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スターライト・ユニバース本社。
会議室。
壁には巨大なモニターが設置されていた。
そこに映し出されているのは。
ピュア・クラウン。
三人の宣材写真だった。
白鳥瑠璃。
小鳥遊ひまり。
エミリア・神崎。
そして。
芸能関係者たちは全員同じ感想を抱いていた。
「顔が強いな……」
「顔が強いですね……」
「顔が強すぎる……」
「なんでこんなのが同じグループに三人いるんだ……」
近年でもトップクラスだった。
特に瑠璃。
写真を見ただけで化粧品会社が食いつく。
CM担当者が食いつく。
ファッション誌が食いつく。
カメラマンが食いつく。
なぜなら。
立っているだけで絵になる。
微笑むだけで広告になる。
もはや人間というより高級美術品だった。
しかし。
歌は壊滅していた。
「神様って不公平ですね」
カメラマンが言った。
「顔に全部振ったんでしょうね」
編集者が答えた。
そんな瑠璃。
最近の仕事。
CM。
雑誌。
雑誌。
CM。
広告。
モデル。
雑誌。
CM。
歌仕事。
ゼロ。
「完璧なのだぁ♡」
社長レイは満足していた。
「歌わせなければ完璧なのだぁ♡」
田村が言った。
「アイドルですよね」
「そうなのだぁ♡」
「歌わせないんですか」
「事故防止なのだぁ♡」
「最低ですね」
「社長の知恵なのだぁ♡」
一方。
小鳥遊ひまり。
この少女も忙しかった。
原因。
レイである。
ある日。
作曲家が言った。
「社長、ひまりさんのソロ曲どうします?」
レイは言った。
「不思議ちゃんなのだぁ」
「はい」
「不思議ちゃん曲なのだぁ」
「はい」
「ピロローンなのだぁ」
「はい?」
「タイトルは『ピロローン300年』なのだぁ!」
全員。
固まった。
「社長」
「なんなのだぁ?」
「意味は?」
「ないのだぁ♡」
作曲家は頭を抱えた。
だが。
なぜか。
完成した。
歌詞。
意味不明。
世界観。
意味不明。
内容。
意味不明。
サビ。
『ピロローン♪ピロローン♪三百年後もピロローン♪』
意味不明だった。
本当に意味不明だった。
しかし。
ひまりが歌うと。
妙に可愛かった。
妙に中毒性があった。
妙に頭から離れなかった。
結果。
三十万枚。
売れた。
業界騒然。
「なんで?」
「意味が分からない」
「なんで売れたんだ?」
「作った本人も分からない」
レイ本人ですら分からなかった。
「のだぁ?」
売上表を見る。
「三十万?」
目をこする。
「三十万?」
もう一回見る。
「三十万なのだぁ?」
田村が頷く。
「三十万です」
「なんでなのだぁ?」
「知りません」
「吾輩も知らないのだぁ」
ひまり本人も知らなかった。
「えへへぇ」
テレビ出演。
「どうして売れたと思いますか?」
「わかりません〜」
本当に分かっていなかった。
「ピロローンだからですかねぇ?」
誰も説明できなかった。
ただ売れた。
恐ろしい。
一方。
エミリア。
この女。
仕事量がおかしかった。
「エミリア」
「何?」
「仕事なのだぁ」
「また?」
「仕事なのだぁ」
「また?」
「仕事なのだぁ」
「また?」
本当に仕事だった。
ドラマ。
映画。
CM。
インタビュー。
雑誌。
テレビ。
イベント。
ドラマ。
映画。
ドラマ。
ドラマ。
ドラマ。
「社長」
田村が言った。
「働かせすぎです」
「でも卒業さえできればいいのだぁ」
「最低です」
「卒業できれば問題ないのだぁ♡」
「労基が泣きます」
エミリア本人は。
意外と平気だった。
「別に」
台本を読む。
「仕事好きだし」
「のだぁ♡」
「稼げるし」
「のだぁ♡」
「学校は寝ればいいし」
