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【完結】才色兼備な伯爵令嬢は仕事に夢中です  作者: あい・すくりーむ
婚約者の伯爵令嬢は煩わされます
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生易しい相手ではない

「バロワン侯爵、夫人の話は本当ですかな?」


お父様が朗らかに問いかける。相変わらず目は笑っていないが。


「……」


「否定はなさらない、と。多少は素直になって頂けたようで大変結構です。ですが、もう少し積極的に真実を述べていただけると、こちらとしてはもっと助かるのですがね。」


揶揄うような口調ではあるものの、ピリリとした緊張感を感じさせる。この独特の雰囲気は、お父様が相当怒っているときのものだ。


「さて、話の続きと参りましょうか。確か、侯爵とご子息の職を我が娘が奪ったと。王太子補佐付の伯爵令嬢にそのような権限があると、本気で思っているのですかな?」


「その女にはなくとも、貴殿らにはあるだろう!大方、婚約披露パーティーで姉が少々嫌味を言った程度のことに腹を立て、貴殿ら権力のある父親と婚約者殿に誇張して告げ口したのだろう!?」


次に声を上げたのはご子息だった。まさかそんな風に伝わっていたなんて。どうしてそうなるのか。


「バロワン侯爵、貴殿とご子息が異動になった経緯について、真実を話していないのですか?」


「……」


「まただんまりですか。つまりこの件に関しても嘘を吹き込んだ、と。」


呆れたように小さくため息を吐くレイモンド様。


「異動の原因は、貴殿らが他者や他者の仕事に対する敬意を持ち合わせなかったことです。ことの発端はマティアス殿の仰った通り、婚約披露パーティーでのナターシャ嬢の発言です。ただし、リア個人に対する侮辱が原因ではありません。“図書館司書とその職務への侮辱”に対し、その場に居合わせていた筆頭司書殿が、後日正式に抗議したのです。私はその席でいくらか発言しましたが、ロベール伯爵は一切発言していませんよ。」


「な…たったそれだけのことで?司書の仕事が何だというのだ!?本の貸し出しと整頓くらい、学のない平民でもできることではないか!?」


「!!!」


いけない。危うく感情的に声を張り上げてしまうところだった。エプロンの端を握り、ゆっくりと呼吸をして気持ちを鎮める。


この人たちは司書の仕事がどんなものなのか知らないのだ。だからこんなことが言える。無知を恥じない者の言葉など、受け取る価値などない。


おまけに、つい先ほど“他者の仕事に対する敬意”という言葉が出たにも関わらずこの発言である。本当に、本気で、何が悪いのか分かっていないのだ。


「マティアス殿は本当に馬鹿なのですね。無能だ馬鹿だと思ってはいましたが、ここまでとは。」


お兄様の突然の発言(悪口)に皆が目をむく。お父様と同様、相変わらず場の空気を無視するような飄々とした態度と発言である。あまりの衝撃に、マティアス殿も口をパクパクとさせているだけで言葉が出ないようだ。


「ヴィレット公爵の話、ちゃんと聞いてましたか?“ことの発端は”と仰ったでしょう。ダントン侯爵が抗議した際に、他にも方々であらゆる人や仕事を貶していたと証言が出てきて、問題が大きくなったのですよ。」


「それもどうせ貴殿らが仕組んだことなのだろう?貴殿はそういった小賢しい策略が得意なようだからな。」


おや、今度は言い返した。お兄様はお父様やレイモンド様ほどピリピリとした圧は出していないから、言い負かせるとでも思ったのだろうか。そんな生易しい相手ではないのだが。


「お褒めに預かり光栄だけれど、今回は違いますよ。心当たりはあるでしょう?騎士、文官、王宮仕えの侍女やメイドなどに面と向かって、あるいは陰でコソコソと、暴言を吐いていたこと。」


「う…それは…」


「あれだけやらかしていれば、こちらが裏工作などする必要もありませんよ。今回の件は、完全にあなた方の自滅。先ほども申し上げた通り自業自得ですよ。異動程度の処分で済んだことに感謝し、心を入れ替えて努力していれば、別の道もあったでしょうに。」


お兄様の言葉に、言葉をなくして項垂れるマティアス殿であるが、同情の余地はない。

読んで下さってありがとうございます。


誤字脱字、読みづらい等ありましたらご指摘くださいm(__)m

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