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隠れ里に着き、わっと出迎えてくれた皆さんに。
心配した、無事で良かった、と、涙交じりに抱きしめられた後。
落ち着いた頃合いに、話があるのですが、と切り出したとたん。
何故だか嬉しそうに目を輝かせ始めた人々に。
言い出し辛い気持ちになりつつも、引っ越そうと思うんです、と伝えれば。
皆んなそろっての「えええええ!?」という大絶叫の後に、てっきり祝言を挙げる気になったのかと思ったのに、と口々に言われ。
それはない、と。
彼と二人、そろって首を横に振った。
里のヒトたちから、もはや夫婦のようなものとして扱われていたのには気づいていたけれど。
恋人関係にすら至っていない事を告げれば、此方の方が驚く程、驚愕されてしまった。
「じゃあオマエラ、どういうカンケイなんだよ」
魔王からのツッコミに、彼と二人、顔を見合わせて。
はて、と同時に首をかしげ。
その拍子にころりと頭の上から魔王が落ちたのを、反射的に掌で受け止め。
ぎゃーぎゃーと文句を言いながら親指にしがみつく魔王の頬を、人差し指でふにりと押した。
・・・・
帰宅した瞬間、ぱたりと力の抜けた体を床に投げ出し。
その勢いでまたも頭から転がり落ちた魔王がピーピー喚きながら地団駄踏んでいる様子を、ぼんやりと眺めていれば。
真似るように隣で寝転んだ彼が、ごく自然な動きで私の手を取り、ぽすりと自分の顔の上に乗せた。
鼻と口を覆う位置に置かれた手に、すんすんと小刻みに鼻息が当たる。
嗅がれているなぁ、と、ぼんやり思いながら天井を眺めた。
こうやって、吸血欲を紛らわせているらしい。
時々くすぐったさを感じるくらいで、特に害はないと。
何の警戒心もなく、うとうとと目を閉じようとしていた。
……のだが。
不意に、カプリと。
小指の付け根辺りに噛みつかれ、小さく息を飲んだ。
痛くはないが、ちょっとびっくりした。
彼の方を向けば、ぱちりと目が合う。
そのまま、かみかみと甘噛みを続けながら、じっと。
反応を伺うように見つめてくる彼を、此方も見つめ返していたところ。
ぺろり、と。
今度は掌を舐められて。
「……っ、なっ⁉︎」
反射的に手を引っ込め、目を丸くした私を。
油断しすぎだ、と鼻で笑い。
何処か楽しげに目を細めた彼に。
そわりと落ち着かないものを感じ。
じわりと赤くなった頬に、するりと伸びてきた彼の手を。
ぺしーんと、魔王が叩き落とした。
「いっちゃいっちゃしてんじゃねーぞ! みせつけてんのかくそが!」
ぺちぺちと手の甲を叩く魔王を、ひょいと摘み上げ。
舌打ちしつつ外へ向かう彼の背中を。
投げるのかな、と、ぼんやり予想をつけながら見送れば。
ひゅん、と風を切る音と、遠のいていく魔王の怒声に。
あ、やっぱり。と。
思いながら、ふうっと体の力を抜いた。




