第3章 能力消失事件 その6
第3章 能力消失事件 その6
廃工場、A区画。
ここは、工場がまだ稼働していた時は小型のロボット、ドローンなどが作られていた区画だったはずだが、なるほど、徘徊しているものもそのサイズらしい。
(小学生の時に見学に来た時と工場の構造自体は同じか? だとすると、能力を使えばC区画まですぐだが……)
改めて辺りを見回すが、やはり数が多い気がする。
(本当に押収されたものだけか? それ以上にもありそうだが? どちらにしろ、後から来る楽々浦先輩たちのことを考えると、ある程度は片付けながら進んだ方が良さそうだな)
と、考えていたら、早速前方から兵器ドローンが3機やってきた。
搭載された小銃で撃ち込んでくる。
それを全て躱しながら、前進。ジャンプして、そのまま刀を抜き、横に一閃。
3機を同時に破壊した。
(なるほど、敵と認識して攻撃を仕掛けてくるドローンか。簡易型のようだから、そこまで大変じゃないかな。)
俺はそのまま、B区画へと急いだ。
B区画、中型兵器製造エリア。
ここも以前来た時と同様に、当時開発していたサイズのロボットが徘徊していた。
ドローンが減った分、数は少ないが、大きさに合った剣やマシンガンなどが搭載され、攻撃力が少し上がっていた。
(A区画は数が多くて少し時間がかかったが、ここはもうすぐ終わりか、確かこの先にC区画に上がるためのエレベーターがあったな)
と、横の部屋から中型の人型自律ロボット兵器が3体現れ、剣を振り下ろしながら、マシンガンで撃ってくる。
「おっと、危ない危ない。こっちは一人だってのに、容赦ないな。まぁ、ロボットだしな」
なんて一人で愚痴りながら、攻撃を避ける。
「ただまぁ、ロボットだから動きが単純だぜ?」
1体目の剣を受け流しそのまま斬る。そこに2体目がマシンガンを撃とうとするので、銃口の先端を斬り落とし、そのままロボットの上から斬りつけ破壊。
3体目がタイミングを計算したのか、その場に剣を振り下ろすので、それを後ろに下がり避け、振り下ろされた刀身を駆け上り、ロボットの頭上から刀を突き刺し、破壊した。
「ふぅー。さて、行くか」
俺は先にあったエレベーターを利用し、C区画へと向かった。
C区画、大型兵器製造エリア。
大型のロボット兵器が製造されているので、それが徘徊していると思ったが、出てきたのはドローンや先程の中型のロボットばかり。
背後には小型のドローンが数体、煙を上げていた。
「さてと、ここまで問題なく来れたな」
俺の前は行き止まり。いや、正確には、大きく重厚な鉄の扉が閉まっていた。
この先がC区画最奥だ。
「なるほどな、この先に今回のターゲットがいるのか、分かりやすくて助かる」
確か、この先には大型のロボットを保管している倉庫があったはずだ。
ここまで犯人に出会っていないので、この先にいるのだろう。
「よし、行くか」
俺は敢えて扉は開けずに、能力を使って中に侵入した。
C区画、最奥部。
部屋の奥には、工事稼働時に、大型のロボットを保管していた倉庫のシャッターが見える。
そのシャッターの上に、それを操作するボタンがあり、そこまで左右の階段から辿り着けるようになっている。
俺は、そのボタン近くに、マシンガンのようなものを所持した、黒い服の男を発見した。
なるほど、あいつが今回の犯人か。
どうやらまだこちらには気づいていないようだった。
「よう、おっさんが今回のテロの主犯ってことでいいのか?」
「だ、誰だ!? どっから来やがった!?」
俺が声をかけてようやく気づき、銃口をこちらに向ける。
「俺の質問に答えて欲しいんだが、まぁいいか。こっちからだよ。ここしか入口ないだろ?」
やれやれといった表情で、俺は後ろの重厚な扉を指さす。
