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理由は後付けで  作者: 浅井天
第五章:上村優君とゲーム大会

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18/21

MVP

 あれから1週間が経ち迎えたのは大会本番だ。

僕たちがエントリーした大会は京都アカシア大学が主催するeスポーツ大会だ。エントリーチーム数は32チームでなかなかな規模と言っていいだろう。その32チームでトーナメントが行われ最後まで勝ち残ったチームが優勝となる。僕たちが目指すのはもちろん優勝だ。周りを見渡してみると教室でよくゲームの話をしている人たちの姿がぽつぽつと見える。

「智司さん、今回の優勝候補はどのチームですか」

「そうだな、前回優勝のファイターズと前回準優勝の傲岸不遜とプロ選手が1人入っているスターライトかな」

「やっぱりチーム名は個性が出て面白いですね。とりあえず僕たちはそのチームに勝たないと優勝できないってことですね」

「そうだね」

「頑張りましょ」

「お!!!」

「ちなみに僕たちのチーム名は何ですか」

「優ファミリー」

優君がすぐに反応した。

「えーー何ですかそれ。絶妙に恥ずかしい」

「いいじゃないか。仲良さそうで」

「智司さんのセンスちょっと。池田先輩はどう思います」僕は池田先輩に訊いた。

「ーーーーーーうん?。ごめん何て」

池田先輩は心ここにあらずといった感じだ。相当緊張しているのだろうか」

「智司さんが僕たちのチーム名を優ファミリーにしてたんですけど。どう思いますか」

「それはちょっとセンスないよね」

池田先輩はいつものように明るく笑っている。

「先輩、緊張してます?」

「うん、ちょっとね。でも大丈夫、ちょっとぐらい緊張してる方がいいから」

「そうですか。あまり硬くなりすぎないようにリラックスしていきましょ」

「そうだね。ありがとう正人君」



 時間が経ち、トーナメントが少しずつ進み自分たちの番になった。相手チームは4人とも高校生でよく一緒にゲームをする仲良し4人組といった感じだ。

ルールはいつものゲームと変わらないが3本勝負で先に2回勝ったチームが勝ち上がりだ。準決勝以降は3回勝ったチームが勝ち上がりというルールだ。

1本目は何とかリードを奪ったまま終わることができた。しかし、やっぱり池田先輩の動きが硬い。カバーも遅れてるし指示への反応が鈍い。

「ごめん、私また足引っ張ってるかも」

「そんなことないですよ。みんなでカバーすればいいんですよ」優君が珍しく積極的に励ましている。

2本目は追い込まれてしまった相手の背水の陣といった感じで攻めてきて守り切れずに負けてしまった。

「本当にごめん。私のところから攻められてる」

「大丈夫です。切り替えて次勝ちましょ」

優君は本当に頼もしい。リーダーらしくなっている。

3本目はその優君が圧倒的な強さを発揮して15キル0デスという無双状態の活躍で勝利を導いてくれた。

「勝利チームは2対1で優ファミリーです」

アナウンスが会場に響きわたり僕たちの興奮のボルテージが上がりアドレナリンがとまらなかった。

「優、お前強すぎるぞ」興奮している智司さんが優君に抱き着きながら言葉をかけている。

「本当にナイスすぎる」

「本当にありがとう」

池田先輩は少し自分のプレーを引きずっているようだが喜んでいたので良かった。


 その後の二回戦と準々決勝は優君と智司さんが引っ張ってくれてストレートで勝ち切ることができた。時間も経って場にも慣れてきたからか池田先輩も周りを見ることができるようになって指示も聞けるようになっており練習の時の調子が少しずつ戻ってきている。

しかし、問題は次の対戦相手だ。相手は前回大会準優勝の傲岸不遜でここまで圧倒的な強さで勝ち上がってきている。ここからは3本先取になり長い時間集中力が必要になるので鬼門だ。

「練習どおりにやればきっと勝てるから。絶対勝つぞ」

「おお!!!」


 「何だよ、相手チームには女もいるのかよ。なめられたものだな」

「それな。場違いなことをわからせてやろうぜ」

「いいね。楽しそう」

「パパっと倒して決勝行こうぜ」


遠くにいる相手チームから聞こえてきた言葉は本当にひどいものでリスペクトも何もない本当にチーム名に相応しいメンバーだ。名は体を表すとは言ったものだ。

しかし、実力は本物で1本目も2本目もあっさりととられてしまった。

「ごめん

「いや、仕方がない。正面からやりあってもきついからうまい事潜伏しながら不意を突いていこ」智司さんが作戦を言った。

「了解」

3本目に向けて気持ちを高めている時にまたもや相手チームから声が聞こえてきた。

「相手やっぱり弱いな。女をカバーするのが必死で他のメンバーが上手く動けてないし努力が足りないよな。今まで無駄な時間を過ごしてきたな」

「みんなセンスねえよな。早くやめちまえよ」


 「私、あの発言は許せない。私だけでなくみんなを馬鹿にするなんて。絶対勝とう」

「おう!!!」

みんなのやる気が過去一に上がった。池田先輩がこうやってみんなに気合を入れるのは初めてだ。

3本目は池田先輩がこれまでとは比べ物にならない動きをして相手を翻弄して勝ちに導いた。

4本目ではその動きをうまく利用して優君と智司さんもうまく立ち回って圧勝した。

運命の2対2で迎えた第5戦。

相手も追い込まれた状況ということもあってお互いが全力の戦いであった。一歩も譲らない試合で延長戦を迎え、最終的には全くノーマークだった僕の不意打ちでチームは勝つことができた。