「駄目なのだぁ!!」
田村が即座に突っ込んだ。
「学校で寝ないでください」
「じゃあ授業聞いてる」
「本当ですか?」
「たぶん」
「怪しいですね」
そんなある日。
問題が発生した。
雑誌インタビュー。
ピュア・クラウン特集。
記者が聞いた。
「皆さん高校生活はいかがですか?」
三人。
答える。
瑠璃。
「勉学との両立を頑張っています」
完璧。
ひまり。
「お友達とパンを食べたりしてますぅ」
平和。
そして。
エミリア。
「最近学校行ってない」
全員。
凍った。
「のだぁあああああああああ!!」
レイが叫んだ。
編集部。
大混乱。
田村。
頭痛。
エミリア。
きょとん。
「本当だし」
「本当でも言うななのだぁ!!」
結果。
記事は修正された。
『仕事との両立に奮闘中』
大人の力だった。
そして。
さらに問題。
ある日の会議。
「ピュア・クラウン高校生組のスケジュールです」
田村が資料を出す。
レイが見る。
「ふむふむなのだぁ」
めくる。
「ふむふむなのだぁ」
さらにめくる。
「ふむふむなのだぁ」
突然。
固まる。
「のだ?」
資料を見る。
もう一回見る。
「のだ?」
田村。
嫌な予感。
「どうしました」
「高校生?」
「はい」
「誰が?」
沈黙。
会議室。
完全停止。
「社長」
田村が言った。
「全員です」
「のだ?」
「全員高校生です」
「のだ?」
「今さら何を言ってるんですか」
レイ。
固まる。
十秒。
二十秒。
三十秒。
「高校生だったのだぁ?」
全員。
頭を抱えた。
「今気づいたんですか」
「のだぁ?」
「社長」
「なんなのだぁ」
「スカウトした時の資料に書いてありました」
「読んでなかったのだぁ♡」
「知ってました」
「テヘペロなのだっ♡」
田村は眼鏡を外した。
本気で疲れた顔だった。
「社長」
「なんなのだぁ」
「瑠璃は十七歳です」
「のだっ」
「ひまりも十六歳です」
「のだっ」
「エミリアも十七歳です」
「のだっ」
「全員未成年です」
「のだっ」
「だからスケジュール調整してたんです」
「ありがとうなのだぁ♡」
「社長がやる仕事です」
「テヘペロなのだっ♡」
その時。
会議室のドアが開いた。
三人が入ってきた。
「おはようございます」
瑠璃。
「おはようございますぅ」
ひまり。
「眠い」
エミリア。
レイ。
三人を見る。
じっと見る。
さらに見る。
「高校生なのだぁ?」
「そうですけど」
エミリアが答えた。
「知らなかったのだぁ」
「何その社長」
「テヘペロなのだっ♡」
エミリアは呆れた。
「終わってる」
ひまりは笑った。
「えへへぇ」
瑠璃は真面目だった。
「社長はお忙しいですから」
「瑠璃ぃぃぃぃ!!」
レイは泣いた。
「優しいのだぁああああ!!」
瑠璃は本当に優しかった。
だからこそ。
田村は思った。
(この事務所が回っているのは、瑠璃さんと私のおかげでは……?)
しかし。
現実は止まらない。
エミリアにはドラマオファー。
ひまりには『ピロローン300年』第二弾の話。
瑠璃には高級ブランドCM。
そして。
ピュア・クラウン。
まだ。
デビュー曲は完成していなかった。
「のだぁ?」
レイが資料を見る。
「そういえばなのだぁ」
田村。
嫌な予感。
「なんですか」
「グループ曲ないのだぁ」
沈黙。
全員。
固まった。
「社長」
「なんなのだぁ」
「そこからです」
「のだぁあああああああああ!!」
スターライト本社に。
今日も社長の悲鳴が響いた。
「顔は売れてるのだぁ!!曲がないのだぁあああああ!!」
こうして。
近年でも屈指の顔面を誇る新人グループ。
ピュア・クラウンは。
なぜかグループ曲より先に。
個人仕事だけで有名になっていくのだった。




