表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
芸能事務所の若社長ですが、所属タレントが不祥事を起こしすぎて胃が限界です  作者: 雪だるま


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

31/43

31 倒れた社長

 スターライト・ユニバース本社。


 午前十一時。


 レイは元気だった。


 少なくとも本人は元気だと思っていた。


「のだっ♡」


 会議。


「次はピュア・クラウンの写真集なのだぁ!」


 昼。


「のだっ♡」


 スポンサーとの会食。


「清純派なのだぁ!」


 午後。


「のだっ♡」


 ドラマ会議。


「視聴率なのだぁ!」


 夕方。


「のだっ♡」


 謝罪会見の打ち合わせ。


「なんでなのだぁ!?」


 夜。


「のだっ♡」


 所属タレントの炎上対応。


「またなのだぁ!?」


 深夜。


「のだっ♡」


 新曲会議。


「次は暴言バニー2なのだぁ!」


 そして。


 翌日。


 朝。


 会議室。


 レイは立ち上がった。


「うむ!」


 社員たちを見る。


「今日はなのだぁ!」


 ふらっ。


 止まる。


 秘書が首を傾げる。


「社長?」


「のだ?」


 レイも首を傾げた。


「なんか変なのだ」


 ふらっ。


「社長?」


「のだ?」


 さらに。


 ふらっ。


 そして。


 どさっ。


 会議室に静寂が訪れた。


 社員たち。


 固まる。


 秘書。


 固まる。


 エミリア。


「え?」


 ひまり。


「えぇ?」


 瑠璃。


「社長?」


 レイ。


「のだぁ……」


 床に転がっていた。


 人生初レベルで。


 本当に倒れた。


 数時間後。


 病院。


 個室。


 レイはベッドの上で目を開けた。


「のだ……?」


 白い天井。


 病院だった。


 そして。


 周囲。


 人がいた。


 まず。


 父親。


 田中正人。


 顔が怖い。


 非常に怖い。


 母親。


 田中恵子。


 泣いていた。


「レイ!」


「のだ?」


「心配したのよ!」


「のだ?」


 レイはまだ理解していない。


 そして。


 さらに。


 窓際。


 東雲綾華。


 いた。


 レイ。


 停止。


「のだ?」


 もう一度見る。


「のだ?」


 さらに見る。


「のだぁ!?」


 東雲だった。


 間違いなく。


 本人だった。


 綺麗だった。


 病院なのに綺麗だった。


「東雲殿なのだぁ!?」


 東雲は少し安心したように微笑んだ。


「目が覚めましたか」


「のだぁ!?」


「良かったです」


「なんでいるのだぁ!?」


 東雲は首を傾げた。


「駄目ですか?」


 レイ。


 即答。


「駄目じゃないのだぁ!」


「そうですか」


「むしろ嬉しいのだぁ!」


「それなら良かったです」


 母親が言った。


「綾華さん、一番早かったのよ」


「のだ?」


「病院に」


 レイ。


 停止。


「のだ?」


 東雲。


 少しだけ視線を逸らす。


「連絡をいただきましたので」


「のだ?」


「心配でしたから」


「のだ?」


 レイ。


 再起動できない。


 父親が言った。


「お前より落ち着いてたぞ」


「のだ?」


「医者の話も聞いてくれた」


「のだ?」


「お前は倒れてた」


「のだぁ……」


 それはそうだった。


 母親は涙目だった。


「無理しすぎなのよ」


「してないのだぁ」


「してるわ」


「してないのだぁ」


「してるわ」


 東雲も静かに言った。


「かなりされていたようですよ」


 レイ。


 固まる。


「のだ?」


「医師の先生も、休養不足と過労気味だと」


「のだ?」


「睡眠時間も少ないそうですね」


「のだ?」


「食事も不規則です」


「のだ?」


「ストレスも多いそうです」


「のだ?」


 完全に詰んでいた。


 医師の診断そのものだった。


 父親が腕を組む。


「お前な」


「のだ」


「会社は代わりがいる」


「のだ」


