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芸能事務所の若社長ですが、所属タレントが不祥事を起こしすぎて胃が限界です  作者: 雪だるま


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18/43

18

 スターライト・ユニバース本社。


 その日。


 社内には異様な空気が漂っていた。


 原因。


 ひまり。


 そして。


『暴言バニー』


 である。


 誰も予想していなかった。


 本当に。


 誰も予想していなかった。


 あの意味不明な曲が。


 あの社長の趣味百パーセントの曲が。


 あのうさぎコスプレをさせたいだけの曲が。


 まさか。


 四十万枚。


 ダウンロード込みで四十万。


 子供向け市場で大爆発。


 幼稚園。


 保育園。


 小学校低学年。


 さらには親世代。


 なぜか大流行。


『野菜食べろなのだっ♡』


『ちゃんと寝ろなのだっ♡』


『宿題しろなのだっ♡』


 子供が歌う。


 親が喜ぶ。


 先生も喜ぶ。


 教育番組まで興味を示す。


 そして。


 社長レイ。


 完全に調子に乗っていた。


「のだっ♡」


 会議室で踊っていた。


「のだっ♡」


 資料を抱えていた。


「のだっ♡」


 顔が非常に気持ち悪かった。


 田村は頭を抱えていた。


「社長」


「なんなのだぁ♡」


「調子に乗っていますね」


「当然なのだぁ♡」


 ばんっ。


 売上表を机に叩きつける。


「四十万なのだぁ♡」


 ばんっ。


「四十万なのだぁ♡」


 ばんっ。


「見たかな世界なのだぁ♡」


「見ました」


「吾輩は天才なのだぁ♡」


「そこは否定しません」


 田村も少しだけ認めざるを得なかった。


 意味不明だが。


 売れた。


 それが全てだった。


 その時。


 会議室のドアが開いた。


 瑠璃。


 ひまり。


 エミリア。


 三人が入ってきた。


 そして。


 三人とも。


 嫌な予感がしていた。


 レイの顔を見れば分かる。


 あれは何かを思いついている顔だった。


 危険である。


 非常に危険である。


「のだっ♡」


 レイ。


 満面の笑み。


「お主らぁ♡」


 三人。


 無言。


「重大発表なのだぁ♡」


 さらに無言。


 逃げたい。


 だが逃げられない。


 そして。


 レイは叫んだ。


「ピュア・クラウン写真集企画なのだぁああああ!!」


 ばんっ。


 資料が映し出される。


 タイトル。


『Pure Rabbit』


 エミリア。


 即座に嫌な顔。


 瑠璃。


 理解した。


 ひまり。


 嬉しそう。


「うさぎさんですかぁ?」


「そうなのだぁ♡」


「可愛いですねぇ」


「そうなのだぁ♡」


 レイ。


 勢いよく次のページを開く。


 そこには。


 三人のイメージイラスト。


 全員。


 白うさぎ。


 耳付き。


 ふわふわ。


 リボン付き。


 完全にうさぎ。


 会議室。


 静まる。


 エミリア。


「嫌」


「のだぁ!?」


「絶対嫌」


「なんでなのだぁ!?」


「二十万枚売った女優に何させる気よ」


「うさぎなのだぁ♡」


「意味が分からない」


 レイ。


 瑠璃を見る。


「瑠璃ぃ♡」


 瑠璃。


 目を閉じる。


 数秒。


 そして。


 諦めた顔になった。


「……仕事でしょうか」


「仕事なのだぁ♡」


「なら頑張ります」


 レイ。


 感動。


「瑠璃ぃぃぃぃ!!」


 涙目。


「やっぱりセンターなのだぁ!!」


 エミリア。


「諦めるの早くない?」


「仕事ですから」


「真面目すぎる」


 レイ。


 さらに次の資料。


「見ろなのだぁ♡」


 そこには。


 撮影サンプル。


 瑠璃。


 白うさぎ。


 神秘的。


 妖精。


 もはや人間ではない。


 エミリア。


