子孫達は
私は、少し緊張しながら師匠に問いかけた。
「アレッタ国の他の子孫と交流はありますか?」
「ない。ハッキリ言って、他の子孫も交流はないだろう」
「それは何故ですか?」
「滅亡前までアレッタ国に残っていた魔術師の所行は知ってるか?あれを主導してたのは、王子の一人だったらしい。
王子に苦言を呈した高位貴族が処罰されたことで、俺のご先祖サマみたいな穏健派の貴族達が国を捨てた。結果、過激派と呼ばれた人を人とも思わぬ魔術師達に民は蹂躙されたんだ。
他国によってアレッタ国が滅んでも、アレッタ国出身の魔術師ってだけで、近隣の国では迫害の対象になり、ご先祖サマはこの地に辿り着くまで逃げまわる日々だったみてーだ。
他の奴らを心配する余裕はなかっただろうし、この地に来てからもアレッタ国に繋がるモノは徹底的に秘匿していた。
今でこそ魔導具師として俺は働いているが、この地では薬師の家系と言われてる。ロダ・ヤビツがやらかすまで、隠し通していたんだよ」
「薬師ですか?」
「ああ。姉が薬師をしてる。もし、誰かにロダ・ヤビツから辿られても、姉にしか辿り着けないようになってる。アレッタ国の魔術師には繋がらない筈だった。お前だから、俺に辿り着けたんだ。こんな偶然はないだろう?だから、素直に話してやってんだ」
確かに、北部では未だに禁句扱いのアレッタ国だ。
当時の迫害はアレッタ国関係なく魔術師や魔導具師にまで波及したと言われているし、この店の防衛魔法とあの保管場所を見る限り、あの資料を他人に見せることは想定外なのだろう。
王様は師匠を知っているけど、魔導具の作成者の名前は外部に出していないってことか。
なるほど、調査依頼を出しても本来は師匠の姉の薬師しか血縁者の特定は出来ず、遡っても薬師の家系だからアレッタ国には繋がらない。かなり徹底的な隠蔽工作だ。
「あの資料の管理方法はどうなってますか?あと、ロダ・ヤビツのその後はご存知ですか?」
「アレッタ国関係の資料は、今は俺だけが見れる。姉の子供にはあまり素質がなかったからな。姉の孫に素質があったら引継ぐが、ダメならお前にやるよ。
ロダ・ヤビツは縁を切る時に魔法契約を結ばされたから、アレッタ国関連のことは話せなかったし、残せなかった筈だ。一時的に金は手に入ったが、縁を切られたせいでこの国を出てる。最後は他国で魔物に殺されたらしい」
あの資料が貰えるの?まだまだ先の話だろうけど、ちょっと嬉しい。
それにしても、当時ならアレッタ国産の魔法陣だって早々にバレなかっただろうに、ロダ・ヤビツへの仕打ちは厳しくないだろうか?
…不特定多数からの迫害ではなく、特定の人物から未だに隠れている?
「ロダ・ヤビツが縁を切られたのは、魔法陣を漏洩したのとは別に、他にも理由がありますか?」
師匠は少し思案すると、話し始めた。
「ご先祖サマは、アレッタ国を離れてからも情報収集をしていた。それは、王子を警戒していたからだ」
「先程の過激派の王子ですか?」
「そうだ。“異世界人”は、元の世界に妻子が居たらしい。だから、こちらで家族を作らなかった。城の研究室で暮らしてた。彼が亡くなってから彼の研究を保管していたのは、王家だ。なのに、召喚魔法の研究をしていたのは、関係のない伯爵家。ご先祖サマは、王子が資料を持ち出して指示をしたと考えていた」
「王子の指示…」
「伯爵家のヤツが処刑されたのは替玉で、王子が匿った可能性も捨てきれない。後な、アレッタ国が滅んだ時に王子の死亡が確認されてないんだ。処刑された王族の中に、【黒眼】の王子がいた話がなかったんだとよ」
「エッ!その王子が逃げ延びた可能性があるってことですか」
「ああ。それか、死んだけど死んでない可能性がある」
「え…?」
「記憶を見る魔法があるだろう?アレは人格が破壊されるリスクがあるのは知ってるな?王子は、不老不死やホムンクルスについて研究してたらしいんだが…まだ自我がない赤子に記憶を移せば、自分のコピーが作れるんじゃないかと考えていたらしい」
「は?」




