証言
「なっ…ご、誤解です!私たちはそのようなことに関わってなどいません!」
「ほう。ではバロワン侯爵、ドロックという名に覚えはありませんか?」
「さ、さあ。存じませんな。」
突然出てきたドロックの名に、たじろいだ様子を見せるバロワン侯爵。そんなあからさまな隙を見逃す一同ではない。
「おや、おかしいですね。彼は貴殿らのことをよく知っているようでしたが。今回の件に関しても、詳しく話してくれましたよ?」
「それに、ナターシャ嬢が“10人”と人数を言い当てた件に関して、我々が納得いく説明はまだなされていませんね。」
「いい加減無意味な問答は止めにしませんか、侯爵。我々は貴殿のように暇ではないのだが。」
レイモンド様、お兄様、お父様が立て続けに言い募る。
「え、ええい煩い!我々が何をしたと言うのだ!そうまで言うのなら証拠を見せてみろ!我らがそのような企てに関わった証拠があるとでも言うのか!?」
ついに激昂するバロワン侯爵。しかし“証拠を見せてみろ”とは…これでは自白しているも同然なのだが、本人にその自覚はないようだ。
「いいでしょう。そこまで仰るのなら…クラウス殿。」
「はい。賊のリーダーであるドロック、バロワン侯爵家で働いていた使用人のうち8名、それから厩舎に出入りする者3名から、証言を得ています。」
「しょ、証言だと?」
「ええ。ヴィレット公爵の婚約と、貴殿らの異動の件で、貴殿ら一家がロベール伯爵家を恨んでいたこと。“ロベール伯爵に一泡吹かせてやる”などと口走っていたこと。ドロック以下9人の男たちにロベール伯爵令嬢の乗る馬車を襲い、令嬢に乱暴狼藉を働くよう依頼したこと。ついでにご子息が伯爵令嬢に対して下卑た考えを持っていたことなど、証拠として十分と言える証言が複数集まりました。」
お兄様ったら、この二日でそんなに大勢の証人を集めていたとは。
「で、デタラメだ!証人というなら、今すぐここへ連れてきてみろ!」
「必要ありません。この真夜中に何を言っているのですか。今そのようなことをせずとも、裁判の折には全員に証言してもらいます。ご心配なく。」
騎士団長がバッサリと切り捨てた。ごもっともである。
「ヴィ、ヴィレット公爵!貴方はよろしいのですか?キズモノの令嬢などを妻にしようだなんて。私の方が貴方に相応し「黙りなさい。」……え?」
ナターシャ嬢が声を張り上げたが、その言葉をレイモンド様が遮る。先ほどはレイモンド様の問いに答えられないほど委縮していたというのに、立ち直りの早いことだ。
「先ほどからあなたは何を言っているのですか。私の婚約者を傷つける企てをしておきながら彼女を“キズモノ”と貶め、挙句“自分の方が相応しい”などと…そんな底意地の悪い令嬢を、誰が選ぶというのですか?身の程を知りなさい。」
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