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芸能事務所の若社長ですが、所属タレントが不祥事を起こしすぎて胃が限界です  作者: 雪だるま


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26/43

26 社長の誕生日

 スターライト・ユニバース本社。


 その日、社内は朝から妙に浮ついていた。


 理由は簡単だった。


 社長、田中レイの誕生日である。


 普段から無駄に騒がしい男が、今日はさらに騒がしかった。なぜなら本人が一番、自分の誕生日を祝う気満々だったからだ。


「のだっ♡」


 社長室の扉が勢いよく開く。


「のだっ♡」


 白いスーツ。


 胸元には妙なリボン。


 腕には高級時計。


 髪はいつもより整えられている。


 顔だけは完璧な若社長が、両手を広げて現れた。


「今年も可愛い吾輩をよろしくなのだっ♡」


 受付の社員たちは拍手した。


 義務感半分。


 慣れ半分。


 諦め半分。


 合計で一五〇%くらいの拍手だった。


「レイちゃんですのだっ♡」


 レイは自分で自分にクラッカーを鳴らした。


 ぱんっ。


 紙吹雪が舞う。


 田村の後任として入った新マネージャー候補たちは、まだこの事務所の空気に慣れていないため、全員きょとんとしていた。


 ベテラン社員だけは落ち着いていた。


「社長、お誕生日おめでとうございます」


「めでたいのだぁ♡」


「こちら、取引先からの花です」


「のだっ♡」


「こちら、スポンサー様からのケーキです」


「のだっ♡」


「こちら、所属タレント一同からの寄せ書きです」


「のだっ♡」


 レイは寄せ書きを受け取った。


 大きな色紙には、所属タレントたちのメッセージが書かれている。


『社長、いつも謝ってくれてありがとうございます』


『ご迷惑をおかけしないよう頑張ります』


『今後は神社に気をつけます』


『炎上しないようにします』


『次はちゃんと事前に相談します』


 レイは沈黙した。


「……のだぁ」


 めでたいはずの誕生日なのに、謝罪と再発防止の香りがする。


「誕生日くらい純粋に祝えなのだぁ……」


 しかし、色紙の中央にはピュア・クラウンの三人のメッセージもあった。


 瑠璃。


『社長、お誕生日おめでとうございます。いつもお仕事を支えてくださり、ありがとうございます。これからも精一杯努めます』


 ひまり。


『社長さん、お誕生日おめでとうございますぅ。今年もピロローンですねぇ』


 エミリア。


『誕生日おめでとう。あんまり調子に乗らないように』


 レイは色紙を抱きしめた。


「のだぁ……」


 目が潤む。


「瑠璃は天使なのだぁ……ひまりは平和なのだぁ……エミリアは通常運転なのだぁ……」


 その日の夕方。


 社内の多目的ホールでは、レイの誕生日会が開かれることになっていた。


 会社の行事というより、ほぼ本人の希望である。


 ただし、社長の誕生日会なので、所属タレントもそれなりに顔を出す。取引先も少し来る。スポンサー関係者も来る。結果、意外とちゃんとしたパーティーになってしまった。


 会場には大きなケーキ。


 花。


 軽食。


 シャンパン。


 そして、中央にはレイの巨大パネル。


『HAPPY BIRTHDAY REI』


 下に小さく。


『今年も謝罪会見少なめでお願いします』


 レイはそれを見て叫んだ。


「余計な一文なのだぁああああ!」


 社員たちは拍手した。


 誰が入れたのかは分からない。


 たぶん全員の総意である。


 ピュア・クラウンの三人も来ていた。


 瑠璃は淡い水色のワンピース。


 清楚だった。


 信じられないくらい清楚だった。


 卒業して少し大人びたことで、以前より落ち着いた美しさが増している。


 ひまりはふわふわした白いワンピース。


