自業自得
「貴女は、弟の就くはずだったポストを奪い、私からはヴィレット公爵を奪った!それだけに飽き足らず、お父様と弟の職まで奪い…今度は私達家族を陥れようだなんて!どれだけ私達を苦しめれば気が済むのよ!?」
「「「「自業自得だ」」です」ですわ」
お父様、お兄様、レイモンド様、私の声がキレイに揃った。
「何から指摘すべきなのでしょうね。とりあえず、言っていること全てが間違いです。」
「ど、どういうことですの?私は本当のことを…え?」
「まず、弟君…マティアス・バロワン殿が私の部下になるはずだったという事実はありません。打診されたことはありましたが、却下しました。先ほども申し上げた通り、無能な部下など願い下げですので。」
またもや無能呼ばわりされて顔をしかめるマティアス殿。文句を言おうと口を開けたが、レイモンド様に遮られてしまった。
「次に、貴女と私が婚約する予定などありませんでした。従って、リアが貴女から私を奪ったなどという理論は成立しません。」
「う、嘘よ。そんな…だって、お父様とお母様が、公爵夫人になるのは私だって…」
「おや、どういうことですか?」
言葉にならない声を発しながら視線を彷徨わせるバロワン侯爵を見やり、ため息をついた侯爵夫人が仕方なしといった様子でポツリポツリと話しはじめた。
娘であるナターシャ嬢がレイモンド様に一目惚れをし、結ばれるならあの方しかいないと駄々をこねたこと。
レイモンド様のことを吟味した結果――爵位、財力、美貌、職務上の地位や能力、全てにおいて申し分ないと判断したこと。
娘をヴィレット公爵家に嫁がせようと、バロワン侯爵夫妻も強く望むようになったこと。そしていつしか、そうなるのが当然だと、娘にも言い聞かせるようになってしまったこと。
何度縁談を申し出てもすげなく断られ続けたが、娘には本当のことを言えずに“順調だ”“調整中だ”と伝えていたこと。
そして、ジュリア・ロベール伯爵令嬢とレイモンド・ヴィレット公爵との婚約を知って激昂した娘に問い詰められ、“かの令嬢が全て悪い”“汚い手を使って略奪した”と嘘を伝えたこと。
侯爵夫人が話し終わると、ナターシャ嬢が「嘘よ、そんな」と呟き続ける声だけが虚しく響く。
その哀れな様子は同情を誘うには十分な様のはずだが、ここにいる者たち――彼女のこれまでの発言や振る舞いを知る、侯爵家以外の者たち――は皆一様に冷ややかな目をしている。
ナターシャ嬢に嘘を吹き込み、思い込みを増長させた侯爵夫妻に非があるのは明らかだ。だからといって彼女に罪がないかというと、そうでもない。婚約披露パーティーでの無礼な発言くらいは許せたが、今回の件はれっきとした犯罪なのだ。
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