異世界人
師匠の話は、とても面白かった。
“異世界人”は、辺境の村の道端に、ある日突然現れたらしい。
魔法が使えない世界から来たらしく、彼はどうやっても魔法が使えなかった。
魔法がないのに、とても発展した文明の国からきたようで、彼の発想で新しい魔法の使い方がどんどん産まれ、辺境の村は発展していった。
彼はとても人好きのする性格で、周りに沢山の人が集まっていった。
そのメンバーが、アレッタ国の建国の貴族となる。
医術や農業、日用品から法律まで、彼の世界の話を元にした国が出来上がった。それは、彼が安心して暮らせる安全な国だ。
建国の貴族は、彼の話の中で興味惹かれた物を実現する為の存在だった。
今は当たり前のお風呂やシャワー、トイレや飲み水の魔導具、調理用のコンロやオーブン、防衛用の結界なんかも、彼の話が元になったらしい。
「昔は、魔物に怯えて暮らすのが当たり前。中型の魔物が村を滅ぼすなんてよくあることだった。
今みたいに魔法が攻撃や防衛に使えるほど発展していなかった。“異世界人”の功績は計り知れない。
アレッタ国から他国へ流れた技術や文化は、かなり多かった。“異世界人”はお優しい方で、民にもかなりの恩恵を与えてくださったそうだ。
初期のアレッタ国は、本当に素晴らしい国だったんだろうなぁ〜。
“異世界人”の話をご先祖サマは本に纏めてくれていたが、ハッキリ言って、よくできた物語みたいだよ」
“異世界人”の彼は、元の世界に帰る為に“召喚魔法”又は“帰還魔法”について研究していた。
彼は、魔法が使えないまま魔法研究で国に貢献し、亡くなったそうだ。彼は、最後まで故郷に帰ることを諦めなかった。
彼が帰る為にしていた研究を、代を重ねる毎に傲慢になっていった貴族が歪曲して研究し生まれたのが、禁忌となった“召喚魔法”らしい。
この世界にかなりの功績をもたらした“異世界人”の存在が、アレッタ国の滅亡で途絶えたのは幸いだったかもしれない。
彼が生きていた頃の国は、素晴らしかったのだろう。
子孫が災厄を生み出すなど、想像もしてなかったに違いない。
彼の存在が残っていたら、“異世界人”への偏見が生まれていたことは想像に難くない。
彼が話した故郷にある空想の物語。
その中に魔法のある世界の話が沢山あり、多くの人を虜にしていたらしい。
「俺が好きなのは、青い猫が魔導具で男の子を助ける話だ。他にも、ホムンクルスの女の子が戦ったり、魔物に変化して戦ったり、動物型や人型の魔導具に乗り込んで戦ったり、なかなか面白い話がある。子孫が実現させようと考えたのもわかるぜ。
他にも上級魔法に分類される魔法なんかは、“異世界人”の物語から生まれたと思われる物が沢山ある。水上歩行や飛翔なんかがソレだ。
生活魔法を考えたのも、“異世界人”と言われてる。魔力が少ない奴でも使える魔法だってよ。
ご先祖サマは、個人的にこの空想の物語を強請って聞かせてもらってたらしい。
何冊もあるから、複写して持ってけ」
魔法が使えないのに、その発想は凄いとしか言えない。私の興味を惹かれた顔を見た師匠は、あっさり本の複写を許してくれた。
私はほくほくした気持ちで満足していたが、師匠の言葉で現実に引き戻された。
「それで、お前は何が知りたいんだ?」