 どこかお菓子の妖精のようだった。


 エミリアは黒に近い深い色のドレス。


 美しいが、清純派というより強い。


 レイは三人を見るなり両手を広げた。


「お主らぁああああ!吾輩の誕生日なのだぁ♡祝うのだぁ♡」


 ひまりが拍手した。


「おめでとうございますぅ」


 瑠璃も丁寧に頭を下げる。


「お誕生日おめでとうございます、社長」


 エミリアは片手を上げた。


「おめでと」


「もっと感情を込めるのだぁ!」


「込めた」


「込めてないのだぁ!」


「はいはい。おめでとうございます、可愛い社長様」


「皮肉なのだぁ!でも誕生日だから受け取るのだぁ♡」


 レイは上機嫌だった。


 ひまりが小さな包みを渡す。


「これ、プレゼントですぅ」


「のだっ♡」


 開けると、中にはにんじん型のペンが入っていた。


「暴言バニー用ですぅ」


「のだぁ……可愛いのだぁ……」


 エミリアは薄い箱を渡した。


「私から」


「のだっ♡」


 中身は高級ハンドクリームだった。


「謝罪会見で手を酷使するでしょ」


「用途が悲しいのだぁ!」


「使えるものにした」


「現実的なのだぁ……」


 そして瑠璃。


 瑠璃は小さな袋を持っていた。


「社長」


「のだっ♡」


「こちらを」


 袋の中には、上品な万年筆が入っていた。


 黒と銀の落ち着いたデザイン。


 かなり高級そうだった。


 レイは固まる。


「のだ……?」


「社長は契約書やお手紙を書く機会も多いと思いましたので」


「瑠璃ぃ……」


「お気に召さなければ、別のものに」


「気に入ったのだぁああああ!」


 レイは万年筆を抱きしめた。


「のだぁ……瑠璃が吾輩の社長らしさを信じてくれているのだぁ……」


 エミリアがぼそっと言う。


「使う前に泣いて壊さないでよ」


「壊さないのだぁ!」


 その時だった。


 会場の入口が少しざわついた。


 一人の女性が入ってきた。


 東雲綾華。


 あの大企業令嬢である。


 今日は淡いクリーム色のドレス姿だった。


 派手すぎない。


 しかし、非常に上品。


 長い黒髪を緩くまとめ、落ち着いた微笑みを浮かべている。


 彼女が入ってくると、空気が少し変わった。


 芸能人の華やかさとは違う。


 育ちの良い家の娘が持つ、静かな存在感があった。


 レイは一瞬で気づいた。


「のだっ!?」


 そして、顔が明るくなる。


「東雲殿ぉおおおお!」


 レイは走り出した。


 社員たちは慣れていた。


 エミリアは「露骨」と呟いた。


 ひまりは「あ、綾華さんですぅ」とふわふわ手を振った。


 瑠璃だけが、少しだけ動きを止めた。


 レイは東雲の前で満面の笑みになった。


「来てくれたのだぁ!?」


「ええ。お誕生日と伺いましたので」


「嬉しいのだぁ♡」


「おめでとうございます、レイさん」


「のだぁ……」


 レイは胸を押さえた。


「名前呼びの破壊力が高いのだぁ……」


 東雲は小さく笑い、細長い箱を差し出した。


「こちら、よろしければ」


「のだっ♡」


 中身は上質なネクタイピンだった。


 シンプルだが非常に品が良い。


「お仕事でも使えるものにしました」


「のだぁ……」


 レイは感動した。


「みんな吾輩をちゃんと社長扱いしてくれるのだぁ……」


 エミリアが遠くから言った。


「普段が社長っぽくないからじゃない?」


「聞こえてるのだぁ!」


 東雲は微笑んだ。


「よくお似合いになると思います」


「のだっ♡」


 レイはすぐつけようとした。


 しかし手が震えてうまくつけられない。


「のだぁ?のだぁ?」


 東雲が自然に近づく。


「少し失礼します」


 そして、レイのネクタイにそっとネクタイピンを留めた。


 距離が近い。


 かなり近い。


 レイは完全に固まった。


