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星廻りの夢32「血」

一日一章以上。

これ違うかな。

気の乗るまま投稿しています。


過去に完結した作品のリバイバルしているんですが、

キャラに振り回されています。


元々はもっと短編だったので、

10万字くらいにコントロールしたいのですが、

「てか! 戦地に向かってどんだけーー!?」


お付き合いよろしくお願いします。


        ※


 潮騒が聞こえないほど、定期的に爆音が鳴り響いた。

 焦げた匂いを漂わせながら、背後で次々と船が沈んでいく。


 人が作ったものを人が壊す。

 戦争という惨劇の最中、サナレスは研究室でつぶやかれたきな臭い会話を、なんとなく思い出していた。


『船だけじゃなく、いっそこの爆撃で、兵を撃退すれば手っ取り早いのだけれどな』

 ヨースケ・ワギはチラリとサナレスを見た。


 けれどサナレスは縦に首を振らなかった。

 四方八方を吹き飛ばす勢いの火薬を使えば、ドレイク共和国の国土自体を傷つけることになる。それは避けたいところだった。


『じゃあ銃は? 飛び道具錬成したらどうかな?』

『それだけはダメです!』

 ヨースケの提案に、珍しくリトウは厳しい口調で反対した。


『銃はあるがーー。狩をするときには使用する』

『そうですよね、あれは人に使うものではありません』

 ピシャリと言うリトウは真剣だった。


 行き着く先は最悪だと、リトウが言い、ヨースケは意見を引っ込めた。

 なんとなく二人の関係が牽制し合っているようにも見え、サナレスはヨースケの意見を黙殺した。


『大丈夫だヨースケ。私たちは剣で戦う。せっかく築いてきた国土が荒れるのは、大統領も国民も望むところではないだろう』

 船を沈める爆弾の用意を手伝っているヨースケが手を止めた。


 だったらせめてこれを使えと彼は無愛想に差し出した。

『これは御守りだ』

 おまえが戻ってこられるように、と。

 一本の剣だと思ったが、刀だと説明された。


 実際に振るってみて、手にしたこともない異形の武器だと実感することができた。


 切れすぎる。

 軽くてしなやかで、究極の機能美だ。


 武器職人のヨースケ・ワギは、ラーディオヌ一族で随分と稼いでいるようだった。でなければ電力発電の資金を、短期間であれほど出資することは出来なかっただろう。


 リトウ・モリと同じような知識があり、武器商人としての才覚があれば、末恐ろしい存在だな、と注目せずにはいられなかった。


 ひょっとすると自分はとんでもない男と出会ってしまったのではないだろうか。


 サナレスの複雑な表情を見てとって、リトウは言った。

『ワギ君は危険な人じゃないですよ。ーーただ退屈が嫌いで、遊びたいだけだから』と彼を庇った。


 どうだかわからないな、と思ったが、掘り起こすのは止めにした。


 今は、彼等から提供された知識を、目の前の戦争にどう活かすかと言うことだけだ。


 サナレスはウルの兵に向かって、馬上から刀を振り下ろした。


 剣は相手の身を削るよりも、骨を砕く。

 けれど刀は、血肉を割いて、確実に命を奪うようだった。

 さほどの力もいらない、研ぎ澄まされた刀と、サナレスの剣術が一緒になったとき、サナレスは何処を切れば、労せずに効果的かと言うことを熟知していた。


 医術の本も一通り読破したサナレスは、人の血液が集まる場所を知っている。それは急所を知っているということだ。


 狙いやすいのは首。首を通って脳へ血液を送る血管、顎の下あたりにある頸動脈を切ってしまえば、人は絶命する。次にこめかみ、額、目、脊椎。仕留めるなら、体ではなく首より上が効果的だった。


 狙うべきは、首。

 サナレスは風のように走る馬に呼吸を合わせて、敵の兵の首に一気に刀を一文字に切りつけた。サナレスが通った後は血溜まりができて、異常な状態になり、敵は恐れ慄いた。


 血飛沫を浴びながら、テラテラと光る紅い通り道を作り出す。

 突破口を開くには持って来いな武器だと、刀の血を払い、先に進んだ。


 迷いなく人の命を奪っていく自分は、なんて残忍なのか。

 けれどそんな自分を、何処か客観的に見ることしかできなくて、冷めている。


 本当に冷たくてーー。

 ーー心が冷たい。


 病気のムーブルージェを退けた自分。

 ムーブルージェの最後の時を共にいたいと思って、ルカを切り捨てた自分。

 敵の命を、モノのように平然と奪う自分。


「はっーー」

 迷いを振り払うように、横一直線に刀を振るうと、敵の兵の首が落ちた。

 ガツっという骨を砕く音がしたが、さほどの衝撃でもない。馬に乗っている男の首から上が血飛沫と共に焼失し、体だけが落馬せずに残っている。


 何人、切ったか。

 何人の命を奪ったか?


 サナレスの心は凍りつき、何かに取り憑かれたように敵を切った。

 邪神の顔になったサナレスは感情を失くし、目の前の敵だけを斬りつけて、ウルの兵の中を疾走した。


 サナレスが通った後に続いていく血溜まりの道に、ウルの兵も、味方の兵も近寄ることを避けていた。

 骨肉を砕き、相手を落馬させ、動かないようにする剣の技とは、質が違う。刀は、確実に効果的に息の根を止めていく。


 刀で自分の首を切れば、もしかすると花火のように綺麗に、ムーブルージェの後を追えるのだろうか!?

 戦場の中で、うっとりとした誘惑さえ生まれてくる。


 筋肉が悲鳴をあげ、血肉湧き立つこの状況で、神経だけは研ぎ澄まされ、静かだった。


 ムーブルージェに会いたい。

 そして会えない。

 自分のことがどうでもよくなる。


 相手の命を奪うことも、自分の命が奪われることも、どうでもいい瞬間が、そこにあった。

 暴れる闘牛を鎮めるように、誰か自分を止めればいいのに。

 命を止めてくれればいいのにーー。そればかり思う。


「サナレス殿下!」

 傍を走ってきたトーボウの声が、遠くに聞こえた。


 誰かーー。

「殿下! 下がって」


 声にも出さない叫びは、ウルの中央まで届いたのか?

 ウルの王がそこにいた。

「破れた夢の先は、三角関係から始めます。」

記憶の舞姫32:2020年9月15日

乙女座、万歳。

「悪くない」

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