06:性根
「…?」
薄ら目を開け、自分の部屋だと気付いた。
体を起こそうとすると、激痛が走った。
体中に治療のあと。
「…俺の、部屋」
「おやぁ、お目覚めかな」
優しい声で本を閉じながらロベリオさんが言った。
「!ロベリオさん」
「どうやら、傷以外は回復したようだね」
「俺、なんで」
「依頼後に傷だらけになった君を抱えてキャンサーが帰ってきたから」
「え」
「お姫様抱っこでね♡」
ピシ、と俺の男としてのプライドにひびが入った気がした。
「…お姫様、抱っこ」
「ショックだよねぇ…女の子に抱えられて帰ってきたんだm…」
「も、もうそれ以上抉らないでください…」
「はは、大丈夫僕以外見てないし」
「…でも嫌ですよ」
「そうだねぇ…」
お年頃だもんねぇ、と勝手に納得しているロベリオさん。
「なんですかそれ…」
「悩み多き青年だなって」
「…」
「そんな冷たい顔しないで~」
「…そんな顔してません」
「してるよ~」
ドアが開いて、キャンサーが入ってきた。
「…あ、起きてる」
「うん、さっき目が覚めたみたい」
「…」
じっと俺を見つめるキャンサー。目は開いてないけど。
「…なん、だよ」
「…無事そうでよかった」
「え」
「…僕の、せいでケガさせたでしょ…だから、ごめん」
「…」
なんとなく何も言えなかった。
あまりに素直に謝ってくるものだから口が開かない。
「じゃあ、僕はおいとまするねぇ~」
ロベリオさんが出ていくと、キャンサーが近くの椅子に座った。
「…おま、素直に謝れんだな」
「なにそれ、バカにしてる?」
「いやいやそうじゃなくて!」
「じゃあなにさ」
「てっきり、見捨てられるかと」
「…僕のことかばってくれたじゃん」
「…ん?」
「だから、あんな傷の受け方して僕が後味悪いに決まってるじゃん!」
「…お、う」
心臓が少し先走っている気がする。耳がすこし熱い。
本人は理不尽にも俺を責めるがあまり耳に入ってこなかった。
「…ちょっと、聞いてる!?」
「え!?あ、おう」
「…絶対嘘」
「嘘じゃないって」
「はぁ…もう、寝なよ」
「え、なん」
「傷も治らないし、熱もありそうだし」
顔赤いよ、と指摘されて気付いた。
心臓は相変わらず先走りすぎだし耳はじわじわと熱くなっていく。
「ほら、寝ときなよ」
「…おう」
「はぁ~…」
バタン、と扉を出ていくキャンサー。
顔を触って温度を確認したとき、俺の上にかかってるローブに気付いた。
キャンサーの、黒いローブ。
「…!」
手に取ったとき、かすかなジャスミンの残り香が香った。
「…キャンサー」
名を呼ぶだけで少し顔が赤くなった気がした。
そこまで熱があるならいう通り、寝なければ…
ベッドにもぐり、少し早い心臓を心地よく目を閉じた。




