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【完結】才色兼備な伯爵令嬢は仕事に夢中です  作者: あい・すくりーむ
王太子補佐付の伯爵令嬢は仕事に夢中です
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使節団(2)

分かりにくいですが、『』内はトルマ語での会話です。

『お初にお目にかかります、レイモンド・ヴィレット公爵です。』


『おお、君がヴィレット公爵か。私はエドウィン・ラインハルト公爵です。お会いするのは初めてだが、まさかこんなにお若い方だとは。いやはや、見事な手腕と交渉術をお持ちだと、我が国でも有名ですよ。』


『お褒めに預かり光栄です、ラインハルト公爵。本日はようこそお越しくださいました。』


『いやなに。こちらこそ、急な視察の申し出まで快く受け入れて下さって感謝しております。ところで、公爵…そちらのお美しいご令嬢は?』


ヴィレット様からの目配せを受けて、自己紹介をする。


『お初にお目にかかります、ラインハルト公爵。ロベール伯爵家のジュリアと申します。ご息女への贈り物は、彼女のお眼鏡に叶いましたでしょうか?』


ラインハルト公爵とは、使節団受け入れの準備をしていく中で書類や手紙のやり取りをしていた。意外と世間話やちょっとした雑談の好きな方で、10歳になる娘への誕生日プレゼントを何にしようか悩んでいると相談を受けたのだ。


文官ならば業務外の世間話や雑談で築く信頼と人脈こそが重要だ、とお父様やお兄様から教えられていた。そのため、私はラインハルト公爵の世間話や雑談に対し、真摯に丁寧に、時にはウィットも交えて返事をして、信頼を築いてきた。


それが功を奏したようだった。


『おお、貴女がロベール伯爵令嬢でしたか!ええ、ええ!貴女のアドバイスのおかげで、娘も妻も、大層喜んでくれましたとも。』


10歳の少女といえば、ちょうど大人に憧れて背伸びをしたくなる年頃。お菓子やぬいぐるみでは子供っぽいし、かといって普通のドレスや宝石ではありきたりだ。


そこで、公爵の奥様――つまり誕生日を迎えるご息女のお母様とお揃いのドレスか装飾品を贈ってはどうかと提案した。


娘にとって、母親は最も身近な“大人の女性”であり、その母親と同じものを身に着けることで、大人に近づいたような気分になれるだろうと考えたのだ。また、10年前に命懸けで娘を出産し、これまで健やかに育んできてくれた奥方に対しても、改めて労いや感謝の意を示すことができるだろう――と伝えたところ、公爵はこの案をいたく気に入ったようだった。


贈り物はお揃いのドレスと髪飾りにすると手紙には書いてあったのだが、肝心の誕生日がつい先日だったため感想は聞けずにいたのだ。それにしても、喜んでもらえたようで安心した。


『それにしても、お二人ともトルマ語がお上手ですな。いやはや、アメスト王国には若く有能な人材が多くて羨ましい限りです。』


『お褒めに預かり光栄ですわ。』


『ええ、私も上司として鼻が高いです。彼女にはいつも助けられてばかりで…』


三人で談笑していると、周囲の空気が変わったのを感じた。


先ほどまでは私を値踏みするような、蔑むような視線と雰囲気、そういった空気が会場に満ちていた。しかし、今では何やら感心するような声、驚いたような表情、羨望の眼差しなど、ある程度好意的な雰囲気に変わってきたように感じる。


恐らくは、流暢なトルマ語で話して見せたことと、内容は分からずともラインハルト公爵と懇意であることが伝わったことが要因だろう。


ラインハルト公爵を利用したようで気が引けるのだが、文官にとっては人脈も立派な武器だ。それに、私がいつまでも侮られていること自体が、ヴィレット様やロベール伯爵家の品格を下げる一因になりかねない。そのため、せめて不名誉な噂を払拭できるくらいの好印象を与えたかったのだ。




『…では、名残惜しいですがこの辺りで。今夜の主賓を私たちが独占するわけにはいきませんからね。』


『本当に残念だ。滞在中にもう一度、ぜひまた3人でゆっくりと話したいものだね。』


『まあ、光栄ですわ。そのときは美味しいお茶とお菓子をご用意いたしますね。』


こうしてラインハルト公爵との会話は(本人同士でも周囲に対しても)なかなかの好印象で終わり、他の方々へも挨拶をしに移動していく。

読んで下さってありがとうございます。


2020年最後の投稿になります。10月から始めた連載ですが、読者の皆様のおかげでここまで連載してくることができました。まだまだ恋愛要素が少ないですが、ここから頑張って参ります。気長に見守っていただけると幸いです。


誤字脱字、読みづらい等ありましたらご指摘くださいm(__)m

ブクマ、評価、コメント等していただけると執筆の励みになります。


よろしくお願いします!

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