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覚醒無敵の英傑と口の臭い男 〜俺は絶対に、追放なんてされない〜  作者: 苦慮緑了
紅蓮の魔女

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プロローグ

 それはある夏の夜の事。酒場で飲んだくれ、酔っ払った頭でサイコロを振り一文無しになった時のことだ。

 熱い頭を冷やす為に酒場を出て夜風に当たる。むわりとした熱気が籠る酒場とは違い、外は涼しかった。


 「あー……やっべえな……どうすっかな……」


 壁にもたれ、石の冷たさを感じながらぼやく。冷たい夜風と同様に懐も寂しかった。賭け事等やるものではない。

 幸い剣は取られなかった……というかギリギリ賭けに出さなかったから稼ぐのは問題ない。


 しかし今一文無しなのは変えようのない事実で、そして酒場の支払いを未だ済ませていないのも事実だった。

 そこそこ名も売れているし、後払いが出来てしまった。最悪だ。ついでに言うとおまけで店の中にいる全員に奢ってやるなどと吹聴してしまった。もっと最悪だ。


 「怒られるよなー……あー、クソ」

 「今月で既に四度の食い逃げですか。国税をなんだと思っているので?」


 ふと聞いたことのない声が聞こえた。剣を握りいつでも抜剣出来るように警戒を強める。

 声の主は見えなかった。夜の闇と完全に同化している。だが……只人ではない。少なくとも凡人はこれほど見事に気配を消せない。


 「女か?悪いが金がねえんだ、今は買えねえぜ」

 「『国読み』ミニツ・レッツと申します。こうしてお互い会うのは初めてですね」

 「んだよ、お前か」


 『国読み』という二つ名はこの国では有名だ。千年先を見通す不世出の天才占い師。

 そして俺と同じく国家に飼われている犬である。なんでも俺とは違って納得ずくで国に尽くしているらしいが。


 「なんか用か?なんもねえなら金貸してくれ」

 「あなたに占いを、国の行く末を左右する重要な占術です、ご清聴ください」


 妙に厳かに、大袈裟に、演技臭い声だ。

 怪訝な顔をする俺の事などお構いなしに、声は続く。


 「これより貴方は魔王を倒す英傑と出会います。彼女達はいずれも初めは無力ですが、貴方が育て、導き、教えれば。必ず貴方に並ぶ英傑となるでしょう」


 英傑?魔王?混乱する俺に、声はなおも続く。


 「今の宣託が序章です。ですが、これだけでも理解できますね?貴方がすべき事、貴方の義務が……ねえ?カーライル・マネガン?」


 名前を呼ばれ、俺はーー

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