第3章 能力消失事件 その7
第3章 能力消失事件 その7
C区画の最奥部から外に出て、来た道を戻り、エレベーターでB区画まで降りると、A区画の方から来たのだろう、見知った顔が3人現れた。
「お、銀! やっと追いついたぜ。って、それ……」
晃が間抜けな顔で俺が抱える男を指差す。
「ん? あぁ、例のテロの犯人だよ。気絶してる」
「いや、気絶してるのは見れば分かるって。もう終わったのかってことでさ」
「まぁ、大したことなかったしな」
そう言うと、晃は悔しそうな表情を浮かべた。
「くそー、俺も活躍したかったぜ!」
「なら、これ持つか?」
「いや、いい」
晃に犯人を渡そうかと思ったが、断られた。
「宇佐見くん、怪我してない? 大丈夫?」
「はい、約束通り無傷ですよ、楽々浦先輩」
心配する楽々浦先輩の頭をわしゃわしゃと撫でる。
「ちょ、ちょっと宇佐見くん!」
とか言いつつ本気で嫌がっているわけではないことを俺は知っている。
「あはは、いつも通りね。そう言えば、ここまで来るまでに、煙を上げていたロボットとかドローンが大量にあったけど、あれも宇佐見くんだよね?」
朋が微笑ましく眺めながら尋ねてきた。
「ん? そうだけど、何かあったか?」
「ううん、それがいい道標になったよって」
「なるほどな。確かに通ってきた場所にいたドローンやロボットは全部壊してきたから、分かりやすかったかもな」
俺は、楽々浦先輩を開放しながら、朋に答えた。
「さてと、それじゃあ生徒会棟に戻ろう。如月会長からそう言われてるんだ。どうやら警察署の方もなんとかなったみたいで、犬山さんが生徒会棟で待ってるみたいだからさ」
俺が如月会長に言われたことを伝えて、全員で帰ろうとしたその時だった。
「やっぱりおじさんじゃダメだったか〜」
突然、俺たちの前に、一人の少年が現れた。
「誰!?」
朋は警戒心を露わにし、拳を構え、戦闘態勢に移行する。
(なんだ、こいつ? 気配もなく急に現れた。俺が気配を感じないことなんて)
「お姉ちゃんは早瀬朋、能力は『エクスプロジオン』だったよね♪」
「うそ!?」
少年は一瞬にして、朋の横に立ち、朋の肩をポンッと触った。
すると、朋は力が抜けたように、その場に座ってしまう。
「なに? 力が入らない! なんで? 能力も出ない!」
(能力が出ない? もしかして、こいつは!)
「てっめぇ! 朋に何しやがった!」
「晃、待て! そいつから離れろ!」
しかし、俺の言葉は遅かった。
晃は大剣を掲げ、能力で加速し、少年に近づく。
「お兄さんは中森晃、能力は『アクセレラシオン』だったね♪ うん、速い速い♪」
少年は振り下ろされた大剣を難なく躱し、晃の胸辺りを触れた。
「な、力が……」
晃は大剣を手から離し、その場で倒れてしまった。
「『エクスプロジオン』と『アクセレラシオン』、そこまで脅威では無かったから“ゼロ”にするつもりはなかったけど、歯向かってきたから仕方ないよね〜♪ さてと、」
少年は残された俺と楽々浦先輩の方へ向きを変え、
「今日の僕の目的は、そっちの『トレットマン』のお姉ちゃんなんだけど、どうする? 真天一刀流のお兄さん?」
少年は、何事もなかったように尋ねてくる。
「なるほどな、やけに俺たちのことに詳しいなとは思ったが、このおっさんに情報を与えたのはお前だな?」
「うん、そうそう♪ ロボットやドローンもそうなんだけど、そのおじさんは、情報も兵器もうまく扱えなかったみたいでがっくり。それでさ、何も成果がないんじゃ、こっちも困るから、そこのお姉ちゃんの能力だけでも消しとこうかなって♪ いいよね?」
どうやらこの少年は、話が通じないタイプのようだ。
「楽々浦先輩、すみませんが少し下がっていて下さい」
「で、でも、二人が!」
「大丈夫です。俺が助けます。だから早く!」
