終章 それぞれのレゾンデートル その13
終章 それぞれのレゾンデートル その13
「おりゃあぁ!!」
晃は大剣を振り降ろし、目の前のエンチャントへと攻撃する。
ガガンッ!
それを難なく鉄扇で受け止めるエンチャント。
「あなたが最初なのね、中森晃くん♪ 10人という数を見ても、真っ直ぐに向かってくるのは凄いと思うけど、あなた一人なのは少々無謀じゃないかしら?」
「正直、俺は勉強ができないから無謀かなんて分からないけどよ、無謀かどうかやらずに決めるのは違うと思うんだよ! それと、俺は一人じゃないぜ!」
晃の横からバッと誰かが姿を現す。
「わたしもいるわよ! くらえー!」
現れたのは、朋だった!
朋はグローブで殴りかかると、拳をエンチャントの横っ腹に打ち込む。と、同時に自身の能力、『エクスプロジオン』を発動。
拳の勢いそのまま、エンチャントの一人は爆発音と共に吹き飛ぶ。そのまま、床の無い場所までいき、エンチャントの一人が落下して消えた。
「よっし、まずは一人!」
「やったね、晃!」
二人はイエイ! と、ハイタッチを交わした。
しかし、喜びも束の間、別のエンチャントが二人に鉄扇を振り降ろす。
「喜んでるところ、ごめんなさいね!」
晃は瞬時に気配を察知し、朋の腕を掴み、自身の能力『アクセレラシオン』を発動させ、高速でその攻撃を回避、如月会長の元に戻った。
「あぶねぇー!」
「ありがとう晃」
「二人共、お疲れ様♪」
如月会長は労いの言葉を二人にかけた。
「前回の戦いの時が3人で、今回が10人だったからどう攻略しようか考えていたのだけど、まさかその前に中森くんが突っ込んでいくとは思わなかったわ。それに、よくあのタイミングで早瀬さんも合わすことが出来たわね?」
正直驚いたという感じに、二人に声をかける如月会長。
「あはは。まぁ、晃とは昔からの腐れ縁なので、なんとなく合わすことができるんですよ」
朋は笑顔で如月会長に答えた。
「なるほど、二人だからこそできるコンビネーションということか」
鈴原先輩は感心した様子だった。
「あはは! あなた達面白いわね〜。まさか一人倒しただけで勝った気でいるのかしら? ずいぶんと気楽なものね〜」
遠くから、エンチャントが呆れたと言わんばかりに挑発してくる。
「ふふふ♪ 挑発かしら? 前に戦った時と違って、焦ってるって感じで滑稽ね♪」
「言うわね、如月蓮花!」
ギリッとエンチャントは如月会長を睨んだ。
「10人、いえ、残り9人。エンチャントは、あの時の島での戦闘時より脅威なのはまだ変わらないけれど、あの時から私たちも成長したわ。だから、みんなで各個撃破するわよ!」
「「おー!!」」
如月会長の号令に、みんなは一斉に応答した。
(絶望させたと思ったけど、希望は失わないか。あはは、若いわね。でも、なんだかいいわね)
エンチャントはその光景を落ち着いて、そして、どこか悲しそうに眺めていた。
「鈴原くん、お願い!」
如月会長は鈴原先輩に声をかける。
鈴原先輩は、何を考えているか理解し、如月会長に問う。
「いいんですか、如月会長?」
「えぇ、構わないわ!」
鈴原先輩は、その意を汲み、能力『コードナー』を発動した。
如月会長が、エンチャントの横に急に現れる。
「ふふふ、それじゃあ一人消えて貰おうかしら?」
「やっぱりそう来るわよね。だけど、残念。それは予測済よ!」
エンチャントは全て予測の範囲内と、鉄扇を振り上げる。
この様子を見ていた鈴原先輩が無数のナイフをエンチャントの上空へ能力を使い、移動させる。
「ナイフ? あの時の技ならタイミングが違うんじゃないかしら?」
「いや、残念だったな。今回は違う! ナイフレイン!」
鈴原先輩の移動させたナイフは、如月会長がいるにも関わらず、そのまま雨のように降り注ぐ。
味方も気にしないこの攻撃には、流石のエンチャントも驚き、一瞬戸惑う。
「ふふふ、これで二人目ね♪」
「しまった!」
この一瞬の隙をつき、エンチャントの一人を消す如月会長。そのまま、自身に当たりそうになったナイフを数本消して、如月会長は回避。
そのまま、如月会長は近くの、3人のエンチャントへと向かっていく。
鈴原先輩は、降り注ぎ、床へと落ちたナイフを座標移動で手元に戻し、今度は横へと投げた。
そして、自分自身もまた、ナイフの向かう先のエンチャントの後ろへと向かう。
「今度は横から? 鈴原紅輝くんが後ろに来たということは、普通に避けても、座標移動で追尾してくるってことかしら? それなら、こうよ!」
3人のエンチャントは、持っていた鉄扇でナイフが迫る方へと風を起こす。
パンパンパンパン!!
驚異の速さの銃撃音。
遠くにいた楽々浦先輩だった。
彼女は、ニコッと微笑む。
急な風で失速するかと思われたナイフだったが、この銃撃により風よりも先にナイフの軌道が少し変わり、風を回避。
そのまま、ナイフは3人のエンチャントへと向かう。
「超精密射撃!?」
ナイフはそのまま3人のエンチャントへと刺さった。
「うぐっ!」
「ふふ、一人、二人、三人♪」
その隙を逃さず、如月会長は一気に消した。
(楽々浦麗ね。彼女は回復の『トレットマン』だけと思って油断したわ。まさか射撃の腕がここまでなんて。ゼロのデータだけだと分からないこともあるわね)
と、残された4人のエンチャントたちが、楽々浦先輩の方を注目していた。これが命取りとなった。
「うおおおお!!」
「くらえええ!!」
急に目の前から晃と朋が現れる。
「なっ!?」
如月会長がニコッと微笑んだ。
(『エタンドール』、気配まで消せるんだったわね、ナイフばかりで油断してたわ)
晃が大剣を振り降ろす。
朋が蹴りの連撃を繰り出す。
避けられないと悟ったエンチャントたちは、3人が壁となり、1人のエンチャントを守る。
3人のエンチャントはまともに攻撃を受け、霧散した。
(なんとか、残れたわね。それじゃあ、こちらから……えっ?)
「いつのまに? あはは、参ったわね」
いつの間にか、エンチャントの横腹にナイフが数本刺さっていた。血が地面へとポタポタと落ち続けている。
「ふふふ、ようやく気づいたわね?」
何が起きたのかと考えるエンチャントに、如月会長が声をかけた。
「なるほど、『エタンドール』で消していたのは、あの二人の気配だけじゃなかったというわけね? 最初から消したナイフもあったのかしら?」
「最初からじゃないわ、二回目からよ。わたしにも降り注いできたナイフを数本、姿だけ消させて貰ったわ♪」
「あはは、流石ね、如月蓮花。わたしの……負けよ……」
そういうと、エンチャントはその場にドサッと倒れたのだった。