「ふ、ふざけやがって! 扉が閉まってるじゃねぇか! それにここまで俺が設置したドローンやロボットがいたはずだぞ!?」
「あれ、やっぱりあんたが設置したのか。前に来た時はあんなのなかったしな。あれなら全部ぶっ壊した!」
俺の発言に、男は驚きの表情を隠せないといった感じだった。
「そんなことできるわけ……お、お前のその制服、まさか最近話題の“能力者学校”か!?」
男は俺に指をさし、尋ねる。
「今気づいたのか。そうだよ。だからおっさん、大人しく投降してくれないか?」
「く、ここまで来て投降なんてできるか! し、知ってるぞ! 能力者にはランクってのがあるはずだ! この間どこからか手に入れた情報端末で上位ランクの顔と能力はすべて確認済だ! その中にお前はいなかった! つまりはランクが低いってことだ!」
情報端末で情報確保か。能力者ランクと能力の情報が漏れてるってのは新情報だな、あとで如月会長に報告しよう。
ただ、これは逆にラッキーか。
俺は男に“真実”を伝える。
「あぁ、俺はFランクだ!」
すると、男は余裕の笑みを浮かべる。作戦成功だ。
「Fランク? あっはっは! そりゃあ最低ランクじゃねぇか! くそ、びびって損したぜ! そんなやつがここまで一人でノコノコ現れるなんて、とんだバカだな! そんなバカに、教えてやる! ここはC区画、大型の自律型兵器を作ってたとこだ! そしてここは大型の自律型兵器の保管庫だった!」
「そんなことは知ってるんだが、それで?」
「く、舐めやがって! じゃあ、社会見学としてその兵器を見せてやるよ!」
そう言うと、男は手元にあったボタンを押す。
と同時に、どこからか警告音みたいな音が響き、奥のシャッターが開き、倉庫から3体の大型自律型兵器ロボットが姿を現した。
「Fランクじゃ、これには対抗できねぇだろ! はっはっは! 死ねぇ!」
なんともテンプレらしいセリフを吐く犯人だ。
やれやれ、仕方ない、すぐに破壊するか。
「落葉斬!」
スピードを上げて、3体のロボットを斬っていく。
恐らく、男の目には何が起きたか分からないはずだ。
俺が斬り終わると、大きな爆発音をさせ、見るも無惨な姿に変わった。
「お、おまえ! 何をしやがった!?」
「斬った!」
「ふ、ふざけるな! そんな刀なんかで斬れるようなもんじゃねぇんだよ! く、くそがー!」
男は、叫びながら、持っていたマシンガンで俺目掛けて撃ちはじめる。
しかし、すべての弾丸は床を撃ちぬいた。
「悪いな。俺は“まだそこにはいない”」
俺は能力を使い、一瞬にして男の後ろに立つ。
「な!? お、お前、いつのまに後ろに移動し、うぐっ!」
「移動はしてないさ。前に来た時に“戻っただけだ”。って悪い、聞こえてないか」
俺は柄で、男のみぞおちにきつい一撃をお見舞いし、男を気絶させた。
男を抱え、スマホを取り出し、如月会長へと連絡を入れた。
「こちら、宇佐見銀、任務完了です」
『あら、早かったわね♪ ご苦労さま。まだ、楽々浦さん達は着いてないかしら?』
「そうですね、まだです」
『そう。それじゃあ、犯人は宇佐見くん一人で捕まえたのね? 息はある?』
「え? いや、流石に殺さないですよ。気絶はしてますが、生きてます。引き渡すんですよね?」
『えぇ、とりあえず警察署の方も収まったみたいで、生徒会棟に犬山さんがそちらの様子を聞きたくて来ているの、だから、生徒会棟まで戻ってきて貰えるかしら? あ、楽々浦先輩たちと合流してね?』
「分かりました、それでは、合流してから戻ります」
そう伝えて、俺はスマホを切った。
「さてと、ふぅ、腹減ったな」
俺は再度、男を抱え直し、鉄の重厚な扉を開けて、外に出るのだった。




