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芸能事務所の若社長ですが、所属タレントが不祥事を起こしすぎて胃が限界です  作者: 雪だるま


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6

 スターライト・ユニバース本社。


 会議室。


 壁には巨大なモニターが設置されていた。


 そこに映し出されているのは。


 ピュア・クラウン。


 三人の宣材写真だった。


 白鳥瑠璃。


 小鳥遊ひまり。


 エミリア・神崎。


 そして。


 芸能関係者たちは全員同じ感想を抱いていた。


「顔が強いな……」


「顔が強いですね……」


「顔が強すぎる……」


「なんでこんなのが同じグループに三人いるんだ……」


 近年でもトップクラスだった。


 特に瑠璃。


 写真を見ただけで化粧品会社が食いつく。


 CM担当者が食いつく。


 ファッション誌が食いつく。


 カメラマンが食いつく。


 なぜなら。


 立っているだけで絵になる。


 微笑むだけで広告になる。


 もはや人間というより高級美術品だった。


 しかし。


 歌は壊滅していた。


「神様って不公平ですね」


 カメラマンが言った。


「顔に全部振ったんでしょうね」


 編集者が答えた。


 そんな瑠璃。


 最近の仕事。


 CM。


 雑誌。


 雑誌。


 CM。


 広告。


 モデル。


 雑誌。


 CM。


 歌仕事。


 ゼロ。


「完璧なのだぁ♡」


 社長レイは満足していた。


「歌わせなければ完璧なのだぁ♡」


 田村が言った。


「アイドルですよね」


「そうなのだぁ♡」


「歌わせないんですか」


「事故防止なのだぁ♡」


「最低ですね」


「社長の知恵なのだぁ♡」


 一方。


 小鳥遊ひまり。


 この少女も忙しかった。


 原因。


 レイである。


 ある日。


 作曲家が言った。


「社長、ひまりさんのソロ曲どうします?」


 レイは言った。


「不思議ちゃんなのだぁ」


「はい」


「不思議ちゃん曲なのだぁ」


「はい」


「ピロローンなのだぁ」


「はい?」


「タイトルは『ピロローン300年』なのだぁ!」


 全員。


 固まった。


「社長」


「なんなのだぁ?」


「意味は?」


「ないのだぁ♡」


 作曲家は頭を抱えた。


 だが。


 なぜか。


 完成した。


 歌詞。


 意味不明。


 世界観。


 意味不明。


 内容。


 意味不明。


 サビ。


『ピロローン♪ピロローン♪三百年後もピロローン♪』


 意味不明だった。


 本当に意味不明だった。


 しかし。


 ひまりが歌うと。


 妙に可愛かった。


 妙に中毒性があった。


 妙に頭から離れなかった。


 結果。


 三十万枚。


 売れた。


 業界騒然。


「なんで?」


「意味が分からない」


「なんで売れたんだ?」


「作った本人も分からない」


 レイ本人ですら分からなかった。


「のだぁ?」


 売上表を見る。


「三十万?」


 目をこする。


「三十万?」


 もう一回見る。


「三十万なのだぁ?」


 田村が頷く。


「三十万です」


「なんでなのだぁ?」


「知りません」


「吾輩も知らないのだぁ」


 ひまり本人も知らなかった。


「えへへぇ」


 テレビ出演。


「どうして売れたと思いますか?」


「わかりません〜」


 本当に分かっていなかった。


「ピロローンだからですかねぇ?」


 誰も説明できなかった。


 ただ売れた。


 恐ろしい。


 一方。


 エミリア。


 この女。


 仕事量がおかしかった。


「エミリア」


「何?」


「仕事なのだぁ」


「また?」


「仕事なのだぁ」


「また?」


「仕事なのだぁ」


「また?」


 本当に仕事だった。


 ドラマ。


 映画。


 CM。


 インタビュー。


 雑誌。


 テレビ。


 イベント。


 ドラマ。


 映画。


 ドラマ。


 ドラマ。


 ドラマ。


「社長」


 田村が言った。


「働かせすぎです」


「でも卒業さえできればいいのだぁ」


「最低です」


「卒業できれば問題ないのだぁ♡」


「労基が泣きます」


 エミリア本人は。


 意外と平気だった。


「別に」


 台本を読む。


「仕事好きだし」


「のだぁ♡」


