見たいことを言おうとしたところで、ノルディカさんに止められました


「王女、街の視察はここまでのようですので。」


そう言うノルディカさんの表情には、今は我慢してください……と言う考えが読めて取れました

なので、私もここは素直に引き下げることにしました


「わかりました。とても素晴らしい街ですね。案内をありがとうございました。」


と伝えると案内人の方は、


「いえいえ、どういたしまして。」


と満足そうに笑うのでした




私とノルディカさんは領主館に戻り、用意された客室で話していました

私は気になった事をノルディカさんに尋ねます


「先程、私は街の中心部から離れたところも見たいと思ったのですが、なぜお止めになったのですか?」


するとノルディカさんは思案するように答えました


「どうもこの街はきな臭いのです。あくまでも私の直感ですが。」


「何か気になることでもありましたか?私は中心地から離れたら急に街の雰囲気が変わったことに不自然さを感じました。」


私が話すとノルディカさんにも思い当たることがあるようで話始めました


「そうですね。中心地とその周りの格差がずいぶんとあるようです。それとこの屋敷の調度品等……街が潤っていると言ってもやや度が過ぎている気がするのです。そして事前に調査しましたが、どうも領主には裏の顔の噂があるようなのです。」


事前に調査していた事に私は驚きました

それについて聞くと、


「それは王女が伺うのですからね。事前にある程度調べておくのは当然です。なので表向きは対魔獣の多めの護衛としていますが、この街を調べるための調査隊も紛れ込ませています。今、斥候に外側の街を調べに向かわせました。後程報告に来るでしょう。」


さすがはノルディカさんです

本人が強いだけではなく指揮もしっかりしてます

では街の様子は報告を待ちましょう




夜になり私達を歓迎するパーティーが行われました

この日は到着した当日と言うこともあって関係者の紹介と会食で終わりました


明日は夜会です

とても気が重いです


夕食後に部屋に戻ると、街を調査してきた斥候が戻ってきておりました

早速、調査の内容をノルディカさんと一緒に聞きます


「ご苦労だったな。早速だが街の様子はどうだった?」


すると斥候は答えました


「はい。視察に訪れた街の中心部は富裕層の居住地のようで外側に行くに従って平民層、貧民層と広がっているようです。多かれ少なかれどこの街もその傾向はあるのですが、気になった事を聞きまして。」


「それは何だ?」


「どうも貧民層の居住区で、子供の行方不明者が少なからず出ているようなのです。」


「貧民層の居住地で子供の行方不明者だと?」


ノルディカさんが聞きました


「はい。どうやら孤児を中心に子供達の行方不明者が出ているようなのですが、身寄りのない子供がいなくなったところで誰も疑問に思っていないようです。同じ孤児仲間が、最近あの子を見なくなったとか、大人に連れていかれるのを見たとか言うのを聞きました。私達も随分警戒されましたね。」


斥候は苦笑いをしながら言いました

ノルディカさんは少し考えるも、答えは出なかったようです


「さすがにそれだけでは判断ができないな。ただ何か引っかかるな。引き続き調査してくれ。私達も探りを入れてみる。」


「了解しました。」


そういって斥候は退室しました


「ロキシー王女。どうもこの街の流通には、公には出来ない何かがある気がするんです。私の直感ですが。」


「秘密の取引があると?」


私はノルディカさんに話の続きを聞きます


「はい。まだ証拠もないのですが、貧民層の子供たちをさらって他国に売買しているのではないかと。」


私は驚きました


人を売り物にする?