 白うさぎ。


 なぜか妙に強そう。


 ボスうさぎ。


 ひまり。


 白うさぎ。


 違和感ゼロ。


 元々うさぎだった可能性すらある。


 会議室。


 静まる。


 レイ。


 感動。


「完璧なのだぁ……」


 田村。


 冷静。


「確かに売れそうです」


「だろうなのだぁ♡」


「社長」


「なんなのだぁ♡」


「個人的な動機は」


「吾輩のコレクションなのだぁ♡」


 即答。


 会議室。


 沈黙。


 エミリア。


 机を叩く。


「最低」


「のだぁ!?」


「本音出すな」


「だって欲しいのだぁ!」


「隠せ」


「保存用三百冊欲しいのだぁ!」


「もっと隠せ!!」


 ひまりは笑っていた。


「三百冊ですかぁ」


「そうなのだぁ♡」


「置く場所ありますぅ?」


 レイ。


 固まる。


「のだ?」


 考えてなかった。


 田村。


「社長室が埋まります」


「のだぁ?」


「火災の原因になります」


「のだぁ?」


「税務調査で説明が面倒です」


「のだぁ!?」


 レイ。


 初めて現実を見た。


 だが。


 すぐ立ち直る。


「でも欲しいのだぁ♡」


「駄目です」


「欲しいのだぁ♡」


「駄目です」


 その頃。


 撮影スタッフたちは既に盛り上がっていた。


 なぜなら。


 普通に絵になる。


 瑠璃。


 顔面最強。


 白うさぎ。


 相性抜群。


 エミリア。


 強気な目。


 少し不機嫌な表情。


 逆に人気が出そう。


 ひまり。


 説明不要。


 元からうさぎ。


 レベルだった。


 数日後。


 撮影当日。


 スタジオ。


 瑠璃。


 白うさぎ衣装。


 スタッフたち。


 静まる。


「綺麗……」


「CGみたい……」


「本当に人間?」


 瑠璃。


 困惑。


「ありがとうございます」


 エミリア。


 白うさぎ衣装。


 スタッフ。


「なんか強そう」


「うさぎなのに勝てそう」


「野生にいそう」


「ボスうさぎだ」


「誰がボスうさぎよ」


 ひまり。


 白うさぎ衣装。


 スタッフ。


「完成形だ」


「違和感ない」


「元からいた」


「絶対森に住んでる」


 ひまり。


「えへへぇ」


 そして。


 撮影現場の隅。


 レイ。


 泣いていた。


「のだぁ……」


 田村。


「どうしました」


「完璧なのだぁ……」


「そうですね」


「吾輩、生きてて良かったのだぁ……」


「大げさです」


「芸能界トップクラスの顔面を集めて良かったのだぁ……」


 レイは本気だった。


 その後。


 写真集予約開始。


 即。


 ランキング上位。


 SNS。


『瑠璃うさぎやばい』


『エミリアうさぎ強そう』


『ひまりは元からうさぎ』


『三人とも顔が強すぎる』


『暴言バニーありがとう』


『社長何考えてるんだ』


『でも買う』


 レイ。


 予約数を見て震える。


「のだぁ……」


「また売れていますね」


 田村。


 冷静。


「売れてるのだぁ……」


「売れています」


「やっぱり吾輩は天才なのだぁ……」


 その瞬間。


 スマホが鳴る。


 通知。


『所属俳優、また神社』


 レイ。


 静止。


 五秒。


 十秒。


 二十秒。


 そして。


「のだぁあああああああああ!!」


 絶叫。


 スタジオ中に響く。


 瑠璃。


 微笑む。


 ひまり。


 クッキーを食べる。


 エミリア。


 呆れた顔。


「現実に戻ったね」


 レイ。


 泣きながら頷く。


「戻りたくなかったのだぁああああ!!」


 こうして。


 暴言バニー四十万ヒットの余波によって。


 ピュア・クラウン全員がうさぎになった。


 そして。


 レイだけが。


 本気で幸せそうだったのである。


「のだっ♡うさぎ最高なのだっ♡」

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