終章 それぞれのレゾンデートル その10
終章 それぞれのレゾンデートル その10
キンッ!
キキンッ! キーンッ!
「にひひ♪ すごいすごい! やっぱりお兄ちゃんはすごいよ!」
二本の刀を次々に振り下ろしてくる明凛朱。
右、左、そして両手を同時にと、明凛朱と似たように、自由奔放に振り下ろされるため、受けるだけでも大変だ。
(刀は、扱う人の性格が現れるなんていうが、本当だな)
「それそれそれ〜♪」
「くっ、虎月!」
一瞬の隙をつき、振り下ろされる刀に合わせてこちらも技を放つ。
バッと、後ろに下がる明凛朱。
「わわっ! 危ない危ない、さっすがお兄ちゃん♪」
「今のタイミングでも避けれるか。速さや力以外にも成長したな、明凛朱」
「にひひ♪ ありがとう、お兄ちゃん♪」
戦っている最中にも関わらず、笑顔でお礼を言ってくる。
(本当に自由奔放だな。まぁ、あれでも真面目なんだろうけど)
「それじゃあ、またいっくよー!」
そう言うと、明凛朱は二本の刀の切っ先を後ろに向けながら、こちらにスピードを上げながら走ってきた。
「悪いけど、こっちもいかせて貰うぞ!」
俺は一度、刀を鞘に納めた。
「真天一刀流、四の型! 絶影剣!」
向かってくる明凛朱に対し、居合いの構えから斬撃を飛ばす。
それが、まさに明凛朱に当たるかと思われたその時、明凛朱は体を大きく仰け反らせ、斬撃を躱した。
「おっと! 飛ぶ斬撃、絶影剣だよね? 懐かしいなぁ。昔見た時より速いね!」
「師範に弾き飛ばされた事ならあったけど、体を仰け反らせながら避ける奴は初めて見たかもな」
「わーい! やったね♪」
明凛朱は飛び跳ねて、体全体で喜びを表した。
(小さい時から何度も稽古をしたから、お互いにお互いの技や癖を知っている。それ故に非常にやりづらい)
「ねぇ、お兄ちゃん?」
急に明凛朱が尋ねてくる。
「どうした? 稽古じゃない、本当の戦いの最中だぞ?」
「うん、それはちゃんと分かってるよ。でも、明凛朱ね、少しお願いがあるんだ」
「お願い?」
「うん、明凛朱、お兄ちゃんにもっと成長してるところ見て欲しいんだ。だからね、お兄ちゃん、能力使ってよ?」
明凛朱はニコニコ笑いながら、俺に能力を使うように言ってきた。
やつらの仲間なら、明凛朱はきっと俺の能力を知っているはずだ。
それを知っていながら、能力を使って欲しいと頼んでくる。挑発か、それとも……。
「わかった。昔は、稽古中の能力使用は禁止だったもんな。俺の能力を使ってやる。そこまで言うんだ、きっと何か策でもあるんだろ? だけど、能力を使うなら俺もここからは本気だ!」
「お兄ちゃんの本気、明凛朱も本気で受け止めるよ♪」
そう言うと、明凛朱は再び、走りながらこちらに向かってきた。
二本の刀を同時に振り下ろしてくる明凛朱。
しかし、俺はそこにはまだいなかった。
「あれ? あぁ、そっか。これがお兄ちゃんの能力か〜」
明凛朱は、過去の場所に戻っていた俺の方に向き直し、俺が瞬間的に移動したのを確認したようだ。
「逆転する力、メノスだよね? う〜ん、便利そうだな〜♪」
実に明凛朱らしい感想というか、ニコニコしながら話をする。
「お兄ちゃんも能力の一部を見せてくれたし、明凛朱も能力を見せてあげるね?」
(明凛朱の能力か。そういえば見たことがなかったな。一体どんな能力なんだ?)
明凛朱は、二本の刀の切っ先をそれぞれ上下に向け始めた。
「行くよ、お兄ちゃん♪ 朝の続きだよ!」
(朝の続き。そうか、訓練場でもあの不思議な構えをしていたな。一体何をするつもりだ?)
明凛朱はその不思議な構えのまま、二本の刀を勢いよく、上下に刺した。
(これは!)
俺は慌てて能力を使い、それを避けた。
明凛朱が上下に刺した切っ先。それが今まさに、先程まで俺がいた場所の上下から、姿を現した。
あのまま、あそこにいたら、俺は上下で串刺しになっていただろう。
「明凛朱、まさかお前の能力は!」
「にひひ♪ たぶんお兄ちゃんの思ってる通りだよ♪」
明凛朱は、俺との距離を詰めることなく、その場で二本の刀を振り下ろす。
その刃は、俺の目の前から急に現れ、俺を襲う。
「はっ!」
キーンッ! と乾いた金属音を響かせ、俺はそれを弾いた。
「なるほどな、今の攻撃、空間を割るように切っ先が現れた。明凛朱、お前の能力は、空間を操る『エスパース』か!」
「にひひ♪ 正解だよ、お兄ちゃん♪ 明凛朱は空間を思い通りにできるんだ♪ 使い方もいろいろ。他にもね〜、」
「こういう感じのも!」
明凛朱は、急に前に飛び出したと思うと、俺の前に急に現れた。
ワープや瞬間移動とはまた違う。空間内を移動して、好きな所に空間を裂いて移動してきた感じだ。
明凛朱は再び能力を使い、元の場所へと戻った。
「これでお互いの能力が分かったね♪ それじゃあまた始めよう、お兄ちゃん♪」
明凛朱は二本の刀を構え、一本の切っ先をこちらに向けて、仕切り直しを宣言してきた。
「あぁ。行くぞ、明凛朱!」
俺もそれに応えるように、刀を明凛朱の方へと向けた。




