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芸能事務所の若社長ですが、所属タレントが不祥事を起こしすぎて胃が限界です  作者: 雪だるま


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36/43

36 ライブ

 スターライト・ユニバース主催。


 ピュア・クラウン単独ライブ。


 会場は満員だった。


 いや。


 正確には、ほぼ満員ではなく完全満員だった。


 チケットは即完売。


 配信チケットも好調。


 グッズも売れている。


 関係者席まで埋まっている。


 理由は単純だった。


 ピュア・クラウンが三人揃う機会がほとんどないからである。


 瑠璃は映画とCM。


 ひまりはドラマとソロ曲。


 エミリアは女優業。


 三人とも別々に売れすぎていた。


 その結果。


 アイドルグループなのに集まらない。


 もはや伝説の珍獣扱いである。


 ライブ会場の楽屋。


 レイは感動していた。


「のだぁ……」


 スタッフが聞く。


「どうしました?」


「三人いるのだぁ……」


「いますね」


「同じ部屋にいるのだぁ……」


「いますね」


「奇跡なのだぁ……」


 レイは涙ぐんだ。


「最近はスケジュール表でしか見てなかったのだぁ……」


 スタッフも少しだけ分かる気がした。


 実際、三人揃うのはかなり久しぶりだった。


 楽屋では。


 瑠璃が台本を読んでいる。


 ひまりがお菓子を食べている。


 エミリアがスマホを見ている。


 見事に自由だった。


 レイは両手を広げた。


「うむ!」


 三人を見る。


「今日はなのだぁ!」


 ばんっ。


「清楚系アイドルグループとして!」


 ばんっ。


「清楚を押しまくるのだぁ!」


 ばんっ。


「うむ!」


 ばんっ。


「全て清楚にするのだぁ!」


 ばんっ。


 エミリア。


 即座に言った。


「無理」


「なぜなのだぁ!」


「社長がいるから」


「失礼なのだぁ!」


 瑠璃は微笑んだ。


「ライブのコンセプトですか」


「そうなのだぁ!」


 レイは頷く。


「清楚なのだぁ!」


 ひまり。


「清楚ですぅ」


「そうなのだぁ!」


 レイはさらに興奮した。


「な!エミリアぁ!」


「何」


「清楚系だもんななのだぁ!」


 エミリア。


 沈黙。


 三秒。


 五秒。


「帰る?」


「待つのだぁ!」


 レイは必死だった。


「世間ではそうなのだぁ!」


「無理がある」


「あるのだぁ!」


「認めた」


「だが押し切るのだぁ!」


 瑠璃が小さく吹き出した。


 ひまりも笑っている。


 エミリアだけが呆れていた。


「まだその設定続いてるんだ」


「続いてるのだぁ!」


「いつまで」


「墓までなのだぁ!」


「重い」


 その時。


 衣装担当が入ってきた。


「衣装です」


 レイ。


 満面の笑み。


「のだっ♡」


 運ばれてきた衣装。


 白。


 淡いピンク。


 レース。


 リボン。


 フリル。


 花。


 清楚。


 清楚。


 清楚。


 どこまでも清楚だった。


 エミリア。


 頭を抱える。


「また?」


「またなのだぁ!」


「何回着るのこれ」


「人気なのだぁ!」


 レイは本気だった。


「お主らが着ると売れるのだぁ!」


「社長の趣味では」


「半分くらいそうなのだぁ!」


「正直だね」


 ひまりは衣装を見て嬉しそうだった。


「可愛いですぅ」


 瑠璃も頷く。


「綺麗ですね」


 レイ。


 感動。


「瑠璃ぃ!」


 エミリア。


 ため息。


「二人が肯定するから悪化するんだけど」


 だが。


 着替えた結果。


 やはり似合っていた。


 瑠璃。


 神秘的。


 本当に絵本の王女。


 会場スタッフが息を呑む。


「綺麗……」


「本当に綺麗……」


 レイ。


 泣く。


「清楚なのだぁ……」


 ひまり。


 妖精。


 ふわふわ。


 可愛い。


 子供向けCMに出てきそう。


 レイ。


 泣く。


「清楚なのだぁ……」


 そして。


 エミリア。


 似合っていた。


 悔しいほど。


 清楚な衣装なのに負けない顔面。


 強い目つき。


 華やかさ。


 まるで強めのお嬢様だった。


 レイ。


 感動。


「清楚なのだぁぁぁ!」


 エミリア。


「それしか言わないの?」


「清楚なのだぁ!」


「語彙力」


 開演三十分前。


 舞台袖。


 観客の歓声が聞こえる。


 会場が揺れていた。


 久々の三人。


 期待は大きい。


 レイはモニターを見る。


「のだぁ……」


 少しだけ感慨深かった。


 最初は。


 顔が良いから集めた。


 正直それもあった。


 だが。


 今は違う。


 それぞれが売れている。


 それぞれにファンがいる。


 それぞれに代表作がある。


 そして今日。


 三人が同じステージに立つ。


 レイは少しだけ真面目になった。


「頑張るのだぁ」


 三人を見る。


 瑠璃が微笑む。


「はい」


 ひまりも笑う。


「頑張りますぅ」


 エミリアは肩をすくめる。


「いつも通り」


 レイは満足そうだった。


「のだっ♡」


 そして。


 開演。


 照明が落ちる。


 歓声。


 大歓声。


 会場が揺れる。


 スクリーンが光る。


 そして。


 三人が現れる。


 歓声。


 さらに歓声。


 特に瑠璃が映る。


 悲鳴。


 ひまり。


 歓声。


 エミリア。


 歓声。


 レイは舞台袖で感動していた。


「のだぁ……」


 ライブは大成功だった。


 『清純派売りですがなにか』


 『暴言バニー』


 『ピロローン三〇〇年』


 その他多数。


 会場は盛り上がる。


 だが。


 途中のMCで問題が起きた。


 エミリアが喋った。


「皆さん、今日は来てくださってありがとうございます」


 歓声。


「久しぶりに三人揃いました」


 歓声。


「社長がうるさいので頑張ります」


 爆笑。


 舞台袖。


 レイ。


「のだぁ!?」


 ひまりも続く。


「社長さん、今日だけで清楚って三十回くらい言ってましたぁ」


 爆笑。


 レイ。


「裏切りなのだぁ!」


 瑠璃まで言った。


「たぶん四十回くらいだったと思います」


 会場。


 大爆笑。


 レイ。


 崩れ落ちる。


「瑠璃ぃぃぃぃ!!」


 スタッフ。


 笑いを堪える。


 そして。


 ライブ終盤。


 三人が並ぶ。


 ライトが当たる。


 歓声が響く。


 瑠璃。


 ひまり。


 エミリア。


 本当に綺麗だった。


 レイは静かに見ていた。


「のだぁ……」


 スタッフが聞く。


「どうしました?」


「売れて良かったのだぁ」


 珍しく本音だった。


 だが。


 感動したのは五秒だけだった。


 スマホが鳴る。


 通知。


 レイ。


 画面を見る。


 停止。


「のだ?」


 スタッフ。


「どうしました?」


 レイ。


 青ざめる。


「所属俳優がまた神社なのだぁぁぁぁぁ!!」


 絶叫。


 ライブ終盤。


 感動。


 友情。


 成功。


 全てが吹き飛んだ。


 スタッフは思った。


 やはりスターライト・ユニバースは今日も平常運転であると。


 そしてレイは。


 ピュア・クラウンのライブ成功より先に神社問題へ走っていったのであった。


「のだぁぁぁぁぁ!!神社を出禁にしろなのだぁぁぁぁぁ!!」

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