父は娘がわからない
昔から、私は娘がわからない。
優秀で、しっかりしていて、可愛いのは間違いない。
でも、どこか可笑しいんだ!
娘が8歳の時、言ったのがこれだ。
「お父様、私、将来は王宮魔術師団に就職します。婚約者はいりません」
娘の婚約者候補を、考え始めたのがバレていたらしい。
確かに、魔法を習わせ始めて、娘に魔法の才能があることはわかっていた。
でも、娘のウェディングドレス姿みたいじゃない。父の憧れだよ?
「お父様、勝手に婚約したら出奔します」
渋々、父は娘の願いを聞き入れた。
娘が10歳の時、言ったのがこれだ。
「実績が欲しいので、冒険者になります。学院入学までは、家をあけることがあります」
まさか、これだけで他国まで行っちゃうと思わないじゃないか。家をあけるって、日帰りじゃないの!?
「素晴らしい魔道具師に出会って、弟子入りしました。ついでに、魔道具師資格に受かりました」
ついで!?そんなんで資格取れるの!?
「作った魔道具の特許がとれたので、魔術学院は自費で行きます」
ええ!?学費かなり高いのに!?
4年分の学費、娘は本当に自費で出した。
お小遣いも受け取ってくれなかった。くすん
娘が13歳の時、言ったのがこれだ。
「ドラゴン倒してドラゴンスレイヤーの称号貰いました。卒業後に、叙爵します。とりあえず、代官資格と文官資格とります」
本当に資格取ったし、翌年には王宮魔術師団からスカウトされて、卒業後の就職が決まった。
「ドラゴンのお肉食べてみたら、すごく美味しい。お父様も食べてみてください。また狩ってきます」
初めての娘の手料理、まさかのドラゴン肉。
すごくおいしかった。
そして、また狩ってきた。そんなにドラゴンいないよ?どこまで行ったの。
娘が15歳の時、言ったのがこれだ。
「作った魔道具が、王都警備隊と王宮騎士団と王宮魔術師団に採用されました。褒賞がでるので、卒業後に領地なし子爵位は貰えそうです。あ、領地の警備隊の分はカントリーハウスに置いてあります。使ってください」
私の娘、すごくない?
めっちゃ自慢したい。
「あ、嫁入りも婿入りも不要です。相手は自分で探します」
お金目当てや地位目当てが寄ってこないように、娘の活躍が自慢できない。妻や息子にも、外で言わないように注意されてる。叙爵したら解禁される。あと少しだ!
16歳、娘のデビュタント。
妻と一緒に、娘に最高のドレスを用意した。
うん、可愛い!私の娘、可愛い!初めての娘とのダンス、最高!
まさかそこで、娘がプロポーズされるとは…
しかも、相手は公爵家…私じゃ断れない。
家に帰ってきて、娘が言った台詞がこれだ。
「公爵家じゃ流石に断れませんね。
腹を括って婚約します」
あんなに拒否してたのに!潔過ぎる!
家への嫌がらせがウザい。我が家は、別に公爵家との繋がり欲しくないのに。ケッ
どうしようかと思っていたら、娘を筆頭に、妻と息子が反撃していた。父、出遅れたよ!
何故か、公爵家との話し合いに王宮に呼ばれた。
第一王子殿下が同席してる。むしろ、この場を仕切ってる。何故だ。
嫁入りだと思ってたら、婿入りだった。
しかも、娘が伯爵になるらしい。
結婚式は、一年後だって。早くない?まだまだ先だと思ってたのに!
なんか、胃が痛い。公爵閣下が、すごく優しい。
娘がもうすぐ18歳になる。
今日は、娘の結婚式だ。
独立して伯爵になっちゃった娘だけど、私が父だから!エスコートは誰にも譲らない!
泣きながら、最高に美しい娘を婿殿の下までエスコートしたら、婿殿が号泣していた。ドン引きだ。
娘は、そんな婿殿を見て、優しく笑って顔を拭いてあげた。優しすぎないか?
タウンハウスでのパーティーは、娘の狩ってきた高級食材がいっぱいでた。美味しい。
娘の手料理、もう食べられないのかな。
お忍びで、パーティーに国王陛下が祝いにきていた。
私の娘、すごくない?もう自慢し放題!
でも、これからあまり会えなくなるんだ…
夜は、妻としんみりお酒を飲んだ。
娘が人妻に…ぐすん。
そんな感じで、娘との距離ができるのを感じてたのに。
「お父様、新しい魔道具を作ったので差し上げます」
「お父様、クロード様とお出かけしたお土産です」
「お父様、一狩りしてきたので料理長にお肉を渡しました。皆で食べてください」
「お父様、いいお魚が手に入ったのでお料理しました。公爵閣下も呼んだので、今日は家で食べましょう」
「お父様、来月、皆で日帰り旅行に行きましょう。日程を空けといてください」
「お父様、いいお酒が手に入りました。皆で飲みましょう」
来すぎじゃないかな!?
転移魔法使えるとこんなもんなの!?
もっと疎遠になるのを想像してたよ!
いくつになっても、父は娘のことがわからない。
アンジー「お兄様、王家の女性用閨教本を男性視点で読んだ感想が知りたいの」
兄 「…わかった」(好奇心に負けた)
アンジー「どうだった?」
兄 「ハッキリ言おう。アレはかなり特殊だ」
アンジー「…お父様に見せなくて良かった」
兄 「!?」




