第一王子は友人が心配1
今日は、立太子の式典だ。
私、第一王子アルフォンスが王太子となる。
ハルトン伯爵夫妻が視界に入った。
アンジェリーナをちゃんと見ていろと、クロードに視線で伝えるが、伝わっただろうか。クロードは、どこかアンジェリーナに寛容過ぎるからな。
今日は流石に、誰かに絡まれても助けに行けない。何もない事を願う。
クロードは、私が6歳の時からの友人だ。
学友として集められた十数人の同年代、そこから数年かけて側近候補を選ぶ。
各家の情報や、本人の能力を見極める。王になる為の、最初の一歩だ。
本当は、クロードを側近に選ぶつもりはなかった。
初めて会ったクロードは、どう見ても可愛らしい女の子で、まだ爵位に疎い連中に侮られていた。
公爵子息の癖にダメな奴だ、と当時の私は思っていた。
「なんで、あいつらほっとくんだ?」
何度目かの集りの時、いい加減イライラして、本人に聞いてしまった。
「僕の家、公爵家だから。彼らももう少し勉強したら、落ち着くと思うよ」
予想外な答えに困惑した。
ああ、こいつは爵位がよくわかってる。あいつらの未来の為に言わないのか。
そこからはなんとなく、側に置いて観察した。
クロードは、優し過ぎて損をする。公爵子息としては、ダメな奴だ。
でも、私の側にこいつの優しさは必要だと思えた。
最終的に側近候補として残ったのは4名。
優し過ぎて損をする、女難の相もありそうなクロード。勉強は得意なのに、口下手なカルロス。明るくて、剣術が好きなルーカス。社交的で、情報収集が得意なウィリアム。
癖のある連中は、意外にも相性が良かった。
学生時代も5人で楽しく過ごし、卒業後は次々と婚約が決まった。
ただ、クロードだけは婚約者が決まらなかった。たぶん、公爵も、家を継がせるか悩んでいたんだろう。
側近達と公務をこなし、二十歳も超えて、私も結婚を考えるようになったが、王太子が決まらない。
国内は、第一王子派・第二王子派・王弟派・中立派に分かれて纏まらない。膠着状態が続いていた。
そんな時に、クロードがやらかした。
デビュタントの夜会で、酔っ払って公開プロポーズ。令嬢と離れたところを捕獲したが、夜会から下がったらすぐに寝落ちし、起きたら記憶がない。最悪だ。
ウィリアムが令嬢の情報を集めてくれて、4人で話し合った。
「クロードのお相手は、アンジェリーナ・ロウウェル伯爵令嬢。なんと!幸いな事に、令嬢にも家にも全く問題がない!
彼女は今、魔術学院に在籍してて、成績は上位だって。社交界にはあまり出てないね。昨日がデビュタント。中立派の伯爵家で、借金もないし、領地も問題なし。兄が一人いて、家を継ぐのは兄だってさ」
ウィリアムの報告を聞いた全員が、安堵した。
クロードに近づく女は、本当に碌なやつがいないんだ。ここ数年は、特に酷い。クロードが暗い顔を見せる事が増えていたし、絡まれるからと出掛けもしなくなった。
このまま問題ない彼女と婚約してしまえばいいと思って話をしたが、クロードが私達の話を全く信じない。
毎日、令嬢に連絡をしろと言い聞かせる日々。
そして、最悪なタイミングで令嬢が執務室にやってきた。なんて間の悪い。
しかし、彼女は普通の令嬢と違った。
婚約を断られる気満々だし、クロードに全く興味がない。むしろ、ちょっと嫌ってる。
まあ、あんな注目集めたプロポーズから2週間も放置されたら誰でも怒る。
少しでもフォローしようと、その場を仕切ってみたが、私が令嬢を気に入ることとなった。
物事を冷静に見る目、優秀な魔法の使い手、物怖じしない性格、既にある実績、手元に欲しいと思った。
クロードが再度婚約を願い出た時は、内心で良くやった!と声をあげた。
令嬢から叙爵の話を聞いた後は、急いで公爵と話し合い、派閥に取り込む計画を立て、陛下に話をしにいった。
「そうか。アンジェリーナ嬢を手に入れたのはアルフォンスの派閥か」
陛下は、面白そうに笑っていた。
「ロウウェル伯爵令嬢に、領地付きの伯爵位を与えていただけませんか。ちょうど公爵の領地の隣に、問題のある伯爵がいるので潰します」
「いいぞ。あの娘ならまた直ぐに功績を立てるだろうからな。秘蔵っ子が表に出てくるのが楽しみだ」




