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それから、特筆すべきこともなく日々は過ぎ。
今までどおり、ふらりと現れては、自由に過ごして去っていく彼に。
こちらも今までどおり、それを気にしすぎないよう自然に振る舞っていれば。
いつの間にか、胸の奥に若干あった緊張も、解けてしまい。
まあ、別に、何が変化することもないんだな、と。
意識し過ぎていたらしい自分を恥じて。
そうしてほのぼのと、平穏な日々を過ごしていれば。
どこからともなくふらりと現れ、縁側で煙草をふかす男と。
その横に立って、何処か荒んだ目を男へと向けている聖騎士様に。
これはまた、意外な組み合わせだな、と目を瞬いた。
服装だけを見れば、「司祭」と聖騎士で纏まりが良いと言えるのだが。
出世したんですね、と、溜息とともに吐き出せば。
おかげさまでね、と薄く笑って。
あの騒ぎで上手く教会がゴタついてくれたから、その隙につけ入るのは簡単だった、と。
聞いてもいない事を、男は得意げに教えてくれた。
綺麗にダメ押しも決まったしな、と。
男が意味深な目配せを聖騎士様に向ければ。
それを受けた聖騎士様は、深く深く、溜息をついて。
知りたくもない現実を知ってしまった、もう何も信じられない、と。
恨みがましい目を男に向けた。
ひょいっと肩をすくめ、男は飄々と笑う。
機嫌良さそうな男と、全ての不幸を背負い込んだような顔で項垂れる聖騎士様の対比が面白い。
それにしても、どうやって隠れ里まで来れたのか。
不可視の結界は強力で、導石を持っているか、持っている人に接触している状態でなければ、見つけられないはずなのだが。
首を傾げれば、ああ、と聖騎士様が頷いて。
幻覚の類いは効かない体質なんだ、と、教えてくれた。
成程、だからあの時も、と納得する。
幻術使い泣かせですね、と男に流し目を送れば。
だからこそ、良いコンビになりそうだろう? と、聖騎士様の肩を抱き寄せて。
なぁ? と片目を瞑る男を、心底嫌そうに押しのけた聖騎士様が。
「以前、貴女は、人の心も生き方も綺麗に分類できるものではないと、そう言ったが……。この男は、間違いなく悪だ」
そう、真面目な顔で宣言するので。
思わず男と顔を見合わせて。
まあ、確かにその通りだな、と。
二人して笑いながら頷いて、聖騎士様を拗ねさせてしまった。
・・・・
とりあえずは、もう教会が私を探すことはないだろうとの言葉をいただき。
それなら安心ですね、と返せば。
望むなら、前よりもっと大々的に聖女として祭りあげることもできるが、と。
悪人らしい笑みと共に付け加えてきた男に、無言でデコピンをくらわせた。
「気が向いたらいつでも言ってくれ」
そう言って、片手をあげ。
ゆったりと歩き去っていく男を、数歩離れて追っていた聖騎士様が。
ふと足を止め、振り向いて。
何かを言い掛け、躊躇い、結局何も言わず、一礼だけして去っていった。




