報告書No.68_佐藤良子様
昨日の疲れが完璧にはとれていないなか僕は部室で作業をしていた。
僕は池田先輩に言われたとおりに9時に部室に着いた。部室の扉を開けると池田先輩とリーダーがすでにいて楽しそうに話をしていた。2人は扉が開くと僕の方を見て声をかけてきた。
「昨日はお疲れ様。正人君の活躍は葵ちゃんから聞かせてもらったよ。初めてにしては完璧に近かったと思うよ。それで昨日の今日で申し訳ないんだけど2人で佐藤さんの報告書を作成してくれないかな」とリーダーは言った。
僕は今日呼ばれた理由を察すると同時に報告書の内容に疑問を抱いた。
「報告書というのはどのような内容を書くのですか」と訊いた。
リーダーは想定どうりの質問だったという表情で答えた。
「基本的には依頼者の名前や依頼内容に加えて献身循環団体が行ったこと、会話内容、依頼者の特徴、性格やこれまでの経験とかだね」
僕はリーダーの発言を聞いてかなりしっかりしたものだと印象を受けた。
「なるほど、どうしてそこまでしっかりと報告書を作成するのですか」と続けて訊いた。
「基本的には依頼者に対して同じ人が対応するのだけど、諸事情で対応できない時に他のメンバーが対応することになるのだけどその時に適切な対応ができるようにするためだよ。依頼者の情報はメンバー間で交換し合うことが重要だからね。だから正人君が知っていることは余すことなくみんなに共有することだよ」
僕は納得顔でうなずいた。
ガラス扉の中にしまわれているファイルは依頼者の報告書がまとめられているのだと気づいた。よく見ると数字と名前が書かれている。1から順番に並べられている。僕は部室全体を見渡すように数字を追った。きれいに数字が並べられているのに45だけ抜けていた。それ以外は1から67までそろっているのに。僕は疑問に思ったが口には出さなかった。
「正人君に説明したし、あとは2人に任せようかな。僕は別のやることがあるから帰るよ」とリーダーは言った。
「了解です。お疲れ様です」と僕は言った。
「ありがとう。葵ちゃんあとはよろしくね」
「わかった。また明日ね」と池田先輩は言った。
リーダーは手を振って扉から出ていった。
リーダーが帰ると池田先輩は「よし、正人君始めようか。書き方を教えるから隣に来てくれる?」と言った。
僕はすぐに返事をして移動した。
「パソコンでWordを開いて」
僕は先輩に言われたとおりにノートパソコンを起動しWordを開いた。
「開いたら、Wordに書いていくのだけれど絶対書かないといけないのは依頼者の名前、生年月日、性別、活動日、住所、依頼内容、活動内容だね。リーダーが言ってた相手の性格とか会話内容とかは書いてもいいし書かなくてもいいの。報告者に任意だね。会話内容を書く上で注意してほしいことが一つだけあるの依頼者のプライバシーに関わるようなことはあまり書かないようにすること。当たり障りのない事を書く程度にしてね。注意するべきことはそんなぐらいかな。正人君何か質問ある?」
「一つだけいいですか。見本とかはないのですか」
「見本はないね。もし困ったら他の報告書を参考にしてくれてもいいよ」
「なるほど、わかりました」
僕は席を立って無作為にファイルを選んで開いた。
No.27 竹内和人 男性
生年月日:1896年8月10日
活動日:2025年7月26日
住所:京都府京都市伏見区今町939
依頼内容:2歳の娘と一緒に留守番をしてほしい。
活動内容:青木拓馬と池田葵が依頼者宅で2歳の少女と午前9時から午後8時まで留守番をした。留守番の間少女とおもちゃで遊んだりぬりえをした。依頼者夫妻で2人の時間が欲しかった模様。2人がどこに行ったのかは知らない。特に問題なく依頼をこなすことができた。
開いたページを見ると池田先輩は懐かしそうな表情をした。
「こんなこともあったな。詩織ちゃん今も元気にしてるかな」と池田先輩は言った。
「意外といろいろな依頼が来るのですね」
「そうだね、人探しもするし、掃除もするし基本的には困っている人からの依頼なら何でもするよ。公序良俗に反していないことならね」
僕は過去のものを参考にしながら書き始めた。僕が報告書を作成するのが初めてということもあって今回は池田先輩も報告書を作成をするようだ。なので、今回だけは報告書が2枚出来上がることになった。僕はまだパソコンを使い始めて1か月ほどなので遅く不器用なキーボード音が響いているがタイピングに慣れている先輩は早くきれいな音が響いていた。
「よし、できたよ」と池田先輩は言ったので僕は先輩の方をみた。
「池田先輩もうできたのですか早いですね」
先輩は少し誇らしげに「うん」と言った。
「僕はもう少しかかりそうです」と僕は先輩に申し訳なさそうに言った。
「いいよ。待ってるから。ゆっくりしてね」
池田先輩は優しい笑顔と口調で言った。
僕はその後40分ほどかかって完成した。
「できました」と僕は言った。
池田先輩は「お疲れ様、これをあそこにあるコピー機でコピーしてファイルに挟んでガラス扉にしまえば終わりだよ」と言った。
僕は先輩にコピー機の使い方を教えてもらった。2人が作った実体のないデータの集合体でしかなかったものがコピー機を通して実体を持つものに生まれ変わった。ファイルをガラス扉に収納するとき少し感動した。数字が積み重ねられていっている、過去の様々な人を救うという依頼をこなしたから今があるのだと思った。僕はこれからもずっとこのファイルを収納する瞬間がすきだろうなと思った。
「昨日の疲れもあるだろうし、帰ろうか」と先輩は言った。
僕は「はい、ありがとうございました」と言った。
「どういたしまして、次の依頼が入ったらリーダーから連絡がいくと思うから」
「わかりました。では、失礼します」と言って僕は部室をでて寄り道をせず家に帰った。