「息子は代わりがいない」


「のだ」


 レイ。


 少しだけ黙る。


 珍しかった。


 母親も言う。


「仕事も大事だけど」


「のだ」


「体の方が大事」


「のだ」


 レイ。


 反論しようとした。


 だが。


 東雲を見る。


 少し疲れた顔。


 たぶん。


 本当に心配していた。


 そこでようやく。


 少しだけ申し訳なくなった。


「のだぁ……」


 東雲が聞く。


「どうしました?」


「ごめんなのだぁ」


 東雲。


 少し驚く。


 レイが素直だった。


「心配かけたのだぁ」


「はい」


 即答。


 レイ。


 ダメージ。


「のだぁ」


「かなり心配しました」


「のだぁ」


「電話も出ませんでしたし」


「倒れてたのだぁ」


「知っています」


 少しだけ笑う。


 その笑顔に。


 レイはさらに弱った。


「のだぁ……」


 母親が小声で父親に言った。


「綾華さんすごいわね」


「うむ」


「レイがおとなしい」


「奇跡だな」


 その頃。


 病室の外。


 別の人物たちもいた。


 瑠璃。


 ひまり。


 エミリア。


 そして黒瀬真莉亜。


 全員来ていた。


 ただし。


 両親と東雲がいるので遠慮していた。


 エミリアが言う。


「倒れるとは思わなかった」


 黒瀬が苦笑する。


「私は思ってた」


「本当?」


「だってあの人、毎日叫んでるもの」


 瑠璃は静かだった。


 少しだけ心配そうだった。


「社長、大丈夫でしょうか」


 ひまりも頷く。


「最近ずっと忙しかったですしねぇ」


 エミリア。


「自業自得だけど」


 だが。


 少しだけ安心していた。


 命に別状はない。


 それは分かっている。


 だから。


 皆、待っていた。


 病室の中。


 レイは少し元気になっていた。


 なぜなら。


 東雲がいるからである。


 非常に単純だった。


「のだぁ」


「はい」


「東雲殿」


「なんでしょう」


「お見舞いなのだぁ?」


「そうです」


「のだぁ」


 嬉しい。


 非常に嬉しい。


 顔に出ている。


 東雲は苦笑した。


「そんなに嬉しいですか」


「嬉しいのだぁ」


「そうですか」


「嬉しいのだぁ」


「二回言いましたね」


 レイは満足そうだった。


 父親は呆れていた。


「元気そうだな」


「のだっ♡」


「さっきまで死にかけだったのに」


「東雲殿がいるのだぁ♡」


 母親が吹き出した。


 東雲も少し困っていた。


 だが。


 どこか嬉しそうだった。


 その時。


 医師が入ってきた。


「田中さん」


「のだ?」


「数日は休んでください」


「嫌なのだぁ」


「休んでください」


「会社が」


「休んでください」


「ピュア・クラウンが」


「休んでください」


「神社の人が」


「休んでください」


 即終了だった。


 医師は慣れていた。


 レイみたいな人間を。


「働きすぎです」


「のだぁ」


「少なくとも今週は」


「のだぁ」


「休養です」


「のだぁ」


 レイは泣きそうだった。


 しかし。


 東雲が言った。


「休んでください」


「のだ?」


「ちゃんと」


「のだ?」


「約束です」


 レイ。


 停止。


 数秒。


 そして。


「休むのだぁ」


 即答。


 父親。


「早いな」


 母親。


「早いわね」


 医師。


「助かります」


 東雲。


 微笑む。


「良かったです」


 レイ。


 完全降伏。


「のだぁ……」


 そして。


 病室の外。


 エミリアが言った。


「終わった」


「何がですか」


 瑠璃が聞く。


「説得」


 エミリアは肩をすくめた。


「私たちが一週間言っても聞かないのに」


 ひまり。


「あぁ〜」


 黒瀬。


 笑う。


「なるほど」


 瑠璃だけは静かだった。


 少しだけ。


 本当に少しだけ。


 複雑そうな顔をしていた。


 その表情に気づいたのは。


 たぶん。


 エミリアだけだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