「稼げるし」


「のだぁ♡」


「学校は寝ればいいし」


「駄目なのだぁ!!」


 田村が即座に突っ込んだ。


「学校で寝ないでください」


「じゃあ授業聞いてる」


「本当ですか?」


「たぶん」


「怪しいですね」


 そんなある日。


 問題が発生した。


 雑誌インタビュー。


 ピュア・クラウン特集。


 記者が聞いた。


「皆さん高校生活はいかがですか?」


 三人。


 答える。


 瑠璃。


「勉学との両立を頑張っています」


 完璧。


 ひまり。


「お友達とパンを食べたりしてますぅ」


 平和。


 そして。


 エミリア。


「最近学校行ってない」


 全員。


 凍った。


「のだぁあああああああああ!!」


 レイが叫んだ。


 編集部。


 大混乱。


 田村。


 頭痛。


 エミリア。


 きょとん。


「本当だし」


「本当でも言うななのだぁ!!」


 結果。


 記事は修正された。


『仕事との両立に奮闘中』


 大人の力だった。


 そして。


 さらに問題。


 ある日の会議。


「ピュア・クラウン高校生組のスケジュールです」


 田村が資料を出す。


 レイが見る。


「ふむふむなのだぁ」


 めくる。


「ふむふむなのだぁ」


 さらにめくる。


「ふむふむなのだぁ」


 突然。


 固まる。


「のだ?」


 資料を見る。


 もう一回見る。


「のだ?」


 田村。


 嫌な予感。


「どうしました」


「高校生?」


「はい」


「誰が?」


 沈黙。


 会議室。


 完全停止。


「社長」


 田村が言った。


「全員です」


「のだ?」


「全員高校生です」


「のだ?」


「今さら何を言ってるんですか」


 レイ。


 固まる。


 十秒。


 二十秒。


 三十秒。


「高校生だったのだぁ?」


 全員。


 頭を抱えた。


「今気づいたんですか」


「のだぁ?」


「社長」


「なんなのだぁ」


「スカウトした時の資料に書いてありました」


「読んでなかったのだぁ♡」


「知ってました」


「テヘペロなのだっ♡」


 田村は眼鏡を外した。


 本気で疲れた顔だった。


「社長」


「なんなのだぁ」


「瑠璃は十七歳です」


「のだっ」


「ひまりも十六歳です」


「のだっ」


「エミリアも十七歳です」


「のだっ」


「全員未成年です」


「のだっ」


「だからスケジュール調整してたんです」


「ありがとうなのだぁ♡」


「社長がやる仕事です」


「テヘペロなのだっ♡」


 その時。


 会議室のドアが開いた。


 三人が入ってきた。


「おはようございます」


 瑠璃。


「おはようございますぅ」


 ひまり。


「眠い」


 エミリア。


 レイ。


 三人を見る。


 じっと見る。


 さらに見る。


「高校生なのだぁ?」


「そうですけど」


 エミリアが答えた。


「知らなかったのだぁ」


「何その社長」


「テヘペロなのだっ♡」


 エミリアは呆れた。


「終わってる」


 ひまりは笑った。


「えへへぇ」


 瑠璃は真面目だった。


「社長はお忙しいですから」


「瑠璃ぃぃぃぃ!!」


 レイは泣いた。


「優しいのだぁああああ!!」


 瑠璃は本当に優しかった。


 だからこそ。


 田村は思った。


(この事務所が回っているのは、瑠璃さんと私のおかげでは……?)


 しかし。


 現実は止まらない。


 エミリアにはドラマオファー。


 ひまりには『ピロローン300年』第二弾の話。


 瑠璃には高級ブランドCM。


 そして。


 ピュア・クラウン。


 まだ。


 デビュー曲は完成していなかった。


「のだぁ?」


 レイが資料を見る。


「そういえばなのだぁ」


 田村。


 嫌な予感。


「なんですか」


「グループ曲ないのだぁ」


 沈黙。


 全員。


 固まった。


「社長」


「なんなのだぁ」


「そこからです」


「のだぁあああああああああ!!」


 スターライト本社に。


 今日も社長の悲鳴が響いた。


「顔は売れてるのだぁ!!曲がないのだぁあああああ!!」


 こうして。


 近年でも屈指の顔面を誇る新人グループ。


 ピュア・クラウンは。


 なぜかグループ曲より先に。


 個人仕事だけで有名になっていくのだった。

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