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【完結】才色兼備な伯爵令嬢は仕事に夢中です  作者: あい・すくりーむ
王太子補佐付の伯爵令嬢は仕事に夢中です
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話は逸れますが

『先ほどから黙って聞いていれば、随分な言われようですな。娘が偽物だの、婚約を許さないだの、妻にするだのと、随分と勝手な。貴殿はアメスト王国のヴィレット公爵家と、我がロベール伯爵家を軽んじておいでか?』


お父様の落ち着いた静かな、しかしいつもより少し低い声が応接室に響く。その目元は――もう笑ってはいない。


『そんなものは関係ない!爵位がどうであれ、そもそも国が違うのだからな!』


貴族でありながら爵位を蔑ろにする発言はどうかと思うのだが。


『そうですか。確かに、国境を越えれば、爵位など大きな意味は持たないかもしれませんな。』


『そうだろう!だから『ところで』』


同意するような言葉に調子づきそうだったベルクマン侯爵の言葉を遮って、お父様は話を続ける。


『話は逸れますが、私は外務長官の職を賜っておりましてな。貴国への支援に関しても携わっておりました。』


『な、なんだ急に。』


『貴殿の治められるベルクマン領ですが…まだ物資は足りないのですかな?』


『あ、ああ…雨の被害が甚大でな。そのことは貴殿らも知っているだろう!』



なんだか話が別の方向へ進み始めた。ここで小さく手を挙げて話し始めたのはお兄様だ。


『失礼。私は財務の文官を勤めておりまして…王国から発表のあった各地の被害報告と、ベルクマン領からの支援要請とでは、明らかに数字が合わないのですよ。これはなぜでしょうか?』


『それは…お、王国の発表した情報が間違っているのだろう。』


『ほう!そのようなことがありえるのですか、ラインハルト公爵?』


白々しいリアクションをしつつ、ラインハルト公爵に話を振るお父様。


『いいえ、ありえませんな。そもそも王都に近いベルクマン領では、さほど被害は出ていなかったはずです。通常の備蓄があれば、他所から食料の支援を受ける必要などはないはずなのですが…』


『なるほど。それは随分と…妙な話ですな。』


お父様がじっと目を細めて、ベルクマン侯爵を見遣る。


『なんだ!このワシが不正を働いているとでも言いたいのか!?そんな証拠が何処にある!』


ここまで狼狽えると、もはや白状しているも同然ではないだろうか。


『そこまでは申しておりませんが…ヴィレット公爵とラインハルト公爵はどのように思われますかな?』


『そうですね。これだけの情報では正確なことはわかりかねますが…少なくとも、支援物資を水増しして申告したのは、詐欺にあたるでしょう。それから、ベルクマン領の帳簿あるいはその写しをアメスト王国こちらに提出していただきましょう。』


『それが妥当でしょうな。あとは、侯爵の屋敷内も捜索すべきでしょう。また、ベルクマン領から運び出される荷物もしばらくの間、全て検閲させます。』


『なっ!?貴様ら!なんの権利があって…』


『ハッキリ申し上げねばわからないのですか?貴殿には今、物資の横流し、横領、そしてアメスト王国に対する詐欺の嫌疑がかかっているのです。それにあたって帳簿の確認や屋敷の捜索、荷物の検閲を行うのは当然でしょう。』


『ワ、ワシはカール・ベルクマン侯爵だぞ!そのような不敬が許されるとでも思っているのか!』


立ち上がって激高するベルクマン侯爵に対し、ついに王太子殿下も立ち上がって口を開いた。


『これはまた可笑しなことを。先ほど、貴殿が口にしたことでしょう?“そもそも国が違うのだから、爵位など関係ない”と。』


『な、なんだ貴様は!若造の分際で、偉そうな口をきくな!』


『これはこれは、名乗りもせずに失礼しました。とは言っても、先日挨拶を交わしたばかりなのですが…貴殿は人の顔を覚えるのが随分と苦手なようですね。私はフランシス・アメスト――アメスト王国の王太子です。』


殿下の声が聞いたこともないほどの冷たさを宿している。執務室にお茶を飲みに来るときの、気さくな雰囲気はまるでない。


『なっ…お、王太子…で、殿下がなぜこのような所に。』


『ここにいるレイモンド・ヴィレット公爵は、私の補佐を勤める腹心です。彼とその婚約者殿が国賓と何やら揉めているとあっては、王家の者が無視、あるいは傍観しているわけにもいかないでしょう?』


えー…殿下、先ほどは“ただのフランシスとして”とか仰ってませんでしたっけ?



『貴殿がトルマ王国でどのような地位にあり、誰の後ろ盾を得ているのかは私たちの知るところではないし、関係もないこと。貴殿が詐欺を働いた相手は此処、アメスト王国そのものなのです。証拠が出揃い、全てが明るみに出た暁には相応の裁きがあるでしょう。』


驚いて未だに言葉の出ないベルクマン侯爵に対して、最後にヴィレット様も釘を刺す。


『ああもちろん、ジュリア・ロベール伯爵令嬢が私の婚約者であることは紛れもない事実です。これ以上彼女に迷惑をかけることのないように、くれぐれもお願いしますね。』


はじめはただの一目惚れ?による求婚だったはずが、話が随分と大ごとになってしまった。

私は当事者のはずなのに、後半はずっと空気だったような…それよりも、私がこんな話を聞いてしまってよかったのだろうか。

読んで下さってありがとうございます。


これにて一件落着、ですかね。

誤字脱字、読みづらい等ありましたらご指摘くださいm(__)m

評価の「☆☆☆☆☆」を「★★★★★」にして応援していただけると嬉しいです。


よろしくお願いします!

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