聞き取り
ベンとライラは別室へ案内され、個別に聞き取りが行われるらしい。レイモンド様と私は一緒でいいのだろうか。案内されて会議室に入ると、そこには騎士数名と拘束された男が居た。よく見ると、私が最後に戦った男のようだ。話によると、やはり彼が賊のリーダーだったらしく、名をドロックと言うそうだ。
「んで、あんたは?」
「彼女の婚約者、レイモンド・ヴィレット公爵と申します。」
「ああ、あんたが…」
何だか引っかかる言い方である。
「よお、お嬢サマ。昨夜ぶりだな。」
「私の婚約者に気安く話しかけるのは感心しませんね。貴方は昨夜、彼女を傷つけようとしたのですよ。わきまえなさい。」
結果的には返り討ちだったのだが。
すかさずドロックを注意するレイモンド様。表情は相変わらずだが、心なしか視線と声色がいつもよりも鋭さを帯びている。
「質問されたことにのみ答えてください。あなたの雇い主は誰ですか?」
「答えると思うのか?」
「“答えない”という選択肢があるとお思いですか?」
「こう見えても、口は堅い方でね。」
「依頼されたということは、忠義を誓った私設部隊の類ではなく、金銭で雇われただけの間柄でしょう。ほぼ間違いなく、依頼主はあなた方を切り捨てて素知らぬ顔を決め込むでしょうが…全ての責任を被ってまで義理立てするほどの相手なのですか?」
「あんたには関係ねえだろう。」
互いに譲らず、レイモンド様とドロックが睨み合う。
「昨夜からずっとこの調子なのですよ。我々も尋問を行ったのですが何も答えず、他の者たちは“依頼主とのやりとりはドロックしか知らない”の一点張りで…」
なるほど。騎士団の方たちも、何も聞き出せなかったわけか。これでは埒が明かない。
「お話し中に失礼します。少しよろしいでしょうか?」
「ええ、どうぞ。」
レイモンド様の許可が出たので、ドロックの方を向き、話を続ける。
「あなたは昨夜、“自分が負けたら何でも答える”と仰いました。そしてあなたは私に負けました。約束を守るつもりはおありですの?」
「あー、そういやそんなことも言ったっけな。だがそれは、俺とあんたの間での約束だ。騎士団の連中やそこのおキレイなお顔の公爵サマは関係ねえ。」
一応筋は通っている。それに、忘れていた風に話しているが、約束を反故にするつもりはなさそうだ。
「そうですか。でしたら私の質問にはお答えいただけるということですわね。昨夜捕えたあなた方のお仲間は、あなたを含めて10人でした。他にお仲間は?」
「いねえよ。俺たちは10人で全部だ。」
よかった。逃げた仲間がいると厄介なことになるので、とりあえずは安心である。
「次の質問です。貴方の雇い主はどなた?」
「………バロワン侯爵一家だ。」
予想はしていたが、まさか本当に的中するとは…何とも安直なことだ。騎士の皆様は驚いているようだが、レイモンド様と私はさほど驚かない。
「一家、といいますと?モーリス・バロワン侯爵ご本人ではありませんの?」
「侯爵サマと、高慢ちきな娘にでっぷり太った息子、あと神経質そうな奥方、一家全員だ。」
ちょっと。うっかり笑いそうになってしまったではないか。騎士の皆様は肩を揺らしているし…
読んで下さってありがとうございます。
誤字脱字、読みづらい等ありましたらご指摘くださいm(__)m
評価の「☆☆☆☆☆」を「★★★★★」にして応援していただけると嬉しいです。
よろしくお願いします!




