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スターライト・ユニバース本社。
会議室。
朝九時。
そこでは。
社長レイによる緊急経営戦略会議が開催されていた。
議題。
『ピュア・クラウンの未来について』
田村は資料を開いた。
宣伝部もいる。
営業部もいる。
マネージャーもいる。
全員真面目な顔だった。
ただ一人。
レイだけが異常だった。
「のだぁあああああああああああ!!」
会議室に絶叫が響く。
「スポンサー様を守るのだぁああああああ!!」
ばんっ。
机を叩く。
「違約金が怖いのだぁああああああ!!」
ばんっ。
さらに叩く。
「芸能界を信じるななのだぁああああ!!」
ばんっ。
三回目。
田村が止めた。
「机が壊れます」
「そんなことより経営なのだぁ!」
「社長室の机も同じことを言っていました」
レイはホワイトボードを指差した。
そこには。
大きく。
『瑠璃防衛計画』
と書かれていた。
田村は頭を抱えた。
「また始まりました」
「始まったのだぁ!」
レイは真剣だった。
本気だった。
「瑠璃を守るのだぁ!」
会議室。
沈黙。
レイは続ける。
「お主ら分かってるのだぁ!?」
「何をですか」
田村が聞く。
「瑠璃なのだぁ!!」
「はい」
「まだ何もやらかしてないのだぁ!!」
「そうですね」
「奇跡なのだぁ!!」
社員たちも少し頷いた。
確かに。
芸能界。
若いタレント。
SNS全盛期。
それなのに。
白鳥瑠璃。
炎上ゼロ。
熱愛ゼロ。
暴言ゼロ。
遅刻ゼロ。
問題ゼロ。
学校の成績も良好。
先生の評判も良好。
近所の評判まで良好。
もはや奇跡だった。
レイは涙目になった。
「こんな子が存在するのだぁ……」
「社長」
「なんなのだぁ」
「泣かないでください」
「感動なのだぁ」
ホワイトボードに書く。
『瑠璃=スポンサーの宝』
大きく丸で囲む。
「瑠璃はもうスポンサーに嫌がられる情報を出さないのだぁ!」
ばんっ。
「CM最重視なのだぁ!」
ばんっ。
「雑誌も出るのだぁ!」
ばんっ。
「高級ブランドも狙うのだぁ!」
ばんっ。
田村。
静かに言う。
「内容自体はまともです」
「当然なのだぁ!」
レイはさらに熱くなった。
「瑠璃はもうお人形さん路線なのだぁ!」
会議室。
少し静まる。
「お人形さん?」
宣伝部長が聞く。
「そうなのだぁ!」
レイ。
力説する。
「喋りすぎない!」
「はい」
「余計なSNSしない!」
「はい」
「恋愛相談も受けない!」
「はい」
「深夜配信もしない!」
「はい」
「ただ美しく微笑むのだぁ!!」
「それは少し極端では」
「極端じゃないのだぁ!」
レイは本気だった。
芸能界で心が壊れ始めていた。
そして。
ホワイトボードの左を見る。
そこには。
『エミリア』
と書かれていた。
レイ。
沈黙。
数秒。
「のだぁ……」
「社長?」
「エミリアはもう諦めるのだぁ」
会議室。
爆笑しそうになる。
「諦めるんですか」
「諦めるのだぁ」
「早いですね」
「絶対何か起こすのだぁ」
レイは遠い目をした。
「絶対デキ婚するのだぁ」
「根拠は?」
「勘なのだぁ」
「最悪ですね」
「社長の勘はだいたい当たるのだぁ」
社員たち。
微妙な顔。
確かに当たる時もある。
外れる時もある。
ピロローン三十万枚みたいな事故もある。
「エミリアは才能があるのだぁ」
「ありますね」
「顔も良いのだぁ」
「良いですね」
「でも危険なのだぁ」
「それは否定しません」
続いて。
ホワイトボード。
『ひまり』
レイ。
さらに遠い目。
「ひまりはダブル不倫するのだぁ」
「しません」
田村が即答。
「するのだぁ」
「しません」
「するのだぁ」
「根拠は?」
「距離感なのだぁ!!」
会議室。
納得。
少し納得。
かなり納得。
ひまりは良い子だった。
優しい。
可愛い。
歌が上手い。
だが。
距離感だけが怖い。
「既婚者って素敵ですよねぇ」
とか。
平気で言う。
悪気ゼロ。
だから怖い。