「のだ……」


「はい、できました」


「のだ……」


「どうされました?」


「心臓が一度死んだのだ……」


「大げさですよ」


 その光景を、瑠璃は見ていた。


 静かに。


 本当に静かに。


 表情はほとんど変わらない。


 だが、手に持っていたグラスの位置が少しだけ下がった。


 ひまりが隣で首を傾げる。


「瑠璃ちゃん?」


「はい」


「どうしましたぁ?」


「いえ」


 瑠璃は微笑んだ。


 いつもの完璧な微笑み。


 だが、ひまりは意外と鋭いところがある。


「少し拗ねてますぅ?」


「……拗ねていません」


「そうですかぁ?」


「拗ねていません」


 その言い方が、いつもより少しだけ硬かった。


 エミリアが横から見て、にやりとした。


「へえ」


 瑠璃は視線だけ向ける。


「何でしょうか」


「別に」


「何か言いたそうですね」


「珍しいなと思って」


「何がですか」


「瑠璃が顔に出してるの」


「出していません」


「出てる」


「出ていません」


「出てるって」


 瑠璃は静かにお茶を飲んだ。


 そして言った。


「社長がお客様に丁寧に対応しているだけです」


「お客様ね」


「はい」


「ふーん」


 エミリアは面白そうだった。


「瑠璃、あの令嬢さん苦手?」


「苦手ではありません。上品で素敵な方だと思います」


「じゃあ何?」


「何もありません」


「へえ」


 エミリアは笑った。


 ひまりもにこにこしている。


「瑠璃ちゃん、社長さんにプレゼント渡した時より、綾華さんがネクタイピンつけた時の方がじっと見てましたぁ」


「見ていません」


「見てましたぁ」


「見ていません」


 瑠璃は少しだけ視線を逸らした。


 本当に珍しいことだった。


 瑠璃は普段、感情を大きく動かさない。


 レイが騒いでも、エミリアが毒を吐いても、ひまりが不思議なことを言っても、静かに受け流す。


 そんな瑠璃が、今日はほんの少しだけ拗ねていた。


 理由は本人にもよく分からなかった。


 社長が東雲と楽しそうに話している。


 それだけである。


 東雲は美しい。


 上品。


 家柄も良い。


 社長とも話が合う。


 誕生日に来るくらいの仲。


 それは良いことのはずだった。


 社長が嬉しそうなのも良いことのはずだった。


 なのに。


 少しだけ面白くない。


 瑠璃は自分の感情に困っていた。


 一方、レイは完全に浮かれていた。


「東雲殿!ケーキ食べるのだぁ!」


「いただきます」


「こっちの料理も美味しいのだぁ!」


「ありがとうございます」


「吾輩の誕生日会なのだぁ!」


「はい」


「つまり今日は吾輩が一番偉いのだぁ!」


「社長ですから、普段から偉いのでは?」


「のだっ?」


 レイは感動した。


「東雲殿は吾輩をちゃんと偉い人扱いしてくれるのだぁ……」


 エミリアが遠くから言う。


「偉い人は自分でレイちゃんとか言わないけどね」


「エミリアぁ!誕生日に毒を吐くななのだぁ!」


「誕生日だから軽めにしてる」


「これで軽めなのだぁ!?」


 会場はにぎやかだった。


 所属タレントたちも次々にレイに挨拶する。


 神社好き俳優も来た。


「社長、おめでとうございます」


「お主は今年こそ神社で踊るななのだぁ!」


「努力します」


「努力ではなく禁止なのだぁ!」


 匂わせ炎上経験のある歌手も来た。


「社長、おめでとうございます」


「お主はカップを二つ並べるななのだぁ!」


「気をつけます」


「一つだけで生きるのだぁ!」


 泥沼離婚中の看板女優も来た。


「社長、おめでとう」


「お主は弁護士と仲良くするのだぁ……」


「それはしてるわ」


「吾輩の誕生日に裁判資料を送るななのだぁ……」


 レイは誕生日なのに、やはり社長だった。


 祝いの言葉と同時に、不祥事予防指導をしている。


