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 その後。

 どうやらいつの間にか気を失っていたらしく、目を覚ましたのは森の中。

 目を開けたとたん、ごく間近に聖騎士様の顔が見え。

 ぱちりと合った視線に、慌てたのは、私よりも向こうの方。

 密着していたため、聖騎士さまの動揺がはっきりと感じ取れてしまった。


「起きたか」


「のんきにねてんじゃねぇよ、ばぁか」


 がちりと硬直している聖騎士様の肩から、にょきりと男が顔を生やし。

 さらに男の頭の上から、ひょこりと魔王が顔を出した。

 性根が悪いモノどうし気が合うみたいですね、と。

 仲良さげな様子を笑えば、魔王はむっと顔を顰め、男の頭から聖騎士様の頭に飛び移った。


「べつに。アイツラよりは、まだマシってだけだ」


 おや、振られてしまったか、と笑う男をいらっとした目で睨みつけた後、魔王はびしりと後方を指差し。

 指の先を目で追えば、談笑する青年たちの姿。

 どうも、小さいだとか可愛いだとか、さんざん弄り倒されたようだ。

 此方に気づいて駆け寄ってきてくれた青年たちを警戒し、威嚇している。

 子猫みたいだなぁ、とは、思ったが言わないでおいてあげた。


 ・・・・


 そろり、と聖騎士様の膝から降りれば。

 一瞬、どうかしたのかと問うように集まった視線に。

 気にしないでくださいと、小さく手を振って。

 少し離れた場所で、木に寄りかかるようにして佇む彼の元へと歩み寄った。


 近づいても、目は合わない。

 そのくせ、意識だけはずっと此方へと向いていて。

 何処か拒絶するような緊張感を漂わせている反面、強い執着のようなものも感じ。

 なんとも複雑な状態のようだ、と、ぼんやり苦笑した。


 吸血鬼は、一度吸った血に惹かれるようになる、らしい。

 たいがいは一度噛み付いたらそのまま吸い殺してしまうものらしいが。

 吸い殺される前に運良く逃げられても、血に強く惹かれた状態となった吸血鬼は一心不乱に何処までも追いかけてくるそうだ。

 彼は今、まさにその状態で。

 その上で、我慢してくれている。


 死なない程度なら、吸ってくれても構わないのだけれど。

 思いはするが、それは、彼の望むところではないのだろう。

 ならば、此方からは何も言うまいと、何も知らないフリをして。

 何も気づいていない顔で、手の届く距離まで近づいた。


 青年から預かっていた導石を外し、彼の首にかける。

 俯いた顔は見えなかったが、じっと息を止めているのが気配で分かった。

 あまり忍耐力を試すような真似をするのも悪いかと、すぐに離れようとすれば。

 ぱしり、と、引き止めるように手を取られ。

 きょとりと目を瞬かせれば、彼の方も、似たような顔をしていて。

 思わず、反射的に、動いてしまったのだろうなと察し。

 堪えきれず、緩んだ口元を片手で覆った。


 ジロリと睨まれ、へにょりと眉を下げる。

 ぺいっと放るように手を離し、そのまま何処かへ姿を消してしまった彼だが。

 そう遠くへは行っていないんだろうな、と。

 何処、とは分からないまでも、薄っすら方向くらいは感じとれる気配に。

 何となく微笑ましい気分になり、小さく笑った。

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