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理由は後付けで  作者: 浅井天
第三章:3人の女性

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12/21

松本愛華(後)

 「愛華ちゃんは現状、大学に友達がいないの?」池田先輩が訊いた。

「はい、授業で少し話す人はいるのですがそれが本当に友達なのかわからなくて」

「そんなのこれからたくさん話していけば友達になるのかよっ友になるのか別れてくるよ」新垣先輩が言った。

「そうですかね。よっ友は絶対気まずいですよね」

「そうだね。正直、めっちゃきまずい」新垣先輩が言った。

「愛華は友達が欲しいんだよね」

「はい、欲しいです。一緒に出掛けたりしたいです」

「別に友達いなくても生きてけますよ」僕は自分の意見を言った。

実際、僕には友人などほとんどいないで大学生活を送り生きているのだから。


 しかし、3人の意見は違うようだ。

「いや、それはない。友達がいたほうが断然いいに決まってる正人はおかしい」新垣先輩が言った。

「確かに私も友達はいたほうがいいと思うな。1人寂しいし」池田先輩が言った。

「ですよね。高部さんおかしいです」松本さんにも否定された。

僕は何も言い返せなかった。

ここから僕は話に置いてけぼりにされてしまった。


「やっぱり友達を作るためには授業同じ人と学食に行ったり連絡交換して学校以外の時間でも話をするようになることが重要だと思うな」新垣先輩が自分の経験を振り返るように言った。

「確かに。それだよね。私も三重から1人暮らしを始めたから最初はなかなか友達ができなかったけどこのサークルに入ったりしている内に自然と友達ができていったなー」

池田先輩が三重県出身なことは初耳だった。

「そうですよね。やっぱり自分から行動しないとだめですよね」

「焦らずにできることからやっていこ。もう私たちが友達なんだから」

陽キャは友達になる速度がすごくはやいなと感心した。

「本当ですか。うれしいです、さくらさん」

「さくらでいいよ愛華」

「わかりました」


報告書No_74松本愛華



 1人で学食を食べていると松本さんが隣に座ってきた。

「この前はありがとう」

「僕は何もしてませんよ」

「高部君ってめんどくさいね」

「え?どこらへんが?」僕は口に食べ物を運んでいる箸をおいた。

「謙虚すぎるというか。せっかく褒めてるのだから素直に受け取ればいいのに」

「なるほど。改善します」

松本さんはクスっと笑った。

「真面目だね。そんな高部君にお願いがあるんだけど」

「何ですか」

「私の部屋が汚かったこととだらしないことひろめたら、私、高部君が私の下着触ってたこと言いふらすから」

「ちょっとそれは散らかってた部屋を片付けてたら出てきたもの拾っただけじゃん」僕は慌てて補足した。

「いやいや、完全に変質者の表情してた」

「えー、お願いします。絶対に言わないでください」

「それは高部君次第かな」

「わかりました。松本さんがだらしない人だってこと絶対に言いません」

「ちょっと言ってるし声大きい」

松本さんは少し慌てた。

「あ、すいません」

僕は思わず笑ってしまった。



 課題をしようと思って部室に入ると池田先輩がいた。

扉が開くと先輩は僕に気づいて「この前はありがとうね」と言った。

ついさっき学食で似たような言葉を聞いた気がする。

「どういたしまして。池田先輩と新垣先輩の方が働いてましたけどね」

「ありがとう。正人君は部室に何しに来たの?」

「課題でもしようかと思いまして」

「いいね。隣座る?」

「はい」

先輩にあたりそうな体温を感じる距離感で僕は平静を保ちながら課題に取り組んだ。

しかし、なかなか捗らなくいまいち集中できない。


 「あの、池田先輩1ついいですか?」

「うん、何?」先輩の大きな眼が僕の眼を覗き込んできた。

「先輩はどうして1人暮らしを始めたのですか?」

「それは単純に実家から通うには遠かったのが大きな理由だけどもう一つ理由を挙げるとしたら地元が嫌だったからかな」

「地元が嫌なのですか?」

「うん。田舎で何もないし、ちょっと何かあると近所の人にすぐ広まるし、噂とかも広まって新しい人が引っ越してくるとその人の過去とか調べたりしてさ。近所のつながりが強いことはいいことだと思うのだけど狭い世界で生きてるのがしんどくて地元を出たかったんだよね」

「そんな理由があったのですね。先輩は色々なことを知って社会に出ていくべきだと思います。これからよろしくお願いします」

「ありがとう正人君。期待してるよ」


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