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詩集Ⅱ  作者: 蓮井 遼
12/30

詩「憔悴」


夜の砂漠のキャンプ地で

壮年の男がお別れした

焚火を囲んでは

流しのファドが余韻に甘やかす

風の弱い夜だった

彼はこの場を離れる少し前に

じわりと体がぬるんだ気がした


明くる朝

一行は男を砂漠に捨てた

日の照り付ける朝だった

夜の砂漠の穏やかさにしても

彼を繋ぎ止めることはできなかった


男の思いにそぐわないで

男の体は彼自身を殺しつつあった

これが彼の運命だというのか


そもそも彼がここに来たのは

体がわるくなる一方を知ってからだった

楽隊に混じり彼の旅は

見知らぬものに魅了されていた


こうなるまで彼は

自ら先陣を切り救済の事業に精を出した

彼の仲間たちとの協力で

通貨の少ない人達が

より多く選択できる機会を得られた


その功績を成した彼が

呆気なくも狂わされようとしている

青い砂漠で

彼の望みはもう一日生きることにやっと成った


つまりは彼の切り出した世界だった

校舎の木陰で嘗ての女が休んでいる姿が思い浮かんだ

橋の上で切り出した言葉と

妻の気に入らない仕草が思い浮かんだ

これらは彼が旅を続ける間に思い浮かんだことだった


ある日

彼は自ら作った印を見つけた

幻の人達だった

人々はお返しに陶器から雲を取り出した

これが私達の生命力でしたと

男は彼らや彼女らの顔を見た

一度も会ったことのない人だった

彼は嘗て与えたものが

貸し借りだったということに気づかなかった

この人達を見たのは

彼がもう一日生きたいと思い始めてからであり

彼は自分の願望と発明していた自分自身で

擦り合わなくなっていた

彼は雲を見た代わりに

人々の陶器にポルトガルのお菓子を入れた

人々はとても驚き歓び

そして姿を消した


彼が見知らぬ人に手を貸したのは

それを望んでいたからであり

彼は置かれている事態に納得した

もう嘗ての人には声を聞かせられないかもしれない

そう思って自分の陶器を取り出して

もしもの時に言葉を詰めた


彼は道半ばで力尽きたが

この穏やかでない末路を迎えた男が

砂漠に捨てられるというのは

思ってもみない

体の死に場所だった




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