「う、うん」
楽々浦先輩は二人を気にしながらも、後ろに下がってくれた。
「悪いけど、君に成果は与えられないな。能力消失事件並びに今回のテロ事件への加担、容疑者として拘束させてもらう!」
「あはは! お兄さん、僕と遊んでくれるの? でもFランクだと無理だと思うけど?」
「それは、やってみなきゃわからないだろう!」
俺は刀を抜き、少年に向かって瞬時に斬りつける。
少年は、それを躱し、一瞬で別の場所へ移動する。
「右! 左! 後ろ!」
俺は一瞬の気配を読み、少年の出る場所出る場所に刀を振り下ろす。
「あはは! すごいすごい! 流石は世界に5人しかいないという、真天一刀流の使い手だね♪ しかも、皆伝だから気配を読む力も一級品だぁ」
「そりゃどうも! はっ!」
次に現れそうな場所を予測し、刀を振り下ろす。場所自体は当たっていたが、惜しくも少年に後方へ移動され避けられてしまった。
「お兄さん、能力使わなくても十分強くて楽しいよ♪ でもさ、」
「刀が無かったらどうかな?」
少年に一瞬の隙をつかれ、刀の柄を触られてしまった。
と、同時に、持っていた刀が無くなる。
少年はニヤッと笑みを零す。
俺は、一瞬驚く。だが、すぐに笑みが零れる。
(この瞬間を待ってた!)
「一の型、虎月!」
「うわあぁぁ!!」
少年の肩口から腰の辺りまで一気に斬りつけ、血飛沫が上がる。
「やったか!?」
少年は、その場でドサッと倒れた。
しかし、すぐにむくりと起き上がった。
見ると、傷口は完全に塞がっていた。
「化け物だな」
俺は少年からサッと距離を取り、再び刀を構えた。
「今、確かに刀は消したはず。お兄さん、何したの?」
「あぁ、消される前に戻しただけだ」
「戻す……そうか、“戻す”か。あはは! あはははは! いやぁ、参ったよ! お兄さんの勝ちだよ♪」
「何を言ってる?」
「今日は僕の負けだってこと。もう今日はこれで帰るね?」
そう言うと、少年は振り返り、その場から離れようとした。
「待て、お前は何者だ?」
「そうだね、お兄さんならいいかな♪ 僕は黒キ原点の一人、“ゼロ”さ。さようなら、Fランクのお兄さん。また遊ぼうね♪」
「待て!」
しかし、少年は一瞬で姿を消し、それ以降、その場に姿を現さなかった。
その後、俺は晃と朋に能力を使い、二人の能力と、無くなっていた体力を元に戻した。
そして、生徒会棟へと戻った俺たちは、犬山さんに犯人の身柄を渡し、如月会長に能力消失事件の犯人と思われる、例の少年の話をした。
如月会長は、俺と少年の戦闘にかなり驚いていた。
俺たちの話を参考に、生徒会の総力を上げて少年の痕跡を探したが、結局、6月が終わるまで全く見つからず、また、少年との戦闘以来、能力が消失するという事件も起きなくなっていた。
ちなみに、例の繁華街の壁はいつのまにか元の壁に戻っていた。
原理は不明だが、これも例の少年が関わっていたのだろうとの結論になった。
そして、時間は進み、7月。
俺たち生徒会にも、本格的な夏がやってきた。
第3章 完
To Be Continued…
みなさんこんにちは。トウミです。
第3章、無事に終わりました♪
いつも応援ありがとうございます。
夜勤の本職やりながらの更新なので、どうしても更新数が限られますが、いつも読んで頂き嬉しいです♪
それからそれから、感想に評価、それからブクマと、徐々に増えてきてすごく嬉しいです♪
トウミのツイッターでも感想頂いてまして、いつも喜び、涙と鼻水を流しながら読んでます♪
うわっ、汚ねぇなこいつって思った方、待って!せめて、評価だけしていって!
というわけで、次回からは新章です。
まだまだ物語は続きますので、最後までお付き合い下さいませ♪
ではではこの辺で。またお会いしましょう!




