終章 それぞれのレゾンデートル その9
終章 それぞれのレゾンデートル その9
「急ごう! ゼロの話では、まだ始まったばかり。急げば間に合うはずだ!」
(まさかとは思ったが、本当にそんなことが、人の手によってできるとは)
俺は先程別れた、ゼロの話を思い出した。
「この場所はね、君たちも薄々気づいてるとは思うけど、ブラックウォールの中さ」
「やはりか」
ある程度予想していたとはいえ、本当にブラックウォールの中とは思わなかった。
「それで、あなた達はここで一体何をしているの? どうせ、あなた以外にもいるのでしょう?」
如月会長が尋ねると、ゼロは首を縦に振った。
「確かに、僕以外にもいるよ♪ 僕たちはが、やろうとしていることは、10年前の再現と思ってくれて問題ないさ。まぁ、当時のモノよりは、小規模になると思うけどね」
「ちょっと待て、それは新たな能力者を生み出そうとしているのか!?」
ゼロの答えに、鈴原先輩は驚き、ゼロに問う。
もちろん、俺も含め、他のみんなも驚いていた。
「結果的にはそうなるんじゃないかな?」
「結果的には?」
「それが最終目標なのかは、僕たちは知らされていないということさ。まぁ、僕はなんにしろ、面白いからいいけどね♪」
ゼロは答えると、ケラケラと笑い始めた。
「目的についてはもういいわ。それで、あなた達のボスは誰?」
如月会長は、睨みながらゼロに問う。しかし、
「僕が教えると思うかい、如月蓮花?」
ゼロもこれには、負けじと睨みながら答えた。
「如月会長、流石にそれは無理ですよ。ゼロも別に仲間になったわけではないですから」
「そうね、少し無理があったわね」
俺が如月会長を止めると、すぐにいつもの如月会長に戻った。
「ゼロ、敵なのに少しでも情報を教えてくれてありがとう。ブラックウォールの再現、それがどれ程のものかは分からないが、世界が混乱するのは間違いないだろう。だから、俺たちは君たちの目標を阻止させて貰う」
俺がゼロに宣言すると、ゼロはふっと笑みを零した。
「止めるなら急いだ方がいいよ。まだ始まったばかりだからね、急げば間に合うんじゃないかな?」
思いがけない助言に、俺は少し驚いたが、俺は改めてみんなに号令をかけた。
「みんな、とりあえず先に進もう! ブラックウォールの再現をみんなで止めるぞ!」
「「おー!!」」
俺たちは奥の階段から先へと急いだ。
階段を登ると、また長い道が続いていた。
俺たちそこを走り続けていた。
(この道の感じ、ゼロのいた広場に着く前と似ているな。と、あれは……)
走る俺たちの前に、やはり広い場所が見えてきた。
「みんな! この先にまた広い場所がある。恐らくそこにも……」
一番前を走っていた俺は、後ろにいたみんなに伝えようとした、その時だった。
突然、俺の足元の感覚が無くなった。
俺の体が落下し始めたのだ。
「宇佐見!」
「宇佐見くん!」
みんながそれぞれ異変に気づき、声を上げる。
(まさか、床が?)
そう思い、すぐに上を見て確認するが、床は無くなっていない。
どうやら、空間そのものに穴が開き、それで落下したようだった。
俺はなんとか体制を整え、下の地面に無事着地した。
「宇佐見くん、大丈夫!?」
上の方から心配そうに麗先輩が尋ねてくる。
「はい! 俺は大丈夫です!」
俺は落ちた先で、周りを確認する。
どうやらこちらにも道があり、上と同じように奥へと続けているようだった。
「宇佐見! お前の能力で戻れるだろ?」
「はい! 確かに戻れます! ただ!」
「どうした!?」
「ただ、こちらにも同じような道があるので、こちらも攻略すべきと思います!」
能力で戻って来いという鈴原先輩に、俺はこちらの状況を伝えた。
「俺は一人でも大丈夫です! なので、こちらはこちらで攻略を進めますので、奥で落ち合いましょう!」
俺が一つ提案すると、しばらく上から声が返ってこなくなった。恐らく、上で相談しているのだろう。少し待っていると、
「わかったわ、宇佐見くん! こちらはこちらでなんとかするので、宇佐見くんも気をつけて攻略するように!」
「銀! 奥で待ってるから、絶対来いよ!」
「如月会長、晃! ありがとう! それじゃあお互いに健闘を祈ろう!」
こうして、俺たちは、二手に分かれて攻略を再開した。
如月会長サイド。
「また広い場所に出たわね。ということは、誰か現れるかしら?」
「あら、宇佐見銀くんはいないのね? 残念だわ〜」
如月会長たちが広い場所に到着し、警戒していると、奥の方に見覚えのある妖艶な着物姿の女性が一人現れた。
「お姉さんは確かエンチャントと言ったかしら? 残念だけど、宇佐見くんは別のルートよ。まぁ、あなた程度、私達だけで問題ないでしょうね♪」
「あらあら、相変わらず生意気なお嬢さんね、如月蓮花?」
二人は、バチバチと視線を交わし始めた。
下のルート、銀サイド。
「着いた。こちらにも広い場所があったか。ということは……」
俺は刀を抜き、辺りを警戒する。
と、目の前の空間が不自然に揺らぎ始めたと思うと、一人の少女が姿を現した。
「にひひ♪ お兄ちゃん、やっと来たんだね?」
「明凛朱!? なんでお前がここに? いや、その前に今までどこにいたんだ?」
俺が尋ねると、明凛朱はニコニコと笑いながら近づいてくる。
「明凛朱は、ここがどこか知ってるよ? それだけ伝えればわかるよね?」
「まさか明凛朱、お前もやつらの味方なのか!?」
「うん! そうだよ♪ 驚いた? にひひ、でも明凛朱はそんなことどうでもいいんだ♪」
明凛朱は近づきながら二本の刀を抜く。
「明凛朱はね、お兄ちゃんと二人っきりで戦えればそれでいいんだから!」
二本の刀で斬りかかってくる明凛朱。
俺はそれを刀で受け止めた。
こうして、俺と明凛朱の戦いが始まった。