 東雲はそれを見て、少し笑った。


「本当に大変ですね」


「大変なのだぁ!」


「でも、皆さんに慕われていますね」


「問題児に囲まれてるのだぁ……」


「それも才能では?」


「嫌な才能なのだぁ」


 そのやり取りを、瑠璃はまた見ていた。


 そして、少しだけグラスを置いた。


 エミリアが小声で言う。


「行けば?」


「どこにですか」


「社長のところ」


「なぜですか」


「拗ねてるから」


「拗ねていません」


「はいはい」


 ひまりが笑った。


「お祝いの日ですし、瑠璃ちゃんも社長さんとお話したらいいと思いますぅ」


「……そうですね」


 瑠璃はしばらく迷った。


 そして、ゆっくりレイの方へ向かった。


 レイは東雲と話していた。


「のだっ♡そういえば東雲殿、このネクタイピンは家宝にするのだぁ」


「使ってください」


「使ったら傷つくのだぁ」


「使うためのものです」


「のだぁ……上品な正論なのだぁ……」


 そこへ瑠璃が来る。


「社長」


「のだ?」


 レイが振り向く。


「瑠璃?」


 瑠璃は一礼した。


「東雲様、本日はお越しいただきありがとうございます」


 東雲も丁寧に返す。


「こちらこそ。白鳥さん、いつも拝見しています。映画、とても綺麗でした」


「ありがとうございます」


「本当に画面に映える方ですね」


「恐れ入ります」


 会話は礼儀正しい。


 非常に美しい。


 美しい女性二人が上品に会話している。


 レイは感動した。


「のだぁ……清らかな空間なのだぁ……」


 エミリアが遠くで「社長だけ浮いてる」と呟いた。


 瑠璃はレイを見る。


「社長」


「なんなのだぁ」


「万年筆、ぜひ使ってください」


「のだっ?」


「飾るだけではなく」


「のだぁ……でも瑠璃からのプレゼントなのだぁ……」


「使っていただくために選びました」


 東雲が少し笑った。


「私も同じことを言いましたね」


「はい」


 瑠璃は微笑んだ。


 だが、その微笑みには少しだけ意地があった。


「社長には、いただいたものを大切にしすぎて使わない癖があるようですから」


 レイは目をぱちぱちさせた。


「瑠璃、吾輩のこと見てるのだぁ?」


「見ています。社長ですから」


「のだぁ……」


 レイは胸を押さえた。


「誕生日に心臓が忙しいのだぁ……」


 東雲は、その微妙な空気に気づいていた。


 そして、楽しそうに微笑んだ。


「レイさんは、皆さんから大切にされているのですね」


「のだっ?」


 瑠璃が静かに言う。


「社長は騒がしいですが、私たちを守ってくださいますので」


「瑠璃ぃ……」


 レイは本気で泣きそうになった。


「吾輩、誕生日に泣いちゃうのだぁ……」


「泣かないでください」


「泣くのだぁ……」


「では、せめてケーキの前では泣かないでください」


「現実的なのだぁ……」


 その後、ケーキカットが始まった。


 なぜか社長なのに、自分で自分のケーキを切ることになった。


「のだっ♡レイちゃん入刀なのだぁ♡」


 エミリアが言う。


「結婚式みたいな言い方やめなよ」


「誕生日式なのだぁ!」


 ひまりが拍手する。


「わぁ、ケーキですぅ」


 瑠璃も拍手する。


 東雲も拍手する。


 レイは満足そうだった。


 だが、ケーキを配る時、少しだけ悩んだ。


 一番綺麗な苺の乗った部分。


 誰に渡すか。


 東雲か。


 瑠璃か。


 レイは固まった。


「のだ……」


 エミリアがそれを見て吹き出す。


「社長、そこで悩むんだ」


「悩んでないのだぁ!」


「めちゃくちゃ悩んでる」


 ひまりが言う。


「半分にしたらいいですぅ」


「天才なのだぁ!」


 結局、一番綺麗な苺は半分に切られ、東雲と瑠璃に配られた。


 瑠璃はそれを見て、少しだけ機嫌が戻った。