レイは震えた。
「吾輩、未来が見えるのだぁ……」
「見えません」
「見えるのだぁ……」
そして。
ホワイトボードの中央。
大きく。
『違約金対策』
と書く。
「これなのだぁ!」
全員。
少し真面目になる。
そこは重要だった。
芸能界。
CM。
スポンサー。
そして。
違約金。
怖い。
非常に怖い。
レイは本気で言った。
「CMは慎重なのだぁ」
「その通りです」
「スポンサー様に迷惑かけたら駄目なのだぁ」
「はい」
「だから瑠璃なのだぁ!!」
結局そこだった。
レイは力説する。
「瑠璃は信頼なのだぁ!」
「確かに」
「瑠璃は平和なのだぁ!」
「今のところ」
「瑠璃は安全なのだぁ!」
「比較的」
「瑠璃はスポンサーの夢なのだぁ!」
「少し大げさです」
その時。
ドアが開いた。
瑠璃本人だった。
「失礼します」
会議室。
静まる。
レイ。
感動。
「瑠璃ぃぃぃぃ!!」
「はい?」
「今日も可愛いのだぁ!」
「ありがとうございます」
「今日も問題起こしてないのだぁ!」
「はい?」
「偉いのだぁ!」
瑠璃。
本気で困惑。
「普通では?」
「普通じゃないのだぁ!」
レイは叫んだ。
「芸能界では奇跡なのだぁ!」
瑠璃。
さらに困惑。
そこへ。
ひまり。
「おはようございますぅ」
エミリア。
「眠い」
二人も入ってくる。
レイ。
即座に指差す。
「お主ら!」
「何?」
「何ですかぁ?」
「瑠璃を見習うのだぁ!」
ひまり。
きょとん。
「えへへぇ?」
エミリア。
呆れる。
「また始まった」
「始まったのだぁ!」
レイは立ち上がる。
「瑠璃はスポンサーの希望なのだぁ!」
「大げさ」
エミリアが言う。
「大げさじゃないのだぁ!」
「私だって問題起こしてないけど」
「まだなのだぁ!」
「失礼ね」
「未来が怖いのだぁ!」
ひまりが手を挙げる。
「ひまりもですかぁ?」
「怖いのだぁ!」
「えぇ〜」
「距離感なのだぁ!」
「またですかぁ」
「またなのだぁ!」
瑠璃は静かに言った。
「社長」
「なんなのだぁ」
「私は別に特別なことはしていません」
「してるのだぁ!」
「普通に生活しているだけです」
「それが凄いのだぁ!!」
レイは本気だった。
芸能界に染まりすぎていた。
普通に学校へ行く。
普通に勉強する。
普通に仕事する。
普通に帰宅する。
それだけで感動していた。
田村は小さく呟く。
「芸能界に長くいるとこうなるんですね」
「なるのだぁ……」
レイは疲れた顔で頷いた。
「信じられるのはグッズ売上と曲売上と瑠璃だけなのだぁ……」
「私、商品みたいになってませんか?」
瑠璃が少しだけ困った顔で言う。
「違うのだぁ!」
レイは慌てる。
「瑠璃は人間なのだぁ!」
「ありがとうございます」
「ただスポンサーの希望でもあるのだぁ!」
「そこは外してください」
会議室。
少し笑いが起きる。
そんな中。
田村が資料をめくる。
「ちなみに社長」
「なんなのだぁ」
「瑠璃さんのCM契約候補がまた三件増えました」
レイ。
立ち上がる。
「のだっ♡」
「化粧品」
「のだっ♡」
「飲料メーカー」
「のだっ♡」
「学習教材」
「のだっ♡」
レイ。
完全復活。
「見たか世界なのだぁ!!」
ばんっ。
「これが瑠璃なのだぁ!!」
ばんっ。
「清楚は強いのだぁ!!」
ばんっ。
「スポンサー様万歳なのだぁ!!」
ばんっ。
田村が呟く。
「結局そこなんですね」
「経営者なのだぁ♡」
その頃。
エミリアは隣でスマホを見ていた。
「ドラマ主演候補」
ひまりは。
「ピロローン400年って本当に作るんですかぁ?」
と聞いていた。
レイは即答した。
「作るのだぁ♡」
田村は頭を抱えた。
瑠璃だけが。
静かにお茶を飲んでいた。
そしてレイは。
そんな瑠璃を見て。
また感動していた。
「のだぁ……」
「どうしました?」
「今日も平和なのだぁ……」
その日。
スターライト本社では。
若き社長による。
過剰な瑠璃保護計画が。
さらに強化されることになったのであった。




