ラインハルト公爵の手紙
「例の件ですが、前向きに検討されるそうですよ。」
「?」
例の件…というと、王都の用水路の件だろうか。それとも街道整備か、トルマ王国との国交関連で何かあっただろうか。
「ああ、失礼。文官採用の試験の件ですよ。ジュリアの提案した通り、試験を行ったのち、試用期間を経て本採用という流れになりそうです。これで今後はより質の高い文官が揃うようになるでしょう。」
私が考えを巡らせていると、レイモンド様が何のことだか解説してくださった。そういえば、数日前にそんな話をしていたっけ。まさか本当にあんな案が採用されるとは。
「貴女がどうしてもと仰るので、私と殿下からの提案ということにしましたが…本当によろしかったのですか?」
「ええ。運用可能な形にまで構想を練ったのはお二人なのですから、そうすべきですわ。」
そう。私はあくまで思いついたことをポンポンと口にしただけ。それらを繋ぎ合わせ、足りない要素を補って形にしたのはレイモンド様と王太子殿下なのだから、お二人の提案として提出すべきだ。
「貴女は本当に控えめな方ですね。それでも隠し切れない才気が、周囲の人や物事を動かしてしまうのですが。」
「お褒め頂き光栄ですが、買い被りすぎですわ。」
「そうですか…ああそうだ、ラインハルト公爵から私達宛に手紙と小包が届いていたのでした。ご覧になりますか?」
「ええ、拝見しますわ。ありがとうございます。」
手紙の内容を要約すると、こうだった。
“改めてヴィレット公爵とロベール伯爵令嬢の婚約をお祝いする。お二人の結婚式の日取りが決まったなら、ぜひ一報いただきたい。”
――結婚式…これは、招待状を送ってほしいということだろう。気の早いことだが、彼にはまたお会いしたいので、こちらとしても嬉しい限りだ。
“ベルクマン侯爵の処遇が決まった。横領、詐欺、脅迫、税金の不払い、諸々の罪により爵位剥奪の上、労役に処すとのこと。国外追放の話も出たが、アメスト王国に迷惑を掛ける可能性を勘案して却下になった。”
――彼に関しては、けりがついたようで何よりだ。聞いていたよりも罪状が多いような気がするが、色々あったのだろう。こちらのことまで心配していただいて、恐縮である。
“現在トルマ王国の社交界では、母親と娘がお揃いのドレスや髪飾りを身に着けるのが流行している。”
――ラインハルト公爵夫人とご息女は、トルマ王国の社交界でなかなかの影響力を持った方のようだ。母娘でお揃いのドレスが流行したというのは、恐らく彼女らが身に着けたドレスと髪飾りが発端だろう。
“イチゴのマカロンとタルトはトルマ王国内の貴族だけでなく、平民の間でも人気のスイーツになっている。”
――なんと。ラインハルト公爵から、お茶会の後に“イチゴを使ったマカロンとタルトのレシピを知りたい”と言われたときは驚いた。一緒にレシピを考案してくれたシェフの許可を得てレシピを教えたが、まさかトルマ王国(向こう)で流行するほど生産されるとは思わなかった。
“よければ一緒に送った紅茶とイチゴを楽しんでほしい。”
――レイモンド様が仰っていた小包というのは、これのことだろう。今日のお茶はもう淹れてしまったので紅茶は明日いただくとして、イチゴは…とりあえずレイモンド様に相談しようか。
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