私の驚きを察したノルディカさんは、言いにくそうに話し始めました


「はい。この東部の街について事前にいろいろ調べたところ、貧富の差がかなり激しいようなのです。街の中心地の裕福な人々は贅沢な暮らしをしているようなのですが、特に貧民層の人々はかなり厳しい生活を強いられているようなのです。病気や怪我での死亡率も高く、治安も悪く、多くの孤児が出ているようなのです。その孤児たちを保護するという名目で連れていき他国に売っているのではないかと……これは憶測の域を出ないのですが。」


「それは住民に厳しい生活を強要し意図的に孤児を生み出しているという可能性も……」


「可能性としては十分にあり得るのではないかと思います。」


私の話にノルディカさんはそう答えました


私は愕然としました


それが本当ならば、この町の上流階級の人たちは民を意図的に苦しめ死に追いやり、遺族たちを売り物にして自分たちの利益にしていることになります


「そんな事は許されません!民を守るのが上に立つ者の使命です!断固として抗議します!」


私がそう息巻くと、ノルディカさんが落ち着くようにと言います


「王女、まだ証拠も何もありません。憶測だけで決めつけてはいけませんよ。」


私はハッとしました


「そうでした。王女として何事も決めつけて話してはいけませんね。」


しょんぼりする私にノルディカさんは微笑みながら言いました


「私は王女のその真っすぐなところが大好きです。いつまでもその真っすぐな気持ちを忘れずにいてくださいね。」


そう言われて私は急に恥ずかしくなり、はい……と返事をするのが精一杯でした




翌日は隣国との流通について説明を受けました

主にそれぞれの国の特産品を流通しあっているようです


我が国から出荷しているものでは北部地方で製作されている冷却容器と、南部地方で作られる鉄工品が人気のようです

そしてそれらの売り上げや他国商品の買い上げの帳簿を見せていただきました


なるほど、確かに流通が盛んな街だということがわかりました

でも正直なところ、この街がこれ程までに潤うほどの儲けになっているようには思えないのです


儲かっていることは確かです

しかし莫大な利益ではありません

私は領主様に聞いてみることにしました


「この街の商人は見事な取引をしているようですね。感服いたしますわ。」


領主様は微笑みながら答えました


「王女様にお褒めにあずかり光栄です。皆の頑張りのおかげでこの街は発展してきました。」


「そのようですね。このお屋敷もとても見事ですし調度品も素晴らしいものを揃えていらっしゃいます。街の様子もとても華やかですね。」


すると領主様は満面の笑みを浮かべ答えました


「さすがは王女様。お分かりいただきますか。この屋敷もこの街並みにも贅を尽くして造りましたからな。」


私も微笑みながら答えました


「ええ。本当に素晴らしい街並みです。この帳簿の数字からこれだけのお屋敷や街並みを造るのは、さぞかし大変だったでしょう。全ての住民が幸せに暮らしていられるのでしょうね。」


領主様の笑顔が少し強張りました


「もちろんです。ここでは領民の皆が幸せに暮らしていると私は断言できますよ。」


「それは素晴らしい事です。そうしましたらこの会議の後はこの街に住む人の様子も見せていただきたいですわ。」


私は喜んでる表情で言いました


「え?街並みの視察は昨日されていますよね?」


「ええ。昨日は中心部の街並みを拝見いたしましたので、今日はその外側で暮らす人々の様子を拝見したいのです。」


領主様は明らかに狼狽えました


「それは困ります。今日はこの後も予定が詰まっておりますので急な予定変更はお受けできません。」


「あら、そうでしたの……それは残念です。ではそれはまたの機会にさせていただきますわ。」


領主様は明らかにホッとした表情をしました


「ええ、是非そうしてください。」


街の流通についての説明を聞き終え、私達はいちど客室に戻りました

部屋に戻り侍女にお茶を出してもらいながらノルディカさんと話しました


「領主様のあの様子……かなり怪しいですね。」


私がそう言いますとノルディカさんも同意の意見を言いました


「ええ。彼は完全にクロですね。どうしても街の様子を見てほしくないようですね。しかもあの帳簿の数字、確かに儲けてはいますがここまで贅沢できるほどの売り上げではありません。」


ノルディカさんは苦虫を噛み潰したような顔をしました


「しかし証拠がありません。さらに調査を進めることにしましょう。」




会議を終えた領主は焦っていました


「おい!あの様子では何かを嗅ぎつけたようだぞ!今夜の出荷は大丈夫なのか?」


すると近くにいた秘書が言いました


「まったく問題はありません。証拠は出ませんから。」


秘書は不気味な笑いを浮かべながら言いました


「いざとなれば魔獣に襲われた事にして始末してしまえば良いのです。」






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