月の光と貴方の心
「席付けー」
教室に、先生の声が響く。
一番前の真ん中の席。みんなはその場所を嫌がるけど私はこの場所が一番好き。
一番近くで、先生の笑顔や声を見れたり聴けたりするから。
でも、彼は教師。私は生徒。恋人になったり出来るわけがない。
もしそんなことになれば先生は職を失うどころかニュースになってしまう。
『高校教師、在学中の生徒に手を出す』
新聞の1面に出てしまう。それだけは、阻止しなくちゃいけない。
(でも、ちょっとさみしいな)
教卓に手をついてクラスを見渡す先生はとてもかっこよくて私には届かない存在だと思う。
私なんか、全然釣り合わない。
それでも、隣に立ちたいなんて思うのは傲慢なのかな?
「SHR終わりっ! じゃあ、また明日な。あ、城田は来て」
「え、私、ですか」
「部室に飾る卒業作品の提案」
先生が私を手招きする。
(何だ、部活のことか)
望みはないと分かっていても期待している自分は、とことん馬鹿だなと思う。それでも、私は先生の瞳に自分が映っていることが嬉しいんだ。
「うーっ・・・とーれーなーいー後ちょっと・・・」
美術準備室で私達3年生が最後に作った作品を取ろうとするが、高い所にありすぎて手が届かない。
指がかすってはいるのだから、もう少しだ。
「あ、届い--うわぁ!」
カンバスの端をつかむことに成功した私が軽く引っ張ると、ホコリが空気を舞って視界が悪くなる。それでよろけた私はプリントを踏んで倒れそうになってしまった。
「せ、セーフ・・・」
「馬鹿ですか! セーフじゃない!」
スライディングをする様に、私を抱きとめてくれた先生の腕の中で苦笑いをする。
「ですよねぇ・・・あははは」
「怪我はないか? 痛いところは? 大丈夫か?」
「え・・・」
先生は、私を抱きとめたままの状態で私の体をぺたぺた触りながら怪我がないかを確認する。
そんなに、心配しなくてもいいのに・・・
「大丈夫、です」
「なら良かった・・・」
私が大丈夫と手をバンザイにして笑うと、先生はホッとしたように息を付く。
きっと、誰にだってこんなふうな反応をするんだと思う。だから、調子に乗って勘違いなんかしちゃダメだって分かってるのに希望が捨てられない。
私は・・・
「好き・・・」
「え?」
私の言葉に先生は目を見開く。
そんな反応するの分かってたよ。
「俺は・・・」
ねえ、先生? どのくらいの光があれば貴方の心が見える? 初めて出会った頃からずっと好きだよ。でも、先生は私を見ていないよね・・・知ってたよ・・・
「冗談。また、明日ね先生」
彼の腕の中から立ち上がって準備室を出る。
「やっぱり失敗したなぁ」
ちょっと涙で声が震える。
ずっと先生の気持ちが見えなかった。暗闇の中でただただ先生という存在だけを追い続けた。だけどもうダメだって分かったから距離を置くことに決めた。
それからは先生から話しかけてくる事もなければ私から話しかけることも無い。席替えをして、席は一番後に移動したから近くにいることも無い。ただただ、先生の授業の時は黒板を見ずに窓の外を見つめていた。
そして、そのまま迎えた卒業式。かれこれ、3ヶ月近くは話をしていない。
私はこのままでいいと思っていた。
永遠に会えないならこのままで。
空港が賑わう中、私は軽いキャリーバッグを引きずりながら備え付けのソファーに座る。
今日で、日本ともおさらばだ。
私は海外で絵の勉強をしたい。そのために、旅立つ。
後ろにある窓ガラスから外を眺める。
悲しいくらい澄み渡った青空。
綺麗だなと見つめていると着信がかかる。
「はい」
『・・・久しぶりですね、話すのは』
「先生・・・」
電話の相手は先生だった。
『どこにいる? 何してる? 俺を避けてる間、何を考えてどんな景色を見てきた? 聞きたいことは山ほどあるが、一番聞きたいのは大丈夫か? だな』
「ずるいよ・・・」
『大人はそんなもんだよ』
先生が優しくつぶやく。
そんな聞き方したら泣くに決まってる。
「なんで私の連絡先を知ってんの?」
『色んな人に聞きいたんだよ。大変だったんだぞ?』
「プッ学校とキャラが違う! 話し方も違うよ」
私が笑うと、先生は笑いながら『お前だからいいんだよ』なんて言う。
『今、何してるんだ?』
「空港で飛行機待ってる」
『は、』
「今から、私日本をたつの。帰ってくるつもりは無い。だから、永遠にさよならだよ」
クールに言えたかな? ホントは行きたくないって思ってるの気付かれてないかな?
「・・・ごめん、飛行機に乗らなきゃ。じゃあね、先生」
涙を流しながら電話を切ろうとする。
吹っ切れたと思っていたが、私はまだ先生のことが好きなようだ。
『・・・・・・向こうでいい男に会っても付き合ったり、結婚したり体の関係になるなよ? キスもダメだ』
「はぁ? なんでよ! 好きにさせくださいー! 私、先生を忘れるって決めたんだから!」
先生の発言にイラッとして受話器に向かって怒鳴る。
『あと、1日1回は電話する! どんな事があっても!』
「はぁ・・・あんたは彼氏か!」
『そうだけど?』
「え?」
あまりにも過保護すぎて否定されること前提で突っ込むと、認められてしまった。まじか・・・でも、いつからだよ
『待ってるから』
「っー! そんな優しい声でそんな事言わないでよ!」
『行きたくなくなったか?』
「行く! 綺麗になって、先生をびっくりさせるんだもん!」
『そりゃあ、心配だ』
「じゃあ、行くね! ついたらまた電話する」
『ああ。あ、あとな彩未。俺、お前が好きだぞ』
そう言って、電話は切れた。ほんと、先生には叶わない。
そう思った。
脱字、直しました。
いやほんと、カンジムズカシイネ
すいません。反省します




