第一王子は友人が心配3
「アルフォンス殿下、残念なお知らせです。ハルトン伯爵夫妻が絡まれています。しかも、クロード様の方が女性に」
隣りに居たシルフィアが、抑えた声で耳打ちした。
そっと視線を巡らせると、ハルトン伯爵夫妻が可愛らしい女性とその取り巻きに絡まれているのが見えた。
なんでこうも絡まれるんだ、あの二人は!
しかも、女難の相があるクロードに絡む女性。厄介事の匂いしかしない!
アンジェリーナなら、また他国で何か恩でも売ってたのかとなるのに!クソッ
「クロードに絡んでいる、あの女性は誰かわかるか」
近くに控えていた宰相に聞くと、視線を追った宰相が答える。
「ああ。南の小国、ルドラ王国の末の王女です。財政難のようなので、王女を輿入れさせて大国の庇護を得ようと必死なのでは」
嫌な情報だ。また厄介な女に好かれたのか、あいつは。
「だか………わた………にいっ……」
聞こえてきた知らない女性の声は、責め立てているようで、こちらから見えるクロードの顔は困り切っていた。
そこに、少し苛ついているアンジェリーナの声が響いた。
「王女殿下、夫のことを気に入って頂きありがとうございます。
この国で知られていることをお伝えいたしますね。私の夫は、昔から大変モテるのですが、その女性がまともな女性だったことがありません。夫に恋慕するのは、性格が悪く、迷惑をかけてくる厄介な女性ばかり。
その女性達は、もう社交界では見かけません。幸せかは存じませんが、結婚できていればいい方でございます。
王女殿下は結婚相手を探されておられるのですよね?フフフ、私の夫を気に入ったと周りに知られると、この国ではお相手を探すのは難しくなるかと愚考致します。
王女殿下の為に、私達はそろそろ離れさせて頂きます。それでは、失礼致します」
アンジェリーナが撃退した。
王女は苦々しい顔で、去っていく二人の後ろ姿を睨みつけている。
あれは、我が国に輿入れして欲しくないな。
二人と目が合ったので、視線でこっちに来いと伝える。
「アルフォンス殿下、立太子おめでとうございます」
「ありがとう。これからも宜しく頼む」
様式美を行って、アンジェリーナが周りに聞こえないよう遮音魔法を展開するのを待つ。盗聴防止の魔道具を今度作ってもらおう。
「アンジェリーナ、大丈夫か」
「大丈夫ですよ。いつものクロード様案件です」
「本当に、なんでそんなに厄介な女に好かれるのか」
「ついに国を超えましたね!」
「殿下もアンジーもしみじみ言わないで」
「あの会話が通じない感じ、久々!」
「あの王女は、要注意リストにいれておこう」
「え?そこまで?」
「被害者がお前ならアンジェリーナが撃退するだろうが、他の者に行くかもしれないだろう」
「ああ、そうですね」
「え?どういうこと?」
「いつものパターンなら、無理矢理押しかけてきたり、薬を盛って既成事実を狙ってくるタイプの厄介な女性ってことです」
「一応、他国の王女だが、あれだけ取り巻きを連れてるなら貞節とは無縁だろう。輿入れされたくない」
「うっ、アンジー離れないでね」
「もちろん!」
取り巻きの男を連れて、アンジェリーナを連れてるクロードに声をかけるなんて、ルドラ王国は本当に輿入れを狙ってるのか?
目の前で、ほわほわ会話してる二人。クロードは、アンジェリーナと結婚できて良かったな。
あの厄介な女性達を相手に戦ってくれる妻は、他にいないだろう。
アルフォンス「シルフィアと早く結婚したい」
シルフィア 「あと半年の我慢ですよ」
アルフォンス「夜着は私が選んでいいのか?」
シルフィア 「…アンジェリーナに相談しますわ」
後日、アンジェリーナからクロード御用達のお店のカタログが二人に届いた。
アルフォンス「クロード、お前はどれを選んだんだ?」
クロード 「なにー?えっ!なんでそれ持ってるの!」
シルフィアはカタログを見て、自分で選ぶことを諦めた。無理、恥ずかしい。