依頼内容
「そんな、だって…私は、何も…」
「何もしていない、と?我々が何も知らないとでも思っているのですか?先ほどお伝えしたはずですよ、“ドロックが証言した”と。つまり、あなた方が彼らに何を依頼したのかはもうわかっています。」
そう、ドロックの語った“依頼内容”はひどいものだった。はじめのうちは“少し怪我をさせて痛い目を見せてやろう”といったものだったのに、話しているうちにエスカレートしていき、どんどん暴力的で過激な内容になったらしいのだ。
レイモンド様は尚も淡々と続ける。
「ロベール伯爵家の誰かを襲撃するよう画策したこと。私の婚約者の座を明け渡させるためにジュリア様を狙ったこと。傷つけるだけでは気が済まないから乱暴してしまえと嗤いながら命じたこと。その時には自分も混ざろうかなどと子息が呟いたこと。…これでもまだ、言い逃れをするつもりですか?」
「そ、それは…」
ナターシャ嬢は何も言えずに狼狽している。
「ぼ、僕はそんなことは知らない、知らないぞぉ!」
一方でご子息は随分と慌てている。隠し事や謀には向かないタイプだろう。この期に及んで言い逃れをしようとしても、それは無理があると思うのだが。
「ああ、貴殿には別の件でも話をしなくてはなりませんね。ジュリア様が司書から私の部下になったとき、不名誉な嘘の噂話を流した件で。」
まさかここでその話が出てくるとは。当時は私もそれなりに傷ついたものの、噂は割とすぐに下火になった。だから犯人捜しなどはしていなかったのだが、彼が犯人だったのか。にしても、レイモンド様も例の噂をご存じだったとは…私にとっては新事実ばかりでビックリである。
「なっ!なぜ、それを…いや、う、嘘なんかじゃないぞ!あの女さえいなければ、僕がその職に就けた筈なんだ!それをあの女が汚い手を使って奪いやがったんだ!」
“なぜそれを”って…もはや隠す気はないのだろうか。というか、なぜ話したことも顔を見たこともなかった人にここまで言われなくてはならないのか。大変心外である。
「そのような事実はありません。あれは純粋に彼女の能力を見込んでの抜擢です。ついでに申し上げますと、あなたのような無能な部下など願い下げです。」
きっぱりバッサリ、さすがはレイモンド様である。あまりの言葉にマティアス様は絶句しているようだが。
「わ、ワシは知らん!それらは全て娘たちが勝手にやったことで…」
「あなたは黙っていて下さい。」
ここで話に割って入ったのは――バロワン侯爵夫人だった。
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