 東雲も気づいていたが、何も言わなかった。


 ただ静かにケーキを食べた。


「美味しいですね」


「のだっ♡スポンサー様のケーキなのだぁ♡」


「そうなんですね」


「つまり食べるだけで企業案件なのだぁ♡」


「それは違うと思います」


 レイは幸せそうだった。


 誕生日会は続いた。


 途中でひまりが『ピロローン300年』を歌い、子供向けイベントでもないのに社員たちが謎に盛り上がった。


 エミリアは嫌々ながらもレイに一言祝辞を述べた。


「社長、誕生日おめでとう。騒がしいけど、仕事取ってくるところだけは評価してる」


「褒め方が雑なのだぁ!」


「最大限」


「もっと綺麗に言うのだぁ!」


「来年までに落ち着きなさい」


「無理なのだぁ!」


 瑠璃は短く、しかし丁寧に言った。


「社長にとって、良い一年になりますように。私も、いただいたお仕事に誠実に向き合ってまいります」


 レイはまた泣いた。


「のだぁ……」


 最後に東雲が微笑んで言った。


「お誕生日おめでとうございます。お身体を大切にしてくださいね」


 レイは完全に溶けた。


「のだぁ……」


 エミリアが言う。


「社長、顔がだらしない」


「誕生日なのだぁ!許されるのだぁ!」


 しかし、その夜。


 誕生日会が終わり、人が少なくなった頃。


 瑠璃は帰る前に、レイのところへ来た。


「社長」


「のだ?」


「今日はおめでとうございました」


「ありがとうなのだぁ♡」


「それと」


「のだ?」


「……少し、失礼しました」


「何がなのだぁ?」


「いえ」


 瑠璃は少しだけ目を伏せた。


「私らしくなかったかもしれません」


 レイは首を傾げた。


「のだ?」


 何のことか本気で分かっていなかった。


 瑠璃はそれを見て、少しだけ呆れたように微笑んだ。


「社長は、そういうところがありますね」


「どういうところなのだぁ?」


「分からなくていいです」


「のだぁ?」


 瑠璃は一礼した。


「では、おやすみなさい」


「おやすみなのだぁ!」


 瑠璃は去っていく。


 その背中を見ながら、レイは不思議そうにしていた。


 その後ろからエミリアが現れた。


「社長」


「のだ?」


「瑠璃、今日ちょっと拗ねてたよ」


「のだ?」


「本当に気づいてないの?」


「何に?」


「終わってる」


「のだぁ!?」


 ひまりも横からにこにこ言う。


「瑠璃ちゃん、綾華さんと社長さんが仲良しで、ちょっとだけ寂しそうでしたぁ」


「のだ?」


 レイは固まった。


「瑠璃が?」


「はいぃ」


「吾輩に?」


「たぶんですぅ」


 レイはしばらく停止した。


 そして。


「のだぁ……」


 顔を真っ赤にした。


「誕生日、情報量が多すぎるのだぁ……」


 エミリアは笑った。


「今年も大変そうね」


「お主らのせいでもあるのだぁ!」


「はいはい」


 その瞬間、レイのスマホが鳴った。


 通知。


 所属俳優のマネージャー。


『社長、お誕生日中すみません。本人がまた神社方面に向かっています』


 レイは画面を見た。


 沈黙。


 そして。


「のだぁああああああああ!!誕生日くらい神社へ行くななのだぁあああああ!!」


 誕生日会場に、最後の悲鳴が響いた。


 東雲は帰りの車の中でその悲鳴を聞き、少し笑った。


 瑠璃も別の車の中で小さく笑った。


 ひまりは「社長さん、元気ですねぇ」と言った。


 エミリアは「誕生日でも平常運転」と呟いた。


 こうして、社長レイの誕生日は終わった。


 可愛い吾輩をよろしく。


 レイちゃんですのだ。


 そう叫んだ一日は、祝福とプレゼントと、少しの嫉妬と、最後の神社騒動で締めくくられたのである。

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