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理由は後付けで  作者: 浅井天
第四章:森和人という男

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15/21

No.45

 2025年12月17日、私たちのサークルに1つの依頼が入った。

『引っ越しをしたいので片づけを手伝ってほしい』とのことだったので私(池田葵)と椎名智司が依頼解決に向かった。

その日はすごく寒く凍えるように依頼者のところに向かったことを今でも覚えている。


 智司君が依頼者宅のインターホンを押すとすぐに30代ぐらいの男性が出てきた。

「初めまして、献身循環団体の椎名智司と池田葵です。今回依頼していただいた森和人さんでお間違いないでしょうか」

「はい」

「では、さっそくお部屋に上がらせていただいてもいいでしょうか」

「どうぞ、あがってください」

「失礼します」


アパートで2DKの部屋で築年数がかなり経っているいるように思える。

1人で過ごすには十分すぎる部屋である。

「この部屋ボロボロでしょ」

「いえいえ、そんなことないですよ。広くていいお部屋じゃないですか」

「本当?うれしいな。引っ越すけど」森さんは笑い交じりに言った。

「そうでしたね」

「片づけを手伝ってほしいということで依頼したんだけど、大事な書類とかはもう別のカバンに入れたから残りの物は必要ないから燃えるゴミと燃えないゴミとプラスチックと上手く分別してゴミ袋に入れていってほしいです」

私はこの部屋にある荷物を見ながら答えた。

「本当にここに残っている物すべてを捨てるのですか?」

「そうです。せっかく環境が変わるので心機一転したいので大体の物は捨てようかと思いまして」

「なるほど。では、片づけを始めましょうか」

私たちは3人で片づけを始めた。

しばらく片づけを進めていると卒業アルバムが出てきた。

「あのー、森さん」

「はい。どうかしましたか」

「卒業アルバムが出てきたのですが本当に捨ててもいいのですか」

「いいよ。必要ないし」森さんは過去に愛着などないかのように言った。

「そうですか。わかりました」


 それからも時計やゲーム機など一般人からすれば高価でなかなか捨てるという選択肢をすることのないものまで捨てると言われた。私はすごくもったいなく思って何度も捨てるのか確認した。そのせいか、森さんは少し機嫌が悪くなって「すべて捨てると言っただろう。だから何も言わずに捨ててくれ、もしどうしても欲しいものがあるならあげるから」と言い放った。

私は驚いて少し顔が引きつってしまったが気持ちを入れ直して「いえ、いただくことはできません。依頼を解決するために来ているのですから」と言った。

しかし、智司君はというと森さんの発言を聞いて嬉しそうに「本当にいただいてもいいのですか」と訊いている。

「ああ、もちろん」

「では、ありがたくいただきます」と言ってゲーム機を持って帰ろうとしていた。

私は持って帰るのをやめるように言ったが智司君は結局持って帰った。


 片づけが終わってみるとパンパンのゴミ袋が大量にできて山のようになっていた。

明日は燃えるごみの回収の日らしいので私たちは燃えるごみをゴミステーションに出した。

片づけが終わると森さんは満足したのか出会った頃のような優し気な表情と言葉を放っていた。

「本日は本当にありがとうございました。本当に助かりました。これ、些細なものですがお納めください」

森さんは現金の入っているように見える封筒を2つ私と智司君に渡してきた。

「森さん、お気持ちはありがたいのですが現金は受け取ることができないんです。私たちは善意で困っている人を助けることが目的ですので。ですから、このお金は新生活に向けて自分のためにお使いください」

「いやいや、受け取ってくださいよ。ただ働きは申し訳ないですから」

「でしたら、僕だけそのお金を頂きます」と智司君が言った。

「本当ですか。どうぞ、お受け取りください」

「ありがとうございます。大事に使わさせていただきます」

私は智司君の行動に少し引いてしまったができるだけ顔には出さないようにした。


 私と智司君は森さんに別れを告げて帰路についた。

「智司君、現金とゲーム機を貰うなんてどうかと思うよ」私は彼に本音を言った。

「でも、森さんがくれるって言ったんだからいいじゃないか。断られ続けるのも辛いじゃないか」

「確かにそうかもしれないけど。献身循環団体は見返りを求めない方針で活動するって花音が決めたじゃん」

「まあ、そうだけど。このお金は募金しとくよ。自分のために使わないって約束する」

「なら、まだいいけど。ゲーム機は?」

「これは僕のためだ」

私はあきれ顔をして彼をみていた。

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