パーティーに向けて
「さあお嬢様、目を開けてくださいませ。」
「…誰?」
侍女であるライラの合図で目を開けた私が見たのは、お母様によく似たご令嬢…の映った鏡。
「お嬢様ったら、ご冗談を。ジュリアお嬢様以外にいらっしゃらないでしょう?今回はいつもより華やかにとのことでしたので、気合を入れて頑張りました!」
「ライラ、貴女って本当にすごいのね。まるでお母様のようだわ。これが特殊メイクというものなのね。」
「違いますよ!強いて言うなら、パーティーや舞踏会用のフルメイクです。お嬢様は濃いお化粧が苦手と仰るので、いつもはもっと控えめにしていますけども。今日はお嬢様のお美しさを余すことなく引き出せました!」
ライラの鼻息が心なしか荒い気がする。確かに私は濃いお化粧が苦手なので、普段はもっと控えめなメイクでお願いしていた。
もしかして、ライラはこういったメイクをしたいのを、ずっと我慢していたのだろうか。
「ライラ、もしかしてだけれど、貴女はこういったメイク…その、フルメイク?をする方が楽しいのかしら?」
「それは…まぁ、お仕えする奥様やお嬢様をより美しく磨き上げ、着飾らせるのが侍女の腕の見せ所ですので、このメイクの方がやりがいは感じます。」
やはりそうなのか。
「ですが、フルメイクのお美しいお嬢様も、ナチュラルメイクのいつものお嬢様も、どちらも私の大好きなジュリアお嬢様であることに変わりありません。お嬢様はありのままのお嬢様でいて下さいませ。」
ライラの言葉に、心が温かくなる。
「ありがとう、ライラ。」
「当然のことです!…それにしても、本当に素敵なドレスですね。」
「ええ、お父様からいただいたの。頑張っているからご褒美にって。」
そう。お父様が仕立てて下さったこのドレスは、本当に美しい。
動くたびに光沢を放つシャンパンゴールドの生地。スカートの裾には、目を凝らせばそれとわかる金の刺繍がきらめいている。ふわりと広がったスカートのシルエットが年相応の可愛らしさも感じさせる、上品で華やかなドレスだ。
「さすがは旦那様の見立てですね。お嬢様にとてもよくお似合いです。」
「ふふ、そう言って貰えると嬉しいわ。」
ライラと話していると、部屋のドアをノックする音が聞こえた。ライラに頼んでドアを開けてもらうと、お兄様が入ってきた。
「ジュリア、準備はできたかい?」
「ええ、お兄様。」
今日のパーティーにはお父様とお兄様と一緒の馬車で向かうので、呼びに来てくれたのだろう。
「お父様から聞いたよ。今夜のパートナーはヴィレット公爵だそうじゃないか。やっと進展したのかい?」
確かに、これでようやくアメスト王国とトルマ王国との関係が進展したと言えなくもない。以前から国交はあったのだが、これでより一層友好的な関係を築けるようになるだろう。
「進展?ええ。今夜の主賓はトルマ王国の皆様ですもの。ご挨拶をして回るのにはヴィレット様とご一緒する方が都合が良いと思いまして。」
「僕が言ったのは国同士の話じゃないんだけどなぁ…ま、ジュリアらしいといえばらしい、かな。」
お兄様が何かもごもごと言っているが、よく聞こえなかった。
「さあさあ、お二人とも!旦那様が玄関ホールでお待ちですよ。」
ライラに急かされたので、急いで玄関ホールへと向かった。
お父様は私の姿を目にすると、ドレスがよく似合っていると褒めてくれた。私も早くドレスのお礼を言いたかったが、執事に「積もる話は馬車の中で」と急かされ、しぶしぶそれに従った。
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