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覚醒無敵の英傑と口の臭い男 〜俺は絶対に、追放なんてされない〜  作者: 苦慮緑了
紅蓮の魔女

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一話:紅蓮の乙女

 ふと、ノックの音で目を覚ます。懐かしい夢を見ていた……4年前の夢だ。

 ベッドから体を起こした。


 「ライル?入っていい?」

 「あ、ああすまん、ちょっと待ってくれ」


 辺りを見渡し、見られて困るような物を探す。だが幸い部屋は綺麗で、特に見られたく無いものも無かった。

 ベッドの足元側に置いてある酒樽を持ち、椅子がわりに配置する。元々あるまともな椅子を酒樽に向き合うように移動。

 そこまでやって俺は扉に声を掛けた。


 「入っていいぞ」


 ギイと音を立てて扉が開く。そこから現れたのは赤髪の魔女だった。名前はメアリー・ヒィ。

 その真っ赤な目は通称『閻魔眼』と呼ばれている魔眼であり、渦巻くような紋様が特徴的だ。常日頃から威圧的に細められる事が多く、隙間から見える赤い紋様は見る人の不安を掻き立てる。

 普段から小さな体からピリピリと燃えるような圧を出している少女だが、今日はいつにも増して目つきが鋭く、緊張が垣間見える。

 ちなみに胸のサイズはそこそこだ、尻はまあ、普通。


 ……そうだ、部屋に来るというから待っていたんだったな。待っている最中うとうととしてしまったらしい。最近疲れが溜まっていたからな……。


 「失礼するわ」

 「失礼すんなら帰れ」

 「ちがっ……そういうんじゃなくて!」


 プリプリと怒るメアリーに、椅子に座るよう手でジェスチャーを出し、笑みを作る。


 「冗談だよ、気持ちをほぐしてやろうと思ってな」

 「……」


 不機嫌そうにこちらを睨みつけ、腕を組みながらどさりと椅子に腰を下ろす……なんだ?今日は普段より不機嫌だな。


 椅子に座り、俺を見据えるメアリー。じっと見つめてくるその表情は、自信に満ちているように見えてその実逆である。

 メアリーは不安な時、怖い時人を見る癖がある。まあいつも堂々としていて目を逸らすような事はあまり無いが、そういう時は決まってすぐに会話を切り出す。

 メアリーは沈黙が嫌いだ。だが今日は不思議なほど静かだった。


 「……ねえ」


 長い長い沈黙の末、メアリーは口を開く。


 「アンタにパーティーを抜けて欲しい」


 ……は。


 「はあ?」


 思わず、演技も忘れドスを効かせた声を漏らす。

 ああ、良くないな、今のは良くない。威圧的な態度はマイナスだ。


 「な……なんでだ?」


 声を僅かに高く、優しく。いつもの『ライル』を演じる。


 「……それは……」


 メアリーは眉を顰め、気まずそうに声を窄める。


 ……何故、と聞いたが俺には予想がついていた。メアリーの態度も、理解できる。

 恐らく、だが……俺のセクハラが原因だろう。

 俺は女が好きだ、胸も、尻も、デカいほど好きだ。

 だから触った。後悔は無い。


 といってもちょっと触ったりしただけだし。そもそも……コイツ、メアリーは俺に借金がある。

 無利子無担保で国家予算が比較対象になる類の金額を貸し付けていたのだ、胸を触るぐらい別に良いだろ!……と俺は思っていたが。


 良くなかったんだろうな。

 セクハラを止めろではなくパーティーを抜けて欲しいというのは他の二人を心配したからだろう。


 俺は酒樽に座りながら頭を下げた。


 「え?ちょ、ちょっと」

 「すまなかった。まさかそれほど嫌だったとは知らなかったんだ。申し訳ない、もう二度としない」

 「…………え?」


 大事なのは誠意だ、自分は悪い事をしたと理解している事をまず理解してもらう。メアリーはあまり溜め込むタイプではない、嫌なら嫌とすぐに怒鳴るタイプのちょっとアレな奴だ。大丈夫。まだ取り返しがつく。

 最悪なのは溜め込まれて爆発される事、早期に発見できて良ーー。


 「えっと……な、なに?何に謝ってるの?」

 「……?」


 俺は顔を上げる。

 メアリーは目を見開き、驚愕を露わにしていた。

 ……なんだ?その顔、まるで……まるで()()()()()()()()()()()()()みたいじゃないか。


 「なに……って、俺の……その、胸を触ったりとか、だろう?」

 「……え」


 メアリーはその赤い目を目一杯見開き、ポカンと口を開けた。

 嘘だろ……?あれ許されてたのか?


 「違うのか……!?」

 「え、あ……うん」


 馬鹿かコイツ?

 すんでのところまで出かかったその言葉を、俺は必死に飲み込んだ。

 前々から頭のおかしい奴だとは思っていたが、ちょっと今回はおかしさのベクトルが違うな。


 「メアリー……そういうのはな、怒った方が良いぞ」

 「!?だ、だって!借金もあるし、便宜も図って…………いや、ちょっと待って?」


 そこまで言って自分がおかしい事を言っているのに気付いたのか、メアリーは立ち上がり俺に指を突きつけた。


 「な、なんで私が謝ってるのよ!謝るのはそっちでしょう!?」


 だから謝ったんだが?クソッ……!意味不明だ、さっきまで怒ってなかったよな!?

 そう思い、憤然とした気持ちを押し殺し、申し訳なさそうな顔を作る。


 「い、いや悪いとは思ってるんだ、それより、それじゃないならなんで俺がパーティーを抜けなきゃいけないんだ!」


 これ以上責められるのはマズイ、話を変えなくては……!

 そう思っての発言だったが、それを聞いたメアリーは怒りをすっかり収めた。

 突き出された指を力なく下ろし、苦々しげに言う。


 「……アンタが嫌いだから」

 「改善する。どこが嫌なんだ?」


 メアリーは微かに瞠目した後、控えめな声量で言った。


 「……口が臭い所」

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