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勇者の息子は地球出身  作者: 潮柳
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第110話 ボム

ようやくボムの正体が判明します。

 食事を終え、オルカが食器を洗ってくれている間に風呂と寝る準備をする。オルカにかかれば食器洗いも5分かからず終わってしまったのでロボたちと遊んでくれていた。

 お父さんかな?

 服のおかげで寒さは感じないけれど、それでも温かい湯に浸かるほっとする。アースも砂を落としてスッキリしたようだ。

 寝る準備を整えて、いつものようにボムが瓶に入った時、オルカから待ったがかかった。

「待て」

「どうかした?」

「どうかしたかはこちらの台詞だ。何故精霊を瓶に詰める」

 ……精霊を瓶に詰める? 瓶に入ったボムを見ると「ぷ?」と不思議そうに小さく上下していた。

 視線をオルカに戻す。

「ボムって精霊なの?」

「光の上位精霊だ」

 まーじで? しかも上位精霊って。

「ボム精霊だったの?」

「ぷー!」

 布団から顔を出したロボに訊かれて元気に返しているのはたぶん肯定だな? 言ってよ! 言われても言葉わからなかったけれども。

「平原にたくさんいたよ?」

 冒険者だけでなく街に住んでいる人たちもボムは魔物だと思っていたみたいだけど。

「それは卵だ。光精霊の卵は光が注ぐ場所なら発生自体は易い。なんであるかを真剣に調べなければただの無害な魔物だと思われても仕方なかろう」

 精霊って卵生なのか。身近にありすぎてボムが精霊だなんて考える人がいなかったんだろうな。

「平原に発生するような卵が孵化することは滅多に無いはずなのだが。余程質の良い魔素でも吸収したか」

 質の良い魔素、というのは。

「俺の血を飲ませたせいかな」

「何をしているのだ、小僧」

 すみません。そんな悪いことだと思わなくて。

「汝はリアムの血を異常な程に強く引いている。軽率な行動は控えよ」

「はぁい」

 気をつけているつもりではいるんだけどなあ。瓶から出て漂い始めたボムを手招いたナイトが困ったように手の平に乗ったボムをつつく。

「精霊となると契約は難しいですね」

「ぷー?」

「そうなの?」

「精霊は契約術式が違いますからね。術式を最初から考え直さなければいけないのですが私はその手のことが苦手でして。オルカはできますか?」

 精霊と魔物じゃそんなに違いがあるのか?

「できないことはないが少し時間はかかる。それでも良いか?」

「ぷ! ぷっぷ!」

 ボムが元気に鳴きながらオルカのほうに飛んでいった。それでいいらしい。

「では術式を組んでおこう」

 やった。ようやくボムともちゃんと契約ができる。名前考えておかないと……もうボムで上書きしてもいい気がするけれど、たくさん助けてもらっているしせっかくだからいい名前を考えたい。

 ソルかルクス……ステラでもいいな。ん? 待てよ。

「みんなに名前を付けないといけないのかな?」

「みんな?」

 最近はリーダー1体のことが多かったけれど、全部で13体いるんだよな。13個もラテン語の抽斗無いよ。いろんな言語で星や光を見繕うか?

 首を傾げたオルカにボムがポポンと弾けて数を増やす。

「ああ、いや。これは同じ個体だな。名は一つでいい」

 この子たちみんな同じ個体なのか。リーダー以外は意思表示が薄いなと思っていたけど、大本が一つだからだったのか。最初からそうだったのかな? それともリーダーが成長して卵状態だった他の子を吸収したのか?

