07:違和
「…は?」
「だから、街に行かないか?」
驚いたのか間をおいて聞き直してきた。
後ろでロベリオさんとアンナがくすくす笑っている気がする。
「…あのさぁ…はぁ…」
「…なんだよ?」
「デートならもう少し誘い方あるでしょ」
「でっ…」
「?なに、違うの」
「ちが、そうじゃなくて!こないだの、感謝をだなっ」
「…ふーん。仕方ないから行ってあげる」
「…仕方ないって」
「ほら、行こうよ」
「…はいはい」
☆
「…にぎやか」
「そうだな、祭りか?」
繁盛する街に少し固まるキャンサー。
「…僕、あんまり街って歩いたことない」
「え」
「…なに」
「いや、なんでも知ってそうだったから」
「僕だって知らないことあるよ」
眉間にしわを寄せて苦い顔をする。
「…じゃあお前の好きなのえらべよ」
「え」
「お礼に、なんかさせてくれよ」
「…じゃあ」
近くの服屋に入っていく。
うろついていろいろ見ているが、特に興味なさそうにする。
「…?興味ないならほかのでも」
「…僕あんまり買い物とか得意じゃないから君が決めてよ」
「え」
「新しいやつ。君に一着あげちゃったしどれかえらんでよ」
「なんで俺…」
「お礼の一環だと思って」
「…じゃあ」
革らしいケープを渡す。
それを受け取ってしばらく見る。
「じゃあ、これ」
「おう…?」
買って渡すとすぐに身につけた。
男物で少しアンバランスなような気もしたが、似合っている。
まとうように前でボタンを留める。
「それでよかったのか?」
「うん、僕買い物とかよくわからないし」
「わからないって」
「ほとんど家にこもらされてたから、あんまり知らない」
「…」
「へん?」
「いや」
そのときちょうど音楽が聞こえてきた。
「…なにこれ」
「あぁ、カーニバルだな。見てみるか?」
「え」
「ほら、外の世界知ろうぜ」
「…うん」
少し輝く微笑みに心臓がまた早く打った。
「…ドラゴン」
「すごいな、彫刻」
「うん」
「…あのさ」
「…?」
「家にこもらされてたって」
「その話するなら、部屋に帰ろう」
さえぎった口調はどこかキツかった。
「…今は、祭りを楽しもうぜ」
「…」
黙ってうなずく。
話したくなかったわけではなさそうだが、少し顔をゆがめた。
「…きれい」
つぶやく声を祭りの音楽でかき消されてか、俺は聞こえないふりをした。
速まる鼓動と、ゆがめていたあの顔の記憶が混ざって、少し曇った気持ちでいた。




