師匠のご先祖様
「アレッタ国かぁ…まあ、知ってるけどよ。なんかあったのか?」
お店の奥のスペースで、私がお土産で持ってきた紅茶とフルーツタルトを食べる師匠に本題を告げた。
「王様からも話が来るかもしれませんが、各地で召喚魔法の魔導具による襲撃が行われました。
魔法陣に使われていた文字がアレッタ国のモノだったので、犯人はアレッタ国から逃げ延びた者の子孫の可能性が疑われています。
我が国で発見されたアレッタ国の書物を解読した結果、過去にアレッタ国で発表されていた魔法陣や魔導具が、200年後に他国で商業ギルドに登録されているのを確認しました。
ロダ・ヤビツは、師匠の血縁者で間違いありませんか?」
師匠は、私の話を聞くうちに眉間のしわが凄い事になっていた。
険しい表情のまま黙り込んでいた師匠が、大きな溜め息をつく。
「はあああぁぁ…面倒くせぇな。アンジェ、ちょっと来い」
立ち上がった師匠が廊下を進む。
突き当たりの壁に触れると、壁が消えて部屋が現れた。
「ロダ・ヤビツは、確かに血縁者だ。アレッタ国から逃げ出したご先祖サマは空間魔法が得意だったらしくてな、逃げる時に一族の書物を片っ端から持ってきたらしい。
書物に書かれてた魔法陣を改良して身内で使ってたが、ロダ・ヤビツが金に困って商業ギルドに登録したらしい。
まさか、俺の代でヤツの名を聞くとは。そいつ、その件で縁切られてるからな。
はあ、ここにある全てが、ご先祖から受け継いでる書物だよ」
そこそこ広い空間は、本や書類で溢れていた。
そうだ、師匠は片付けが下手だった…
「凄い量ですね」
「あー見た目は多いけど、中身は微妙なんだ。日記や手紙、領地の報告書なんかも全部あるからな。誰か分別するなり捨ててくれりゃ良かったのに」
「全部読んだんですか?」
「まぁな。もうない国の日常が書かれてるってのが面白くてな」
「私が国で読んだ本は、逃げ延びた人がアレッタ国を懐かしんで書いたような内容でした。かなり進んだ文化の国だったみたいですね。師匠のアレッタ国の考察を伺っても?」
「おう。話してやるから、なんか追加で菓子出せ」
たぶん、師匠は、アレッタ国について誰かに話したかったのだろう。
一族の秘密だから、誰にも話せなかったみたいだ。これは、長くなりそうだ。お菓子は多めに出しておこう。
「アレッタ国が北部では禁句になってるのは知ってるか?俺のご先祖サマは、かなり早い段階で国を捨てたらしい。最初は、とても良い国だったみてーだが、滅びる頃には傲慢な貴族が増えてて、かなり悲惨だったんだと。
たぶん血筋なんだろうが、ご先祖サマも人付き合いが苦手だったみてーで、さっさと貴族を辞めたかったらしい。建国からある貴族家の癖に、ほぼ毎回、兄弟で爵位押しつけあってたってさ!ハハハッ」
「なんというか、師匠のご先祖様らしいですね…」
「そうだなー。そんな性格の癖になんで貴族になったかって話なんだが、建国時に興味惹かれる人物がいたかららしいんだ。
それがな、なんと、“異世界人”だったんだと!」
「は?」
召喚魔法や他の生き残りの子孫について聞きにきたのに、師匠が話すアレッタ国が気になってしょうがない。




