終章 それぞれのレゾンデートル その14
終章 それぞれのレゾンデートル その14
(あれ、あたし生きてる?)
離れていく足音が聴こえ、そちらに振り向くと、そこには先程まで戦っていた5人の後ろ姿が見えた。
(横腹のキズも完全に塞がってる。『トレットマン』ね。あはは、敵だったのにキズを癒やすなんて、甘いわね。でも……)
もう彼女たちの姿は見えなくなった。
(でも、これもあなたたちらしい、か。もしかしたら、あなたたちなら、あるいは……。頑張りなさい。わたしはここで見守らせて貰うわ、今回の結末を)
「如月会長、どうしました?」
エンチャントがいた広場から先に進む途中、急に振り返った如月会長に、鈴原先輩は声をかける。
「いえ、なんでもないわ。さぁ、急ぎましょう、宇佐見くんが待ってるかもしれないわ!」
しかし、如月会長はすぐ前に向き直し、再び進み始めた。
(あなたとの戦い、楽しかったわよ、エンチャント。またどこかで会えそうな気がするわね♪)
明凛朱との戦いから急いで先に進むと、先に開けた場所が見えてきた。
(とりあえず、あそこまで行くか)
俺は走ってその場所に向かう。
そして、到着すると同時に、
「あら、宇佐見くん?」
「銀くん!」
「宇佐見か!」
「あ、ほんとだ! 宇佐見くん!」
「銀! 無事だったか!」
「えっ? みんな!?」
声のした方へ振り向くと、自分が走ってきた道と同じような道が伸びていて、そこには、如月会長を先頭に、みんなの姿があった。
「良かった、銀くん無事だったんだね。なんだか疲れてる? とりあえず回復するね」
麗先輩はそう言うと、能力を使って、俺を回復してくれた。
「ありがとうございます、麗先輩。麗先輩たちも無事だったんですね」
「うん! みんなで頑張ったから」
「お互い無事で良かったです」
俺たちはお互いに顔を見て、頷きあった。
「如月会長たちは、あの先で何かありましたか?」
「そうね、それじゃあ簡単にお互いの情報交換といきましょうか♪」
如月会長から提案され、俺は頷いた。
「そうですか、エンチャントが。それにしても10に分身というのと驚きですが、それに対処したというのもすごいですね! どんな感じか見たかったです」
俺は如月会長から話を聞き、感想を述べた。
「いやぁ、銀にも俺の活躍を見せたかったぜ!」
「晃はそこまで大したことなかったでしょ? ほとんど如月会長と鈴原先輩のおかげだったんだから」
ドヤ顔の晃に、ツッコミをいれる朋。
「ハハッ、晃も朋もお疲れ様」
「銀くんの方は、明凛朱ちゃんがいたんだね?」
麗先輩が心配そうな表情で尋ねてくる。
「はい。まぁ、明凛朱は俺と戦うことに固執してましたから、敵になったのは彼女なりの決断だと思います」
「明凛朱ちゃんは、大丈夫なんだよね?」
「怪我はしてないですよ。あとは、明凛朱自身がどうするかですが、それは彼女に賭けます」
俺は、最後に見た明凛朱の表情を思い出し、力強く麗先輩に答えた。
俺の言葉に、麗先輩も安心したようだった。
「さて、みんな、そろそろ先に進みましょうか」
如月会長が全員に声をかける。
全員が如月会長の方へと向いた。
如月会長の向く先には、今まで通ってきた道とは異なる、大きな道が真っ直ぐと奥へと続いていた。
さらにその先には、何やら大きな建造物が見えた。
「あれは、なんだ? 銀なら分かるか?」
「いや、流石にわからないさ。ただまぁ、なんでもいいさ。ですよね、如月会長?」
「えぇ、宇佐見くんの言うとおりね。あれがなんであれ、この先の道があそこに続いている。あそこが目的地で間違いないでしょう」
「よし!」
俺はみんなの前に出る。
「みんな、ここまで色々とあったが、あそこが目的地だ! もうすぐ辿り着ける。何が待ち受けるかわからないけど、最後までみんなで行こう! 行くぞ!」
「「おぉー!!」」
俺たちは、再びみんなで、最後の目的地に向けて、道を進み始めた。
建造物前、入り口らしきものがすぐ先に見える、大きな広場に俺たちは辿り着いた。
「これはまた……」
「大きいわね」
鈴原先輩と如月会長が感嘆の声を上げた。
二人が驚くのも無理はない。
遠くからは分からなかったが、意外と建造物が大きかった。
「お、入り口が目の前にあるじゃん! 早く入ろうぜ!」
「いや、晃、ちょっと待ってくれ!」
入り口へと走り出す晃を俺は引き止めた。
「どうしたんだ、銀?」
晃の問いに俺は答えず、先程から感じている気配に声をかけた。
「そこにいるんだろ? 出てきたらどうだ!」
「ほお、俺の気配に気づくか」
どこからともなく、声が響き、みんなは驚く。
建造物の入り口前に、突如として、一人の仮面の剣士が姿を現した。
(あの時も感じたけど、この男、凄まじい気迫だな)
俺は男の発する気迫にビリビリとした見えない圧力を感じていた。
「みんな、悪いけど、こいつの相手は俺一人にさせて欲しい」
「そんな! 銀くん危険だよ。師範さんがやられた相手なんでしょ?」
俺の発言に驚き、麗先輩が声を上げる。
「そうだぞ宇佐見、俺たちも!」
鈴原先輩も、協力を申し出てきた。
しかし、そんな中、如月会長だけは違った。
「みんな、ここは宇佐見くんに従いましょう」
「如月会長、でも!」
「晃と同じです! わたしも戦いますよ!」
「みんな落ち着いて。宇佐見くんは男の気配にいち早く気づいて、男の強さを見抜いたのよ。宇佐見くんは私たちを守ろうとしてる。逆に私たちが出たら、宇佐見くんに迷惑をかけることになるわ」
如月会長がそう言うと、みんなは静かになった。
「宇佐見くん、ここで待ってるわ。だから、勝ちなさい!」
「はい!」
(如月会長、ありがとうございます!)
「銀くん、頑張って!」
麗先輩に続いて、みんなも声援を送ってくる。
(みんなもありがとう!)
「ふっ、そろそろ準備はいいか?」
「あぁ、いいぜ!」
仮面の男は刀を抜いた。
俺も合わせて刀を抜く。
「来い! 黒キ原点が一人、“剣帝”。俺が相手をしてやろう!」
「第一能力者学校、生徒会所属。真天一刀流皆伝、宇佐見銀! お前を倒す!」
どちらからともなく、俺と“剣帝”はほぼ同時に飛び出す。
仮面の剣士“剣帝”と、俺の戦いがこうして始まったのだった。