 とりあえず名前が一つでいいなら一安心だ。

「そういえば、ボムは契約してないけど影に出入りしているよね?」

「影の使用許可を出していますから契約内の影でしたら出入りが可能です。ただ、ロボたちのように好きな影に出入りして移動するということはできません」

 あくまで俺やロボたちの影の間でしか移動できないってことかな? ロボたちのようにザーパトの影に出て移動っていうのは無理なのか。

 話している間にロボとアースがウトウトと舟を漕ぎ始め、ネコが完全に寝てしまったのでとにかく今日は休もう。ボムは結局瓶に入っていった。

 翌朝、起きたときに違和感。

「……ん? ん?」

「どうたの?」

 脚を揉んでいるとロボが不思議そうに首を傾げて訊いてきた。

「うーん……脚が痛い、気がする」

「え、大丈夫?」

「うん。たぶんこれは怪我とかの痛みじゃないから大丈夫だと思うよ」

 なんというか、膝とか足首とか関節系が痛い。そんな話をしているとナイトが天幕をめくって現れ、脚を揉んでいる俺を見て腕を組んだ。

「……18にもなって髭が生える気配もないと思っていましたが、まだ縦に伸びることに注力しているのですか?」

「好きで縦に伸びてるわけではないよ!」

 髭どころかすね毛すら生えないの気にしているんだから言わないでくれ! 成長のために力が全部身長に持って行かれている感がある。

 そんな話をしながら朝食を食べて拠点を引き払う。

「満足した?」

「うん! 楽しかったからまたここで遊んでもいい? 危なくなったらちゃんと逃げるから」

「いいよ。影でここまで来れるかい?」

「大丈夫!」

 それなら全然構わないよ。



 魔物と戦うのと同じくらいお散歩も好きなロボがルンルンでレニアに向かって走る。そろそろ昼休憩にしようかという時、影の中にいたオルカから念話が来た。

『グリフォンが近づいて来ているぞ』

 グリフォン? 視線を上げると遠くの空で金色の光が瞬いていた。

「サウスだ」

「お兄ちゃんを運んでくれたひと?」

「そうだよ」

 ロボが立ち止まり、数分と待たずにサウスが目の前に降りてくる。

「サウス」

「姿が見えたからな。ハーピーの件、素早い対応感謝する」

「こちらこそ、運んでいただいたおかげですぐに問題に対応に移ることできました。ありがとうございます」

 正直素早く対応できたのはサウスが運んでくれたからだと思う。今後は至急の依頼はオルカに無理を言うかも知れない。

「はじめまして! ぼくロボ!」

 我慢できなかったロボが名乗るとサウスが表情を和ませた。

「はじめまして。ナイトから話は聞いている。私はサウスだ」

「ギー!」

「にゃーん!」

「ぷ!」

 続々と飛び出しておそらく順番に名乗っているのだろう。ロボがネコを鼻でつついた。

「ネコはにゃんじゃなくてネコっていうんだよ」

 ネコだけ聞こえたままに名乗っていたらしい。ボムは一体なんだと名乗っているのだろうか……。

「うむ。皆元気でよろし──」

 元気な子たちにニコニコとしていたサウスがナイトに続いて出てきたオルカに硬直した。

「オルカだ」

「何をしているのですか!?」

 オルカってサウスが敬語になるくらいの魔物なのか。

「ぉあん!」

「ご飯!?」

「ご飯ではない。いろいろ事情があってユウと契約した」

 ネコはまだオルカを食べようとしているのか。オルカがきっちりと否定しているので誤解は解けただろう。

「彼は大丈夫なのですか?」

「大人しくしている限りは女帝がなんとかするだろう。そういう約束になっている」

 彼ってたぶんオルカのヤバい同族だよね? サウスも知っているのか。

「貴方がそう決めたのなら私から言うことはありませんが……」

「問題ない。ナイトのおかげで影を使った空間移動も可能となった。何かあればすぐにアレの所にも移動できる」

 オルカはナイトと顔見知りっぽいとは思っていたけれど、サウスとも知り合いだったのか。

「お兄ちゃん」

 ぼーっとオルカとサウスが話しているのを見ているとロボが背中を鼻先でつついてくる。視線がサウスに釘付けだ。はいはい。

「サウス、すみません。少しお願いがあるのですか」

「うん?」

「この子たちが背中に乗せてほしいと言っているのです。乗せてあげてもらえませんか?」

「お願いします!」

 ロボを撫でながらお願いしてみると、サウスがロボを上から下まで見て翼を擦り合わせた。

「そういうことなら乗せてやりたいのだが……ロボは無理だな……」

 大きなロボはサウスと変わらない大きさだった。毛のボリュームで考えるとロボのほうが大きく見えるかも。

「ぼく小さくなれるよ!」

「そうなのか?」

 背中に乗せてもらえないかもと慌てて縮むロボは可愛い。縮んだロボにサウスが頷いた。

「その大きさなら大丈夫だ。せっかくだ、街まで送ろう」

「いいのですか?」

「ああ。乗りなさい」

 やったー! グリフォンライド再び。屈んでくれたサウスの背中にロボを乗せているとナイトが手を挙げた。

「ユウ、ウェストにもオルカのことを紹介しておこうと思いますので、しばらく離れます。ギルドに着いたら呼んでくださいますか」

「わかった」

 影に消えていった二人を見送ってサウスの背中に登る。俺の前にロボが座り、ロボの脚の間にアースが入ってネコは万が一が無いように俺が抱えておく。ボムはアースの前に落ち着いたようだ。

