No.77
自習室で勉強をしている智司君に対面する形で私は「智司君の力が必要なの、だからサークルに復帰してくれないかな」と言った。
「ごめん。それはできない」
「どうして」
「俺はあの瞬間決めたんだ。もう、サークル活動には参加しないって」
「あの瞬間って?」
「池田さんもわかってる癖に訊いてくるなんて意地悪だね。森さんが自殺をしたと聞いた瞬間もうサークルから手を引こうと決めたんだよ」
「確かにあれは辛かった。でも、他に困っている人がいるなら私たちは手を差し伸べ続けるべきじゃないの?あんな過去に取らわれて自分の人生まで変えて何がしたいの?」
思わず少し強く心無い言葉を発してしまったと後悔したのはすべて出し切ってからだった。
「俺らは騙されて知らないうちに終活手伝わされて、俺なんかその人からお金とゲーム機もらったんだぞ。覚えてるか?最低だろ俺。これからも同じように本心のわからない依頼者に騙されるかもしれない、そんな人間を助けられるほど俺はお人よしでもないんだ。もともと、ちょっと面白そうだから始めただけで人助けの意思なんてほとんどなかった。だから俺は罰が当たったんだよ、それに懲りて反省してゲームをやめて真剣に学業に取り組むようにしたんだよ。俺は自分で歩む道を変えただけ、以上バイバイ」
私は立ち去っていく智司君の背中を見つめることしかできなかった。
正人君にメッセージを送る「ごめん。説得に失敗した」
僕はまたまた池田先輩とバディーを組んで依頼を受けていた。今回の依頼は中学二年生の上村優君からでゲームの大会で優勝したいとのことだった。しかし、困ったことにそのゲームは4人で一つのチームを組んで戦うもので優君と僕、池田先輩の三人では参加することができない。そこでゲームのうまい知り合いがいないかと話になり池田先輩が心当たりがあるらしいのでその連絡を待っていた。
しかし、先輩から説得に失敗したという連絡を聞いて自分も人を探そうと頑張ってはみたのはいいのだが学期末ということもあってことごとく断られ僕のメンタルは砕け散っていた。そんなこんなで停滞をしているとリーダーからとりあえず二人で依頼者のところ行ってみてと連絡がきたので僕と池田先輩は依頼者の家に向かった。
いつものようにインターホンを押し中に入れてもらいリビングにいくとそこには依頼者のお兄さんだろうか僕と歳の近い人が座っていた。
男性は僕たちをみると「遅かったじゃないか。待ちくたびれたよ」
その男性を見ると池田先輩は「え、どうして智司君がここにいるの」と言った。
「どうしてって。リーダーにお願いされたからきたんだよ。さすがにあの人にあそこまで頼まれては断れないからな」
「そうなんだ」
「あのー、この方とはどういった関係ですか」僕は池田先輩に訊いた。
「あ、この人が私が誘おうとしてた人で献身循環団体のメンバーの椎名智司君だよ」
「なるほど。よろしくお願いします」
「うん。もうメンバーではないけどよろしく。君が高部正人君か。リーダーに少し話を聞いてるよ」
「そうです。リーダーはなんと」
「それはひみつ」
優君との自己紹介も終わりメンバーが全員そろったところでゲームの内容を軽く紹介すると4対4のゲームでステージ内をインクを塗りながら敵を倒したり決められた勝利条件を相手より先にクリアするかリードしたまま時間切れになることによって勝利するというゲームだ。このゲームはかなり有名でプレイ人口もすごく多く子供から大人まで人気なゲームになっている。僕と優君そして智司さんは経験者だが池田先輩は完全な初心者だ。初心者を含んだチームが優勝をすることは非常に厳しいと考えられるがとりあえず、やってみるしかない。
練習で1試合やってみたが結果は惨敗で優君は毎日しているだけあって上手く智司さんもブランクを感じさせないほど上手かった。しかし、僕は経験者とはいえ弱すぎて足を引っ張ってしまた。池田先輩は初心者なので仕方がない。
「ごめん。私が結構あし引っ張ってるかも」
「そんなことないですよ。僕の方が」
「いや、正人君は上手だよ」
「いや。2人とも下手だ。もっと練習しよ。なあ優君」
「そうですね」
それから毎日練習で対面でもネットでも一緒に練習を続けた。4人での練習が終わると3人で智司さんの家にいって夜通し練習することもあった。智司さんは厳しいが教えるのは上手くできるようになるまで練習に付き合ってくれ上手くできるとほめてくれた。飴と鞭が上手な人だ。
「正人、スキルのタイミングが遅い」
「すみません」
「池田さん、カバーが少し遅い」
「ごめん」
毎日のようにスパルタ指導を受けた成果だろう。3週間が経った頃には全員が最高ランクに到達し戦えるレベルに成長していた。特に池田先輩の成長が著しく最初の頃とは天地の差がある。
「正人君、カバー欲しい」
「はい」
「ありがとう」
「智司さんの方に敵いきました」
「了解」
「三人とも上手くなりすぎではないですか。智司さんはもともとお上手でしたけどさらに、磨きがかかったというか」優君が訊いた。
「みんなの努力だな。特にこの二人は本当に頑張ってた」
「ありがとうございます。努力だけじゃなくて智司さんが練習に熱心に付き合ってくださったおかげですよ」
「そうだよ。智司君がMVPだね」
「そんなわけあるか。MVPは大会本番までとっておけ」
智司さんは嬉しそうだ。
「大会まで残り1週間頑張るぞ」
「はい!!!」




