終章 それぞれのレゾンデートル その8
終章 それぞれのレゾンデートル その8
「さてと、仕切り直しか」
ゼロとの戦いの中、やつの能力が何か判明したとはいえ、迂闊に近づけないのは変わらない。
(対処できるのは、俺と如月会長、それから……)
「今度はこっちから行くよ!」
ゼロはそう言うと、パッと姿を消し、俺たちの後方にいた、晃の前へと姿を現す。
急に目の前に現れたゼロに驚きながら、慌てて大剣を振り上げる晃。
「あはは! 遅い遅い。まずは、一人♪」
「晃!」
「くそっ!」
ゼロは晃へと手を伸ばした。
「ふっ!」
と、その時、ゼロは遠くへと移動した。いや、移動させられた。
「俺がいる限り、仲間をそう簡単には消させない」
「座標移動か。ふー、面倒だな、鈴原紅輝」
ゼロは鈴原先輩を睨みつけた。
「ありがとうございます、鈴原先輩!」
「気にするな、中森。それよりも、いつ来てもいいようにしっかり身構えておくことだ」
鈴原先輩の忠告に、晃は「はい!」と大きな声で返事をした。
(ゼロのあの移動方法、もう少しで何か掴めそうなのだけど……)
「ねぇ、宇佐見くん?」
ふと、いつの間にか横にいた如月会長に声をかけられる。
どうやら能力で気配を消していたようだ。
「なんですか?」
「しばらく、あなたの剣術でゼロに攻撃し続けて貰えないかしら? できれば奥の方に押し込む感じで頼むわ♪」
「結構無茶言いますね、まぁ、できますけど」
「悪いわね、少し確かめたいことがあるのよ」
如月会長はそう言うと、ウインクした。
(これは手伝わないと何されるか分からないな。仕方ない、やるか)
俺は刀を構え直し、ゼロの方へと向いた。
「真天一刀流、五の型。瞬迅暁!」
前方へと、まるで日の出かのように眩しく感じる程、目にも止まらぬ速さで剣撃を繰り出し続ける技だ。
常人なら間違いなく、派手に斬り刻まれて、さようならという感じだろうが、
「あはは! すごい速さだね♪ 流石は真天一刀流だよ!」
ゼロは例のごとく、瞬間移動的な技で避け続けていく。
と、何度目かの回避後、突然ゼロの後方の床が全て消えた。
危うく俺も落ちそうになり、能力で床を戻す。
「く、床が! 如月蓮花か、やるね」
ゼロはというと、消えずに残っていた俺の後方の床へと移動。
どうやら如月会長がゼロの後方に周り込み、床を消したようだった。
「あら、残念。落ちてくれれば楽だったのに♪」
「いや、如月会長。俺も落ちそうになったんですが?」
「ふふふ、宇佐見くんなら大丈夫と思ったのよ♪」
如月会長は笑顔でそう伝えてきた。
(今のでハッキリしたわね、彼の移動能力の秘密♪)
「宇佐見くん」
如月会長は俺の方へとやってきて、ゴニョゴニョととんでもない事を伝えてきた。
「というわけだから、よろしくね♪」
「いや、いきなりですか!? それが本当ならいいですけど、間違いなら恨みますからね?」
俺は如月会長の急な提案に驚きながらも、それに乗ることにした。
如月会長は、そっと、その場にしゃがみ込み、床に手を触れる。
そして次の瞬間、如月会長の能力により、この広場の全ての床が消えた。
「なっ!?」
「きゃあ!」
「な、なに?」
事情を知らない他のみんなは、当然ながら、突然床が消えたことに驚く。
俺は、みんなが落ちる前に、如月会長に言われた通り、一瞬にして元に戻した。
「宇佐見くん、あとはお願いね♪」
「はい!」
俺は再び、ゼロへと向き直し、刀を構える。
ゼロは、どこか慌てている様子だった。
(くそ! 床に仕掛けた“原点”が消えた! これじゃあ“原点”に戻れないじゃないか!)
「行くぞ、ゼロ! 二の型、落葉斬!」
右、左、上、また右。
俺は様々な方向からゼロに刀を振り下ろす。
ゼロはそれを、瞬間移動せず、目で追いながら避けていたが、それにも限界がきた。
「うわあああ!!」
数ヶ所をほぼ同時に斬られ、ゼロは絶叫し、血飛沫を上げる。
ゼロはそれを、息を切らしながら能力を使い、治そうした。
「まだだ! 四の型、絶影剣!」
居合いの構えから勢いよく刀を抜き、そのまま横へ振るう。
見えない斬撃が飛び、ゼロへ追い打ちをかけた。
「悪いが、また治されても面倒だったんでな。やり過ぎだとは思うが、勝たせてもらったよ、ゼロ」
ゼロは痛みに耐え切れず、その場で気絶。ゼロの足元は大量の血が流れていた。
(僕は、あれ、どうしたんだっけ? あぁ、そうか。お兄さんたちにやられたのか。あはは、楽しかったな、お兄さんたちとの戦い。でも負けちゃった。ん、なんだろう? 温かい?)
「麗先輩、どうですか? 治せそうですか?」
「うん、まだ僅かだけど、息があるから大丈夫だと思うよ」
ゼロが意識を失った後、俺は急いで麗先輩を呼んで、能力を使って欲しいと頼んだ。
最初は驚いていたが、俺が真剣に頼むと、理解し、能力を使ってくれた。
ゼロのキズは一瞬にして塞がる。
そして、ゼロは目を開けた。
「あれ、生きてる? なんで?」
ゼロは目を丸くして、驚いていた。
「ふぅ、良かった、死ななくて。麗先輩にお礼を言うんだな」
「なんで、あのままにしなかったのさ?」
ゼロは不思議そうに尋ねてきた。
彼には既に敵意は感じられなかった。
「俺は別に人殺しはしたくないからな。それに、俺たちが勝ったら、この場所がなんなのか教えてくれるんだろ?」
そう言うと、ゼロは急に笑い始めた。
「あはは! やっぱりお兄さんたちは面白いや! そういえばそんな約束してたね? でも普通さ、敵を手当てなんてするかい? あはは! 本当に面白い♪ まぁいいや、分かった、約束は約束だからね。うん、教えてあげる。でも、一度しか言わないからしっかり聞いていてね♪」
そう言うと、ゼロは、座りながら語り始めた。




