公爵と伯爵
ヴィレット様と婚約すると決めたあの日から、3日が過ぎた。
結論からいうと…私、ジュリア・ロベール伯爵令嬢とヴィレット・レイモンド公爵は正式に婚約した。
―――2日前、つまりヴィレット様と婚約すると決めた翌日のこと。
ヴィレット様は、ロベール伯爵家を訪れた。
いくらベルクマン侯爵のことがあって急を要するとはいっても、早すぎでは?とは思ったものの、この行動力こそがヴィレット様らしさでもある。それは私もよく知っている。
それに、その日は偶然お父様がお帰りになる日だったため、この機会を逃す手はないというのもまた事実だった。応接室で私とお父様が並んで座り、その正面にヴィレット様が座る。
ライラがお茶を出して下がると、ヴィレット様はお父様に突然の訪問を詫びつつ、改めて自己紹介をした。お父様もこの状況から続く言葉を察したらしく、頷いて続きを促す。
「ルーカス・ロベール伯爵。不躾なお願いですが、ジュリア様との、お嬢様との婚約を認めてください。」
あまりに真っ直ぐな言葉だった。互いにやり手と有名な文官だというのに、ヴィレット様は何の駆け引きもなく、不必要に飾り立てた言葉もなく、ただ真正面から挑んできた。
ベルクマン侯爵のことがあったので、お父様には「偽装か」とか「防波堤か」とか言われるかと覚悟していた。しかし、お父様の言葉は予想を裏切るほど、これまた直球だった。
「本気でしょうか。」
「もちろん、本気です。」
間髪入れずに答えられた言葉に、胸が熱くなった。ヴィレット様を疑っていたわけではない。が、改めて本気なのだと実感し、なぜか顔まで熱くなってきた。
「そうですか…では、娘をよろしくお願いいたします。」
まさかお父様があんなにあっさりと婚約をお許しになるとは思わなかった。
貴族同士の婚約となると、決定にもっと時間がかかるものだと思っていたのに。お父様ったら…まさか二つ返事で婚約のお許しが出るとは。
いや別に、断ったり渋ったりしてほしかったわけではない。むしろ難色を示されたときのために、反論の言葉をいくつも用意していたくらいだ。結局それらの出番はなかったわけだが。
ただ、なんだかこう、釈然としない。大切な娘の結婚相手なのだから、もうちょっと考えたり悩んだりする素振りがあってもよかったんじゃないだろうか。
いや、そもそもお父様もお兄様も、ヴィレット様と私がそんな仲では~などと揶揄ってきていたくらいだ。そういう話になったときに「あの男は止めておけ」などと言わなかった時点で、ヴィレット様はお父様のお眼鏡には叶っていたということなのかもしれない。
そう思うと、結局ふたりの言った通りになってしまったようで、それはそれで複雑ではある。だいたい、文官になったり、ヴィレット様と近しい間柄になったり、色々とお兄様の言葉通りになってしまっている気が…気のせいかな?うん、やめよう。これ以上このことについて考えるのはよくない気がする。
それよりも、今日のお茶会の準備をしなくては。
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