終章 それぞれのレゾンデートル その15
終章 それぞれのレゾンデートル その15
キンッ!
キンッ! キンッ!
「はぁー!!」
「ふっ!」
キーンッ!
俺と仮面の男の刀がぶつかり合う。
ジリジリと、刀をぶつけながら言葉を交わし合った。
「なるほど、皆伝というだけのことはあるようだ」
「それはどうも。だけど、まだ始まったばかりだ」
「ふっ、それもそうだな」
互いにぶつけていた刀をほぼ同時に離す。
そして、
「「一の型、虎月!!」」
同じ技を同じタイミングで放った。
再び、互いの刀がぶつかり、俺と仮面の男は距離をとった。
(実際に刃を交えて分かった。師範の言っていたとおり、確かに黒くて深い感じがする。悲しみ? いや、どちらかというと、復讐か。それに、戦う前にも感じたが、声に聞き覚えがある気がする)
「どうした、もう終わりか?」
「ハハ、まさか。まだまだこれからだ!」
俺がいろいろと考えていると、仮面の男が声をかけてきた。
俺は改めて刀を構え直す。
(今は集中しよう。どんな感情であれ、明凛朱と違って、想いが乗っている刃は強い)
「いくぞ! 二の型、落葉斬!」
俺は右に左に、縦横無尽に超速度で移動しながら仮面の男に刀を振り降ろしていく。
しかし、仮面の男はそれを器用に躱していく。
俺は十数回の連撃を放ち、元の場所に戻る。
「くっ、そんな簡単に避けられるなんてな」
「なかなかの速さだったが、真天一刀流を極めている俺には、避けることなど造作もない」
「造作もないか、地味にショックだな」
「次は俺が、真の連撃というのを見せてやろう」
そう言うと、仮面の男が刀をギュッと握り直した。
「五の型、瞬迅暁!」
目にも止まらぬ速さで、剣撃を繰り出してくる仮面の男。
(速い! 師範以上か!?)
「うおぉぉ!!」
俺はそれを全て刀で受け続けていく。
乾いた金属音が連続で響き、刀同士がぶつかる度に、火花が飛び交う。
(まずい、このままだと後ろにいる麗先輩に被害が出かねない)
「くらえ! 三の型、昇龍剛破!!」
俺は仮面の男の剣撃を受けながら、真天一刀流の中でも一番重い一撃を放つ。
ガガンッという鈍い音を響かせ、仮面の男の剣撃を打ち消した。
「はぁ、はぁ、はぁ。なんとかなったか」
「ほぅ、一撃で俺の剣撃を止めたか。だが、少々無理をしたようだな?」
俺は仮面の男の言葉を無視して、後ろを振り向く。
「大丈夫でしたか? 麗先輩」
「うん大丈夫だよ。銀くんは大丈夫?」
「ええ、全く問題ないです。大丈夫ですよ」
俺は麗先輩に、グッと親指を立てて見せた。
そんな俺の様子を見て、麗先輩は笑顔を向けてくれた。
(麗先輩の笑顔、それだけでだいぶ救われるな。ははっ、俺もだいぶ惚れたというか。彼女の笑顔は守らないと)
「悪いな、待たせた」
俺は仮面の男に声をかける。
「別に構わない。彼女はお前にとって大事な人なんだな?」
「あぁ、そうだ」
俺が答えると、仮面の男は笑い始めた。
「ハハハハ!」
「な、なんだ? 何がおかしいんだ?」
「すまない。だが、戦いの最中にする会話ではないと思ってな。だが、そうか。俺も周りの無関係の人に被害が出るのは避けたいからな」
仮面の男からまさかこんな言葉が出るとは思わず、俺は少し驚いた。
(黒くて深い感情を乗せてくるのに、随分と人間臭いとこがあるんだな。ゼロなんかよりよほど人間らしいというか)
「どうした、なぜそんな表情をしている?」
「いや、あんたでもそんな感情があるんだなと思ってな」
「感情、か。確かに、お前との戦いで思い出したのかもな。いや、今のは忘れてくれ。さて、そろそろいいだろう」
(思い出す? どういうことだ? まだ聞きたいことがあるが、どうやら待ってくれそうにないか)
仮面の男が再び刀を構える。
俺もその様子を見て、同じように刀を構い直した。
「さて、仕切り直しといこうか」
「あぁ!」
仮面の男は少し遠くへと離れる。
「今度は、俺がこの技を使おう! 二の型、落葉斬!」
縦横無尽に高速移動しながら刀を振り降ろす技。先程、俺がやった技を、仮面の男も使ってくる。
(やはり、この男も真天一刀流をマスターしてるな。たぶん、全ての技を使えるのだろう)
仮面の男の振り降ろす刀を躱しながら、考えていると、ふと、気になることを見つけた。
(ランダム性のあるように見えるこの技は、一番使い手の癖が現れる。だから、一度戦ったことのある相手のなら、攻略し安いんだが……。この男の剣撃、見え覚えがある?)
右、左、上、左、そして、上。
どこで見たか忘れたが、やはり俺はこの男の癖を知っている。次は左だ。
(やっぱりか、来た!)
「ここだ! 一の型、虎月!」
俺は、左から振り降ろされた男の剣撃を躱し、そのまま目の前に現れた仮面の男に攻撃を仕掛ける。
「なに!?」
カツンッと乾いた音が鳴る。俺の一撃は残念ながら浅く、男の仮面を掠めただけだった。
仮面が割れ、男の素顔が露わになる。
無精髭に、キレイな銀髪が姿を現す。
俺は驚きの声を上げた。
「そんな! 嘘だ! なんで……。なんで父さんが!?」
仮面の下の顔は、存在するはずのない、死んだはずの父さんの顔をしていた。
カランカランと、割れた仮面が地面へと落ち、静かに響く。
「驚いたな。成長したな、銀?」
仮面の男、父さんは、静かに口を開いた。




