終章 それぞれのレゾンデートル その12
終章 それぞれのレゾンデートル その12
銀が明凛朱と決着をつける少し前。
如月会長サイド。
「なんで、彼女がわたしの名前を知ってるのかしら?」
「ゼロの仲間、なんですよね? なら、彼から聞いたのでしょう。それよりも、今はエンチャントが何をしてくるか注意しないと」
「それもそうね。悪かったわ、鈴原くん。どうも、彼女の前だと調子が狂うわ」
先程、エンチャントに名前を呼ばれたことにより、浮かんだ疑問を口にした如月会長に、鈴原先輩はそっと答え、今すべきことを諭した。
「確か、エンチャントって3人に分身できましたよね?」
「えぇ、あの時はね」
朋の質問に、如月会長は冷静に答える。
「あはは♪ 覚えていて貰えて嬉しいわ、早瀬朋さん♪」
「わぁ! わたしの名前まで?」
「えぇ、そこの少年、鈴原紅輝くんの言っていた通り、ゼロから聞いていたからね。あなた達との再会を楽しみにして、特徴と名前、それから能力は覚えているわ♪」
エンチャントは、ニコニコと笑い、手を振りながら朋に答えた。
「ふふふ、ほんとにムカつく女性ね♪」
「あら、あなた程ではないと思うけど?」
再びバチバチと視線を交わす二人。
この光景に、周りのみんなは苦笑いを浮かべる。
「なんていうか、犬猿の仲みたいな感じですね?」
「あぁ、中森の言うとおりというか、似たもの同士というか」
「「何か言ったかしら?」」
鈴原先輩と晃がコソコソ話していた内容を、地獄耳なのか、聴いていた二人は、声を揃えて二人に尋ねる。
「い、いえ、なんでも」
「すみません、如月会長」
二人は、凄みに気圧され、謝罪した。
「なにやってるのよ、晃」
「あはは、なんていうか、口は災いの元ですね、鈴原先輩」
晃と鈴原先輩の様子を見ていた朋と楽々浦先輩は、苦笑いを浮かべながら、二人に声をかけた。
と、エンチャントが急に真面目な表情になる。
「さて、お遊びはこの辺にしましょ♪ 宇佐見銀くんがいないのは残念だけど、はじめましょうか、第一能力者学校の生徒会のみなさん♪」
「みんな、気をつけろ! エンチャントが分身するぞ!」
鈴原先輩がそう言うと、早くも、晃が大剣を構えていた。
「鈴原先輩、それなら、分身させなきゃいいんですよ!」
晃が能力を使い超スピードでエンチャントの元へと向かっていく。
「おーりゃあ!」
そして、構えていた大剣をエンチャントに向かって振り降ろした。
ガガンッ!
しかし、晃の一撃は、両サイドから現れた、二人のエンチャントたちの鉄扇により、防がれた。
「くそっ! もう分身してやがったか!」
「あはは! 誰も分身してないなんて言ってないわよ? でも、なかなかいい一撃ね♪」
晃は、能力を使ってみんなの元に戻る。
「すみません、エンチャントがもう分身してるなんて思わなくて」
「彼女はそういう人よ。ふざけている感じがするけど、用意周到なのよ」
晃の突撃を見ていた如月会長は、冷静に解説する。
「でも、これでエンチャントは三人だから分身は終わりですよね?」
楽々浦先輩が如月会長に尋ねると、如月会長は首を横に振る。
「残念ながら、それは早計ね。私たちは彼女の限界を知らないもの。夏に戦った時は、遊びって言ってたのを思い出して」
如月会長は、以前戦った時の事を思い出しながら、楽々浦先輩に忠告する。
それを聞いていたエンチャントは、急に笑い始めた。
「あら、何が可笑しいのかしら?」
「あはは! ごめんなさいね、如月蓮花。少し似てるのかしらと思ったのよ♪ 用意周到というか、注意深いというか。いくつかのパターンを想定しているところなんて、わたしにそっくりだなってね♪ だから、可笑しくて♪」
「それは最悪ね、反吐が出るわ♪」
如月会長がそう言うと、エンチャントはニコッと微笑んだ。
「いいわ、見せて上げる。遊びじゃない、わたしの本気をね♪」
エンチャントは、手にした鉄扇を真上に勢いよく上げる。
すると、どこからともなく黒い蝶が7匹飛んできたと思うと、あろう事か、それぞれがエンチャントへと変身した。
「これが、わたしの本気♪ さぁ、踊り狂いましょう!」
最初にいた3人のエンチャント。そこに現れた7人のエンチャント。
総勢10人のエンチャントが目の前に現れたのだった。
「最悪ね」
その光景を見て、如月会長はぼそっと呟いた。
他のみんなも冷や汗を浮かべた。




