第一王子は友人が心配2
クロードとアンジェリーナの婚約が整ってからは、彼女の話題をふって話を聞いたり、私自身も彼女と関わる機会を増やした。
断れない立場の令嬢を派閥に引き込み、伯爵という立場にした罪悪感もあったのだと思う。
しかし、最初は当たり障りのない話ばかりだったのに、数ヶ月経ち、気づいたら可笑しい話を聞くことが多くなっていった。
「昨日はアンジーが雪山に連れてってくれたんだ。スノウキャットとスノウラビットが可愛かった」
雪山?この国にないぞ。どこまで行ったんだ。
「アンジーと港町に行ったんだ。アンジーがいっぱい魚を獲って料理してくれた」
港町に行ったのに、わざわざ自分で獲ったのか。
「フォレストラズベリーの収穫に行ってきたよ。アンジーがジャムにしてくれたから休憩時間に食べようね。スコーンも持たせてくれたから」
収穫?それはデートなのか?
「最近寒いでしょ?アンジーがストレス発散にダンジョンに行ったらしくて、ファイアグリズリーの毛皮が手に入ったからって、家族分、毛布にしてくれた」
献上してくれてもいいのに。羨ましい。
「妻の夜着は夫が選ぶものだって言われて選ばされたんだけど、本当なの?あ、あんなの選んで良かったのかな」
あんなのってどんなのだ。気になるだろう。
「アンジーとルーカスと狩りに行ったんだ。燻製を作ったからお酒飲む時のつまみに食べてみてね」
乗馬もほとんどしないインドアの優男だったのに、狩り!?しかも燻製を自作!?
アンジェリーナとクロードは、意外にも相性が良かったらしい。奇抜なデートは多いし、クロードが振り回されているようだが、アンジェリーナに大事にされて、クロードの笑顔は増えた。
公爵に聞いたが、アンジェリーナは援助もなく伯爵領を治めているらしい。公爵家との関係もいい。公爵と公爵夫人に、素直に教えを乞うアンジェリーナは可愛がられていた。クロードの弟とも仲が良いらしい。
私との関係も良好なのだろう。二人が結婚してからは、彼女も私も被っていた猫がよく逃げ出している。
私の婚約者のシルフィアとも彼女は交流を深め、最近は会えばアンジェリーナたちの話題になる。
私の周りは皆、アンジェリーナと仲良くなっていく。いつの間にか、名を呼び合うようになっていた。
ルーカスは、一番初めにアンジェリーナに懐いていた。冒険者として各国を回った話を聞きたがり、未だにダンジョン攻略や魔物討伐をしていると聞けば、クロードを口説き落とし一緒に狩りに連れて行って貰うようになった。
ウィリアムは、知り合いが多いアンジェリーナから情報収集をよくしている。他国の情報に強いアンジェリーナに、仕事の相談までしているようだ。
口下手なカルロスは、よく失言してアンジェリーナにイジられている。私は、文句を言うカルロスがアンジェリーナの差入れを楽しみにしてるのに気づいてるぞ。あれは美味いからな。冒険者をしていたからか、下町っぽいメニューが多いのもたまらない。
ふと、国王陛下を見て思う。
陛下は、アンジェリーナを“秘蔵っ子”と言っていた。
二人の結婚パーティーにもお忍びで来ていた。
いつから、彼女の存在に気づいていたのだろう。
一応、国内の情報を集めていた私が、クロードが関わるまで知らなかったくらい隠されていたのに。
彼女は不思議な存在だ。今では、知名度は高いし目立っているが、排除しようとするような敵意や悪意が向けられる事は少ない。それに、どちらかと言えば広く好かれている。
色々な事件の影響で、もう既に、彼女の敵になりそうな奴等は排除されてしまったからだ。
私の王太子への道は、アンジェリーナの狂った幸運値が関わってるのだろうか。
もしそうだったら、身内判定されたってことかな。
そんな想像に笑みが浮かんだ。