「よっしゃー!」

みんな大盛り上がりだ。会場も奇跡の逆転劇に興奮している様子で会場が熱でおおわれている。

その盛り上がりを妨げるように相手チームが「不正だろう、何かおかしい調べてくれ」と言って暴れたが警備員につまみ出され以降の大会には出禁処分になったようだ。

非常にすっきりとする結果を迎えられた。

「池田先輩、一気に変わりましたね」

「うん、緊張なんてどっか行っちゃった。どうしても勝ちたかったから」

盛り上がりすぎて少し汗をかいている彼女の笑顔はすごく爽やかで目が離せなかった。

「池田さんやるじゃん」

「ありがとう」

2人は笑顔でハイタッチを交わしていた。


決勝戦は準決勝で前回の優勝チームを下した、1人のプロ選手が参加するスターライトだ。

僕たちはさっきの勢いのまま試合をゲームをくみたてた。

1本目は勝つことができたが2本目はとられ拮抗した試合を続けている。

3本目はなぜか僕のスキルが上手く刺さって勝つことができた。

ここで勝てば優勝という4戦目、みんなの気合が入って智司さんの指示も冴えて優君も池田せんぱいの動きもよかったが最後の最後でリードを奪われて負けてしまった。

みな、この試合で決めるつもりでいただけに精神的な疲労は尋常ではなかったと思う。

口では次勝てばいいとポジティブなことを放っているが表情は重たかった。

僕はこのままいけば負けると直感した。

「あのー智司さん。最後の試合僕が指示を出してもいいですか」

みんな驚いた表情で大事な場面で何を言っているんだといった顔だった。

「どうして、急に」

「僕、智司さんの作戦は素晴らしいと思うのですが相手もプロなのである程度よんでると思うんです。この4試合見てて気づいたことがあるというか穴があるなと思いました。3戦目のスキルが刺さったのも偶然じゃなかった気がして。だから、僕に作戦をたてさせて欲しいです。途中でダメダメなら変わってもらってもいいので」

「でも今までの練習のセオリーを崩すのは危険じゃない?」池田先輩が言った。

「いや、わかった。正人に任せる」智司さんが言った。

「ありがとうございます」


 試合が始まり僕はみんなに指示をだした。

「池田先輩左のスペースをうまく使って詰めてください」

「優君は池田先輩に寄った敵を倒してそのまま前線維持してください」

「智司さんは右側から優君のカバーを」

「僕、スキル撃ちます」


 「試合終了です」

「結果はなんと優ファミリーの勝利です。初参加にして初優勝という快挙を成し遂げました。それでは今大会の優勝チームリーダーであり大会MVPの上村優さんにインタビューをしたいと思います。今のお気持ちはどうですか」

「えーー、最高にうれしいです」

「良かったですね。優勝できた要因はどこにあると思いますか」

「みんなの努力が一番大きいと思いますね。勝ちたいという気持ちが前面に出て練習も試合もする事ができたのだ良かったと思います」

「素晴らしい試合の数々をありがとうございました。上村優さんのインタビューはこれぐらいにしたいと思います。本日はお疲れさまでした」

「ありがとうございます」



「お疲れ様ー今日はいっぱい食べるぞー乾杯」智司さんが言った。

「乾杯!!!」

僕たちは焼肉屋さんに来て打ち上げをしている。

「正人、最後の作戦すごくよかったな。相手にめちゃくちゃ刺さって一瞬で決着ついてしまったじゃん」

「いや、たまたまですよ。運がよかっただけ」

「そんなことないよ。正人君はよく相手チームのことまで見てたもん」

あまり褒められることに慣れていないので褒められると反応に困ってしまう。


「それよりもこの焼肉の支払いは割り勘ですか?」

「いや、優勝賞金3万円もらえたしそこから払っとくよ」

「だめだよ。優勝賞金は全部優君にあげるんだから。焼肉の支払いは智司君の奢りだよ」

「えーー。それはひどくないか池田さん」

「いいでしょこれぐらい。リーダーにちょっと活動費もらったんでしょ」

「なんでそれを」

「リーダーがお金が必要になったら智司君に渡してるから貰ってって言ってたから」

「何だよ。それ」


「優君いっぱい食べなよ。MVPにもなったんだから」

「はい。でも、僕より智司さんの方がMVPだと思うのですが」

「何を言っているの素晴らしい活躍してたよ。何より優君の依頼がなかったらこのチームはできてないからね。君がMVPだよ」

「そうですかね。ありがとうございます。僕の依頼を解決していただいて」

「いいのよ。これが私たちのやりたいことだから」

「これからは学校の友達とも仲良くなって一緒にゲームしたいです」

「よし、応援してる。いっぱい食べよ」

僕たちはその後お腹いっぱいになるまで焼肉を食べた。


No_77 上村優君編完


3年後。

「アジア大会優勝を決めました。サーキュレーションの上村優選手です」

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