「では行くぞ。落ちないように気をつけてくれ」

「うん!」

 ロボの元気な返事にサウスが飛び上がった。

 わーっと子供たちが歓声を上げる。きゃあきゃあと喜ぶ声をBGMにぐんぐん空を進む。

「そうだ、サウス。ハーピーの件ですが」

「うむ」

「大方のものは倒しましたが、危険が無いと思われるハーピーをドリアードに預けています。何かあれば対処に動くつもりですが、絶対に大丈夫とはまだ判断できません。独断で行動してしまって申し訳ありません」

 報告するとサウスがチラッと振り返った。

「何かあった場合はどうするのだ?」

「その場合は鏖殺です」

 だからこそ次がないようにドリアードとポセイドンには頑張ってほしい。

「その覚悟ができているのなら私は君の判断を尊重しよう。きっと間違いでは無いはずだ」

 みんな優しくて申し訳なくなる。

「ありがとうございます」

 あの子たちは大丈夫だという勘がどうか当たってほしい。

 数時間の空中散歩を楽しんで、レニアの街に向かってサウスが降下を始める。明日の閉門に間に合うかどうかという距離だったのが日暮れ前に着いちゃうのだからすごい。

 列の近くにサウスが降り、俺たちもサウスの背中から降りる。

「ありがとうございました! 楽しかった!」

「ああ。賑やかな旅路で私も楽しかったよ」

 口々にお礼を言っているロボたちとそれに応えているサウスを見ていると門から騎士が近づいてきた。

「おーい。ユウ」

「グルドさん」

 グルドさんだったか。呼びかけに応えてこちらからも近づく。

「相変わらずお前は騎士の度肝を抜いてくれるよな。グリフォンで帰還とは」

「ロボたちが背中に乗せてもらいたがっていたからな。ついでだと送ってくれたのだ」

「まあ二度目だからそこまで驚きはしないけど、最初の時はどうなることかと思ったぜ。サウス様が温厚な性格で助かった」

 大変な騒ぎにはなっていたのだろうな。

「ユウ、それでは私は巣に戻る。また森に遊びにおいで」

「はい。あ、少し待ってください」

 ロボたちとの話が終わったサウスが近づいてきたので、鞄からスレイプニルの肉を取り出す。

「スレイプニルの肉です。お礼も兼ねて、たくさんあるので群れのみんなと分けてください」

「おお。いいのか?」

「はい。本当に量が多いので、私たちだけでは食べきれませんから」

 一塊が20㎏くらいありそうな塊肉が100個以上あるんですよ。油脂に包んである塊を鞄から出していると山地から数体グリフォンが飛んできた。サウスが呼んだのだろう。

「では有難く貰っていこう」

 体の大きいグリフォンたちで肉を分担して持ち、サウスたちが山に戻っていった。

 その後ろ姿を見送ったグルドさんに呆れた顔をされる。

「スレイプニルの肉って、いくらすると思ってるんだよ」

「わからないが、高すぎて量が売れないから大量に残っているんだ。ギルドに卸そうとすると怒られるし、騎士団にも卸せないだろう?」

 テンカレでもアヌカでも殆ど買い取ってもらえなかった。

「まあ断るわな。あんまり良い肉食っちまうと行軍中の野戦食とか食えなくなる」

 コンバット・レーションは不味いって地球でも聞いたことがあるな。携帯食とは違うのかな?

「あ、そうだ。ヘリオットさんはいるか?」

「団長? いるぜ。どうした?」

「新しい魔物と契約したんだが、ギルドで登録したあと紹介に来たほうがいいか確認してくれないか」

「また増えたのかよ。わかった。訊いてくるからとりあえず列に並んでおいてくれ」

「ああ。頼む」

 ナイトはなし崩し的に周知の存在になったけれど、オルカはできれば先に紹介しておいたほうがいいだろう。

 俺がグルドさんと列から離れて話している間にロボたちが並んでくれていたのでそこに入らせてもらう。すごく順番抜かしをした気になるのだけれど、後ろに並んでいた商人の女性が「この子たち良い子に並んでたのよ」と快く入れてくれた。すみません、ありがとうございます。

 門の内側に入れたのでグルドさんを待っているとヘリオットさんも一緒に現れた。

「ギルドで説明を聞いたほうが早いと思ってな。一緒に行こう」

「わかった」

 それもそうですね。


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