最後
俺の視線に君は気づいてる?
「ん? 何?」
振り向いた彼女が俺に笑いかける。
「何でもない。ほい、アイス。あげるよ」
「うわぁ! ありがとう!」
俺が投げたアイスをキャッチして、彼女はヒヒッと笑う。
こうやって隣を歩いて手の届く距離にいるけど2人が交わることは無い。
掴もうと手を伸ばしても彼女という光は俺には眩しすぎて、遠すぎて手が届かないんだ。
このままじゃいけないってわかってるけど1歩が踏み出せない。
隣にいてくれるならそれでいっかと思ってしまう。そして、そんな事を考えている自分に腹が立つんだ。
なぁ、もうちょっとしたら勇気を出すからさ、ちょっとだけ待ってくれないか?
いつか、この気持ちを伝えるから・・・
別れは突然、来た。
「アイス、昨日もらったからあげるよ」
「ありがとう」
帰り際、二つに分けれるアイスを渡される。
袋を開けて齧り付いて、彼女の手にアイスがないことに気づいた。
俺は、半分に折って折った方を彼女に渡す。
「ありがとう・・・」
「なんか不満? あ、俺が齧ったやつの方が良かった?」
「死ね! ばーか」
「うっせ! 死なねーよ! それにお前だって馬鹿だろ?」
「うー・・・反論できない・・・ばーかばーか勉強の話はしないで!」
「誰が馬鹿だよ!」
「べー!」
俺達は、いつものように笑いあった。
自分たちに明日が絶対来ると思って。
俺の足を蹴った彼女は、俺にべっと舌を出して横断歩道を渡る。
ろくに前も見ずに。
その信号は、赤だった。
「バカ! 前!」
「え、」
バーン
時間が止まった。
すべてがスローモーションに見える。
乗用車のフロントガラスで身体をぶつけて地面に転がる彼女。
何が起きた?
俺が駆け寄ると、車が止まり辺りは騒然とする。
しゃがみこんだ俺の制服に赤黒いシミができる。
これは、何だ? いや、わかってる。頭ではこの正体がわかってる。だけど、認めたくない。彼女が、彼女が、死んでしまうなんて
「きゅ、救急車! 早く!」
誰かの声が聞こえて、俺はポケットからスマホを出すが手が震えて画面が押せない。
「君! 早く!」
わかってる・・・でも、怖い・・・目の前で好きな人が死んでいくのは
「どうしたら・・・」
俺は、震える指で彼女の冷たくなった手とスマホを握り締めることしか出来なかった。
葬式が終わり、俺は家に帰る途中事故があった場所に行っていた。
なんで、俺が早く気づいて止めてあげられなかったのだろうか。
自分が憎い。
俺が彼女を怒らせなければ・・・彼女と一緒に帰っていなければ・・・
自分のせいではないとしても辛い。悔しい。
今、隣で彼女が笑っていないのが。
「俺、お前が好きだよ・・・今更だって分かってても好きだよ・・・なんで、死んじゃったんだよ・・・」
掌を握る。
鈍い痛みが走って血が出ているのがわかる。
涙も俺の頬を濡らす。
顔を上げれば空には青空が広がっていて蝉が鳴いている。
涙を我慢していると、彼女が空から笑ってくれたようなきがした。




